美保基地へのC−2配備を考える
防衛省中四国防衛局は今年4月、航空自衛隊美保基地(米子飛行場)の輸送機C1について、2014年から順次、後継機の輸送機C2(仮称)に変更する方針を鳥取・島根両県や関係自治体に伝えました。
現在、美保基地には航空自衛隊の輸送航空団があり、C1輸送機が10機配備されています。これをC2に代えて、2014,2015年でまず2機配備するとし、2011年度予算で、二機の調達経費=374億円、関連施設整備=20億円、総計394億円を計上しています。
行政や議会への説明に加え、6月に入ってから鳥取県の境港市や米子市など、また島根県側でも、9月6日の松江市八束町をはじめ基地周辺地域の住民代表への、中四国防衛局や美保基地による説明会が行われました。
世界で1,2の大型輸送機
C2は、C1と比較すると、幅、長さ、高さが1・5倍となっており、総重量は3倍を超え、最大積載量も4倍近く、容積的に見れば4倍近い大型輸送機で、世界各国の現有ならびに開発中の軍用輸送機と比較してもアメリカのC17につぐ大型輸送機です。
12トン積載時で6500qという航続距離はC1の約4倍で、これも世界の軍用輸送機と比較しても1、2を争う性能です。
空中給油ができるという性能から見れば、世界のどこへでも出動することができる、世界最強の輸送飛行部隊ということになります。
歓迎する人はいない〜境港
現在、C2は、航空自衛隊岐阜基地で飛行試験を行っており、鳥取県側では関係者が岐阜基地でのC2の騒音視察を行っています。
自衛隊側は、C2はC1に比較して騒音が少ないことを強調していますが、C2の離着陸時の騒音80から90デシベルは、防衛局の資料で「電話が聞こえない」レベルから「地下鉄の車内」「怒鳴り声」のレベルです。
戦後ずっと苦しんできた境港市では「喜んで歓迎する人はいない」との声がでています。
批判の声多面的に広がる
9月6日八束町を皮切りに始まった島根県側の住民説明会では、自衛隊の救援活動に理解を示す人々からも「そもそも、4月に県に申し入れ、夏までには回答を要求するなど、地域住民の声を尊重する気があるとは思えない」、「大型化しても騒音は減るので問題はないとばかり、機種変更は当たり前という態度はおかしい」、「大型化すれば、訓練の範囲も騒音の範囲も、また危険の範囲も広がる、八束町の上空となっている訓練範囲を変えてほしい」など、防衛局の説明に対して厳しい批判の声が上がりました。
災害時の国際貢献が主要任務か?
「これほどの大型輸送機がなぜ必要か」という質問に対して防衛局側は、軍事的背景は極力避けて、国際的にも地震や災害時の国際貢献を主要任務のように述べ、「今度の大震災では美保基地から137回も飛んだ」と強調します。
しかし、この大型輸送機の配備に対して、周辺諸国はどのように反応するのでしょうか。「日本は世界を視野にその行動範囲を広げた、自衛の範囲を大きく逸脱した」と見るのではないでしょうか。
歓迎するのはアメリカばかりです。
基地機能の強化に懸念の声
八束町における説明会で橘祥朗さん(同町入江=66歳)は、「C2配備により、美保基地と周辺地域・住民は世界中の戦争・紛争に巻き込まれる、そのことを防衛省は説明すべき」と厳しく指摘しました。
「騒音が少なければオーケー」ではなく、「そもそも今度のC2の配備は何のためか」を考えるときです。
「機種の変更」は「基地機能の変更、強化」につながることが懸念されます。
「憲法九条をもつ国がこれでよいのか」と、党派を超えて懸念の声が広がっています。
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