悲しい酒
高野 八朗 平成21年7月30日付け島根日日新聞掲載
出雲市随一の繁華街と言われる代官町は、今夜も人が少なかった。ネオンの灯りだけが、そぼ降る雨の中に浮かび上がっている。 |
◇作品を読んで
下敷きになっているのは言わずと知れた、美空ひばりの歌、『悲しい酒』である。歌というものは、特に、演歌にはドラマがある。ドラマがあるから演歌があると言い換えてもよい。演歌は、さまざまな人生の喜怒哀歓を歌詞とメロディに託している。それが心を慰めたり、希望を持たせてくれるのである。 この作品は、四百字詰原稿用紙で三枚半だ。どの演歌でも、想像を膨らませれば、こんなドラマがある、というか創作ができるのでないだろうか。何も書くことが無いときに、手すさびに作ってみるのはどうだろう。何でもよいから書き出してみる。そうすれば、筋書きが生まれる。あとは言葉を「楽しんで」選ぶのである。 作者は、このドラマを片手にして、代官町に今宵も出かけだろう。ひょっとして、奈津≠ニいう飲み屋に出会うかもしれない。 |