9月市議会の一般質問は、「新しい松江」の9月25日号をご覧ください。補足して若干の論戦を紹介します。
早速の議会報告! 日本共産党松江市議団
<国保問題> 国保運営の都道府県化にともなう財政問題
片寄 平成30年より国保運営の都道府県化が予定され、事務の効率化をはかるといわれるが、行革効果の試算はされているのか。
市民部長 現在、県と市町村で保険者事務の共同実施などを検討しており、市町村の事務が決まっていないため、行革効果については試算していない。
片寄 消費税の増税延期によって国保への財政支援3400億円の確保が危ぶまれているが、国への要請はどのようにしたのか。
市民部長 6月に全国市長会を通じて「平成27年度から実施された保険者支援金の公費拡充及び平成29年度からの後期高齢者支援金への全面総報酬割導入による更なる国費の投入を確実に継続して実施すること」、「今後も引き続き医療費の増加が見込まれることから、国による財政支援を拡充し、更なる国保財政基盤の強化を図ること」を国に要請している。
データヘルス計画って何?
6月に国保の調査をしていたら突然、「データヘルス計画」という施策を知りました。
2013年に閣議決定された「日本再興戦略」において、義務付けられました。すべての健保組合に対してレセプト等のデータ分析に基づく保健事業計画の作成・公表、事業実施、評価等のとりくみが求められるようになりました。
松江市では2015年度から2017年度までの実施計画がしめされました。
市議会の常任委員会に説明があったのは今年の8月31日。あまりにも遅い発表に唖然としました。
患者削減の目標人数も策定することになり、地域医療計画と合わせてベッド数削減の根拠とされるおそれもあります。
<原発・防災問題> 安定ヨウ素剤シロップ化
片寄 安定ヨウ素剤は錠剤のものしかなく、乳幼児にシロップ状のものの配備が必要だが、対策を伺う。
防災安全部長 3歳未満の乳幼児は、薬剤師等が粉末剤から調整した液状の安定ヨウ素剤を服用させる必要があり、市立病院や保健所等で備蓄している。乳幼児用安定ヨウ素剤のゼリー剤が開発され、製造販売が認められた。島根県においてもこのゼリー剤の購入の準備を進めているが、今後、ゼリー剤を配布、備蓄等を行うにあたっての考え方が国から示されると聞いている。
<部落問題>
片寄 部落差別の解消に関する法律案が、衆議院で継続審議となっている。2002年3月に同和の特別法が終結したというのに、部落差別の定義もない法案だ。実態調査を地方自治体の協力を得てすることになっているが、定義のはっきりしないもので実態調査をしようとしたら、出身地や血筋を特定することになり、プライバシーの侵害になる。
法律制定には立法事実が必要だが、立法事実が存在するとお考えか。
総務部長 提案者が関係機関などの調査を行い、立法事実を確認された上でのことと考えている。
片寄 国会審議で論争となった点だが、提案者が立法事実を一言も言う事ができなかった。
プライバシーの侵害やなりすまし犯罪を常態化させるマイナンバー制度の拡充反対
議第153号 松江市印鑑条例の一部改正について、ならびに議第161号 平成28年度松江市一般会計補正予算(第2号)は、いずれもマイナンバー制度の対象を広げ、コンビニでの印鑑登録証明書の交付申請ができるようにするものです。マイナンバー制度はプライバシーの侵害やなりすまし犯罪を常態化させるもので、可決に反対です。
無駄な公共事業をやめ、少子高齢化対策、地域経済振興のための政治を行うべき
決算第1号 平成27年度松江市一般会計歳入歳出決算についてです。
2014年4月の消費税8%増税と円安誘導による物価高が暮らしと地域経済を直撃し、社会保障への国庫負担の削減は、医療、介護問題を深刻化させ、国保料など重い社会保険料負担に市民生活は深刻な影響を受けました。さらに歴代政権の輸入自由化政策が地方の基幹産業である農林水産業に打撃を与え、地域経済を衰退させてきました。
安倍政権は、これら失政への反省もなく、地方創生やアベノミクスの地方への波及を強調してきましたが、消費税の再増税、社会保障の切り捨て、雇用破壊、TPP(環太平洋連携協定)の推進、原発の再稼働・輸出政策に奔走しています。
国の政治がひどいときだからこそ、住民に一番身近な市政は、悪政から市民生活を守る防波堤の役割を果たさなければなりません。市長は松江北道路の早期完成を言いますが、わずかな時間短縮のために250億円もの巨費を投ずるのはいかがなものか、ハクチョウの飛来する湖北の穀倉地帯の自然を守ってほしいなどの声が多く出されています。次世代に多額の借金を残し、永続的に続く維持管理費を憂える声もあります。無駄な公共事業をやめ、少子高齢化対策、地域経済振興のための政治を行うべきです。
福島原発事故の教訓は、原発は決して安全な技術ではなく、使用済み核燃料の処理、処分ができない以上、政治が原発ゼロを決断することが重要です。
27億円もの原発交付金の使途については、経常経費に多く充てられており、原発を抱える自治体の防災・安全対策にこそ重点的に充てるべきです。
市町村合併から10年以上経過しましたが、周辺地域は衰退の一途です。定住自立圏構想や中枢拠点都市構想は、道州制の実態づくりを地方の側から進めるものです。
市民団体の補助金算定には大きな格差があり、同和団体への補助金は行政丸抱えで突出しています。とりわけ全日本同和会島根県連合会への補助金支出は問題です。この団体は島根県から莫大な補助金を受け人件費も補助対象とされています。市町村からも負担金や補助金を受けています。民間運動団体で県行政からも市町村行政からも補助金を受けているのは異例の事態です。平成27年度まで市町村法令外負担金等適正化審議会で審議され了承されてきましたが、審議対象から外されました。部落問題解決のために重要なことは格差がなくなってきた状況を認識した以降の施策として、特別扱いをしないことです。部落問題での差別がほとんど解消されてきているときに、旧態依然とした特別扱いを続けている行政の姿勢が問題です。まさに逆差別を生み出しています。
関連して今、大問題となっている問題に触れます。
部落差別を固定化し、永久法として制定しようとしている「部落差別の解消の推進に関する法律」案が国会で継続審議となっていますが、部落差別の定義もなく立法事実もない法案であり、制定されれば地方自治体にも調査が義務付けられます。滋賀県甲賀市議会では先ごろ、反対意見書が可決されました。この法案の廃案を強く求めるものです。
国民一人一人に番号を割り振って、所得や納税実績、社会保障に関する個人情報を一つの番号で管理するマイナンバー制度は、プライバシーの侵害や成り済まし犯罪を常態化させるもので、費用対効果の検討もされていません。
子ども医療費の無料化制度が拡大する自治体が増大する中で松江市の施策は市民のニーズに追い付いておらず、松江市が標榜する「子育て日本一」とはほど遠い状態です。まず松江市独自に中学卒業までの医療費無料化を実施したうえで県・国の施策として実施するよう強力に働きかけるべきです。
保育所待機児童対策は、市として中途採用の保育士の雇用に努力されたことは評価しますが、採用しても経験のある保育士として長く働き続けるための処遇改善についても市独自に対応すべきです。
今年の5月1日時点で、児童クラブの国基準に対し、子ども一人当たりの面積1.65u未満が7地区、子どもの集団40人以下の基準未達成が18地区あります。また、国基準は6年生までを対象としており、保護者の不安に応えるためにも6年生までを受け入れるべきです。
学校給食の食物アレルギー対応は、大規模の南センターでも引き続き取り組まれ、全体の取り組みとしても努力されたことは評価しますが、地産地消割合は、8品目で平成27年度一番高い八雲センターは54.1%で唯一掲げた目標45%をクリアしていますが、残る8センターは達成できていません。特に大規模の南・北・西については15%から17%と低く、著しい格差です。農政課とも連携し、目標達成に向けて努力すべきです。
教材費や図書費などを軒並み減らしておきながら、学力テスト結果を学校別に公表して点数競争に拍車をかけることは矛盾しています。生きる力、考える力を養う図書館教育にこそ力を注ぎ、司書の全員嘱託化を早期に実現すべきです。
中学生のキャリア教育に3校中2校が自衛隊を選定しています。安保関連法が成立し11月にも南スーダンに「駆けつけ警護」など集団的自衛権を発動するという事態になっており、キャリア教育に自衛隊を選定することはやめるべきです。
直営だった松江市斎場を平成27年度から指定管理者に行わせ、大幅な使用料の値上げをし、市民負担を強いてきたことも指摘しておきたいと思います。
国保財政基金は取り崩して保険料引き下げを
決算第2号平成27年度松江市国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算について
18歳未満の子どもの保険証を市役所にとめ置くことをやめ、解消されたことはおおいに評価します。しかし、大量の資格証明書の発行は医療を受ける権利の侵害です。国保運営の都道府県化の前に溜め込まれた5億8000万円もの国保財政基金は取り崩して保険料引き下げに充てるべきです。
介護保険料は払える限度を超えている
決算第5号平成27年度松江市介護保険事業特別会計歳入歳出決算について
平成27年度は、介護保険料の改定がなされ、1ヶ月平均5,085円から5,848円に値上げされました。滞納者は、1,300人近くにもなり、払える限度を超えています。高い保険料を徴収しながら、平成27年度は、9,600万円以上を基金に積み立て、年度末の基金残高は5億5,278万4,000円です。基金を崩して保険料を引き下げるべきです。
水道料金の引き上げに反対
決算第11号平成27年度松江市水道事業会計決算について
平成27年度は水道料金の引き上げがおこなわれた年であり認定に反対です。
料金引き上げの結果、使用料は増えているものの、大口利用者の地下水利用からの転換は進まず、一般家庭の負担が増えただけとなっています。
大口利用者への負担減を図った料金改定でしたが、口径25ミリ以上の戸数が50件以上小口径へ変更していることは、当局の目論見がはずれ、水道料負担減を図る大口利用者が益々増加していることを示しており、このまま推移すれば一般家庭の負担増が広がることが懸念されます。
平成29年度からの簡易水道との統合、料金の統一を前に、国や県に対する高料金対策を引き続き求める事、一般会計からの繰り入れを行うなど、これ以上の一般家庭への負担増を避けるよう強く求めるものです。
初診時選定療養費導入の狙いは受診抑制
決算第16号平成27年度松江市病院事業会計決算について
時間外選定療養費と初診時選定療養費は、生活保護家庭からも徴収しており、自治体病院のモラルに外れる行為です。
特に初診時選定療養費は、導入の狙いが受診抑制にあることは重大問題です。重症でない患者に療養費を課すことにより振り分けるものです。平成27年度は平成26年度に比べ1.7倍も件数が増えています。
地域医療構想案が公表され、ベッド数を減らす狙いは、医療費削減の為です。医療費が高い原因として、法外に高い薬価の問題を指摘しなければなりません。一例としてオプジ―ボというがん治療薬は、日本では100ミリグラム約73万円であるのに対して、アメリカでは30万円、イギリスでは15万円であり、日本の薬化の決め方が不透明です。薬価の算定を透明化するために国に働き掛けることが必要です。