12月定例市議会において、12月10日、一般質問にたち、市長の政治姿勢、広域避難と地域防災計画について質問しました。要旨を紹介します。
TPP(環太平洋連携協定)への参加問題
片寄 2国間のFTA(自由貿易協定)と違い、例外なき関税ゼロであり、野田首相の「守るべきものは守る」との考えは通用しないと思うが。
松浦市長 TPP参加問題について、国から具体的な対策や情報が依然として示されないまま今日に至っており誠に遺憾。
片寄 農林水産業、医療、雇用、食の安全も危険にさらされると思うが、明確に反対の意見を国にあげるべきではないか。
松浦市長 本市としては、引き続き、産業経済部を中心に、関係部局において情報収集を行い、その対応策について検討するとともに、国に対して、農林水産業をはじめ影響が出る分野に対しては十分な対策を検討するよう、市長会等を通じて引き続き強く要望してまいりたいと考えております。
いずれにしてもこの間題については、国が、国益が守られるかどうかという立場で対策を十分に検討し、国民に情報を開示し、国民的な議論を経る必要があると考えますので、速やかに選挙後の次期政権において、対応されるべきものであると考えます。
消費税増税による経済への影響
片寄 1997年に消費税を5%に引き上げたとき、若干上向きだった景気が一気に不景気となった。今増税すれば、日本経済の底が抜けると思うが。
松浦市長 消費増税の日本経済への影響については、引上げ前には、駆け込み需要による消費の増加があると思われますが、その反動による引き上げ後の消費の減少、家計の可処分所得を減らし、消費の減をもたらすことなどのマイナスの影響があると思われます。
一方、国の財政赤字の縮減に伴う将来の社会保障に対する国民の不安感の解消により、これまで貯蓄に回っていたお金が消費に振り向けられるなどプラスの影響もあると考えております。
片寄 日本共産党は「消費税に頼らない別の道がある」ことを提言している。不公平税制を正して、大企業、富裕層に応分の負担を求めることは。
松浦市長 いずれにしても、増税の影響は様々であると考えております。今後、予定されている「税制改正」や「社会保障制度改革国民会議」における議論を注視してまいりたいと考えています。
原発政策
片寄 革新的エネルギー・環境戦略についての所見を伺う。
松浦市長 「革新的エネルギー・環境戦略」では、2030年代の原発稼働ゼロを可能とするよう、再生可能エネルギーの開発等にあらゆる政策資源を投入し、その過程では安全性が確認された原発は、これを重要電源として活用するということが、大きな柱となっている。
原発の依存度は低減させるよう再生可能エネルギーの開発は急ぐべきであり、と同時に再生可能エネルギーが代替エネルギーとなるには一定期間必要であることから、当面原発には役割があると申し上げてきた。このような方向性に大きな違いはないと考えている。
片寄 即原発ゼロではなく、国が安全だと言えば原発を再稼働し、将来的に脱原発を目指すのか。
松浦市長 国は原子力規制委員会のもと、まずは原発の安全性を早期に世界最高水準に引き上げ「安心・安全」を確保することが何より重要であると認識している。
グリーンエネルギー革命実現に向けたロードマップなどの具体策については不明確だと感じている。
片寄 市長選挙にあたって、市長を推薦した自民党は原発推進だが、政策協定は結んだのか。
松浦市長 自民党との政策協定については結んでいない。
片寄 活断層が多く地震の危険がある上、核のごみ処理の見通しがない中で、世界最高水準のレベルアップとはどこを引き上げるのか。
松浦市長 規制委員会が来年の夏までに公表する安全基準について、世界最高水準であると自信を持って公表していただきたいと思っている。
憲法問題
片寄 集団的自衛権を行使できるようにせよとの意見があるが、アメリカが行う戦争に一緒になって参戦し、戦争ができる国にしようとするものである。
市長は、憲法9条をなんとしても守る立場かどうか。
松浦市長 憲法改正は、国会が発議するものであるので、憲法第9条の問題については、先ずは、国会で議論すべき問題であり、その上で、国会において憲法改正ということになれば、国民投票による承認を経ることになるので、国民的議論を深めていくことが大切であると考えている。
オスプレイ配備
片寄 12月上旬に全国配備が伝えられているが、島根県とともに反対の立場を表明する考えはないか。
松浦市長 9月議会でもお答えしたとおり、オスプレイの配備や訓練については、国政の問題であり、安全性や国民への影響等に関して、国が責任を持って適切に対応していただきたい。
津波対策は
片寄 地域防災計画の中に、日本海の海底活断層連動による津波被害をもりこむべきと思うが。
小川防災安全部長 9月議会でもお答えしたとおり、「島根県地震被害想定調査検討委員会」の報告書で示された6つのパターンの津波想定に基づき、現在、島根県・松江市ともに地域防災計画の改定作業を行っているところである。
日本海沿岸部の活断層の連動による津波被害については、県において新たな知見として検討されれば、その状況に応じて、市の地域防災計画に反映させていくことになると考えている。
防災拠点の耐震化対策
片寄 防災拠点の耐震化対策はどうか。
小川防災安全部長 防災拠点としては、災害対策本部を設置する本庁舎西棟や地区災害対策本部を設直する支所、公民館と、その他災害時の活動拠点となる消防本部や消防署の35施設がある。
この施設のうち、26施設が新耐震基準で建てられており、耐震基準を満たしている。
残りの旧耐震基準の建物については、耐震診断を実施し、順次耐震化等を進めている。
片寄 防災拠点のうち耐震基準が達成できていない施設名は。
小川防災安全部長 旧耐震基準の建物は、市役所の本館、別館、島根支所、玉湯支所、八雲支所、東出雲支所、朝酌公民館、古江公民館、竹矢公民館である。
ヨウ素剤の職場・家庭配備を
片寄 ヨウ素剤の職場・家庭配備の検討をすべきではないか。
松浦市長 安定ヨウ素剤については、本年10月末に国が定めた原子力災害対策指針の中で、原子力災害対策重点区域毎の服用の考え方などが示されたが、投与の判断基準、事前の配付や備蓄・補充等の手法等については、今後の検討課題とされています。
また、原子力規制委員会は、11月から検討チームを設置し、年内を目途にこれらの検討課題について、対応策の方向性を検討しているが、詳細な検討は、その後も引き続き行うとしている。
市としては、安定ヨウ素剤の事前の配付や備蓄等については、国が考え方を示すことが必要であると考えており、引き続き国の検討状況を注視してまいりたい。
12月21日、日本共産党議員団を代表して、地方の社会資本整備の促進を求める意見書について反対の討論を行いました。
地方の社会資本整備の促進を求める意見書についての反対討論
議員提出議案第8号 「地方の社会資本整備の促進を求める意見書について」、反対討論を行います。
意見書案は、原発が立地する松江市における避難道路の建設の意義などを強調し、災害対策などの社会資本整備を強化することを求めるものです。
昨年の東日本大震災の災害は、「人災」、「政治災害」という側面が非常に強いものでした。平時ですら救急車の受け入れ先病院が見つからないなど救急システムが弱体化していた上に、全国的にも医師不足、看護士不足によって被災地への十分な支援体制が確保できませんでした。
その原因は、歴代政権の医療費抑制政策、高齢者や障害者への「自己責任論」の押し付けでした。
対GDPでの一人当たりの医療費では、日本は先進国の中で最低水準。産婦人科の閉鎖、小児科不足など深刻な状況です。
防災対策は急務ですが、大事なことは住民の福祉を守ることと災害から命を守ることを一体としてとらえ、ハード面での防災対策とともに普段から医療、介護、福祉、子育てなどの強い基盤づくりが必要です。
今回提出された意見書案は、ハード事業の拡充に特化した要望で、住民を真に大切にした防災基盤づくりとはいえません。「福祉・防災のまちづくり」は大事な観点であり、この立場で、「福祉」と「防災」のバランスをとりつつ要望すべきです。
とりわけ高規格道路としての境港出雲道路は、今日時点で交通量調査や国道431号沿線の商業の状況もみながら必要性について再検討することが必要です。境港出雲道路が避難道路として不可欠などということはありません。島根半島の東西方向には国道431号線が現に存在しており、その改良工事なども検討し、機能確保をはかるべきです。
以上の理由により、可決に反対します。
私が反対討論を行った意見書とは
地方の社会資本整備の促進を求める意見書
国民が安全・安心に生活し、経済活動を維持していくには、道路、河川、砂防など防災・減災に資する社会資本整備と、国の出先機関及び地方自治体が連携して迅速に対応できるよう、危機管理体制を充実することが必要である。
原子力発電所が立地している松江市においては、市民が安心して暮らし、社会経済活動を展開していくには、防災避難道路など災害に強い道路ネットワ−クの構築や大橋川改修等の治水対策、土砂災害対策、津波対策としての港湾・漁港などの社会資本の整備など一層の推進が求められる。
しかしながら、国の公共事業予算の平成25年度概算要求では、「日本再生戦略」に関連する施策が、別途「重点要求」等されているものの、歳出の大枠を24年度と同水準に抑える方針のため、予算確保は大変厳しい状況にある。
すでに国の公共事業予算は、平成21年度から3年間で2.5兆円、35%の削減がなされており、更なる削減は過疎化・少子高齢化が進む地方を疲弊させ、地域間格差の拡大を招く恐れがある。
国におかれては地方の切実な状況を十分に踏まえ、次の事項を実現されるよう強く要望する。
記
1 地方の安全・安心な生活の確保と、地域活力の増加に資する社会資本の整備に必要な予算を十分確保すること。
特に避難道路として不可欠である境港出雲道路など高規格道路の整備と、市内中心部を流れる大橋川の改修については、重点的に予算を確保されたい。
2 社会資本整備総合交付金、地域自主戦略交付金等については、道路の防災・震災対策や交通安全対策、河川改修、土砂災害対策等の地方の実情に応じた事業が計画的に実施できるよう、「重点要求」分と合わせて必要な予算を確保し、整備が遅れている地方に重点配分を行なうこと。
3 国は危機管理の機能と体制の充実を図り、大規模で広域的な災害に迅速に対応できるよう、地方の社会資本整備の促進を図ること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成24年12月21日
松 江 市 議 会