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2015年2月議会一般質問

[2014/3/7]
 人生で最後の議会に最後の質問をさせて頂きました。
 一番問題意識を持っていた持続可能な島根について、そして、議員活動のライフワークとして取り組んできた図書館について取り上げさせていただきました。

  1. 持続可能な島根について
    • 持続可能な島根について
  2. 図書館について

 質疑内容は下記の通りです。それぞれ文字色で私の質問知事答弁関係部長・教育長答弁がわかるようになっています。
 この度、市議会議員時代を含め、28年間の議員生活にピリオドを打つことになりました。本日、最後の質問の機会をいただきましたこと、心より感謝と御礼申し上げます。
 さて、自分の議員活動を振り返ってみると、自然農業や有機農業、死の文化、食育、精神医療、ひきこもり、学校図書館・公共図書館、芸術文化、子どもとメディア、地域通貨、IT、ドクターヘリ、人づくりなど、様々な問題・課題に取り組ませていただきましたが、どちらかといえば、マイナーな問題が多かったように思います。
 自分の問題意識は、一つを深めることで新たな問題にぶつかり、またそれにも取り組むことによって幅が広がってきました。
 そしてある時、マイナーだけど全部通底しているじゃないかとガッテンしました。その問題意識は持続可能な地域創造ということであります。
 今まで、持続可能な島根という視点で何度も質問をさせて頂きましたが、最後にもう一度、自身で最大の課題だと思う「持続可能な島根について」質問させていただきます。

 先日、「鳴り物入りで始まった医療制度改革『オバマケア』は、恐るべき悲劇をアメリカ社会にもたらした」とする本を読みました。
 そこには、石油、農業、食、教育、金融の領域を蝕んできた「1%の超富裕層」たちによる国家解体ゲームの最終章が人類の生存と幸福に直結する「医療」の分野だった、とも書かれています。
 2008年9月、リーマン・ブラザースの破綻に端を発したリーマンショックが、世界を震撼させたのは記憶に新しいところです。
 知人は、これで人の価値観が変わり世界も変わると考え、高校教師をやめ、生き方を変えました。私も変わるかもしれないと思いましたが、強欲資本主義は一層勢いを増しているやにも思えます。その象徴がオバマケアかもしれません。
 オバマケアによって、全米最大手の保険会社・エトナ社CEOの報酬は、前年より131%増の3070万ドルになったとか。全ての国民が医療を受けられるようになったはずが、実態はその逆。美味しいところは全て1%の超富裕層が独占してしまうという構造のようです。
 もう一冊、「中国化する日本」という本を読みました。歴史を見る視点が大きく変わりました。日本は、徹底した自由社会であるけれど、民生機能を放棄した徹底した格差社会である中国化と、身の安全を「お上に委ね」る一方、自由を縛る再江戸時代化の間で綱引きしながら、中国化の方向に向かっているというのが著者の認識です。
 中国化、再江戸時代化、どちらも一長一短があると思いますが、オバマケアに象徴される中国化や新自由主義が行きつくであろう社会だけは御免です。
 先日の地元紙のこだま欄に、「危うさ感じる時代の雰囲気」との投稿が掲載されていましたが、格差社会の拡大と固定化は憂慮すべきところまで来ているように思いますし、社会の中国化圧力は一層顕著になってくるのではないかと懸念しています。
 縮小の時代、中国化圧力とどう向き合い、どう持続可能な地域社会を作って行くのかを考えて行かなければならないのではないかと思います。

 エコロジカル・フットプリント。あるエリアの適正な環境収容力をどれぐらい超えた経済活動をしているのかという指標があります。これによると、世界中の人が日本人と同じ暮らしをすると地球が2.4個必要、アメリカ人と同じ暮らしなら5.4個、全人類で見ると1.2個必要ということです。既に人類の生活は完全にオーバーシュートしております。地球を食いつぶしながら生きているのが私達であります。
 アメリカの農業経済学者・レスターブラウンが20年前に「地球29日目の恐怖」を提言しました。それは、睡蓮の池があり大きな葉っぱが、一つ浮かんでいる。それが毎日、2倍に増える。二日目には2枚になり、三日目には4枚、四日目には8枚になる。そしてたずねる。池が30日目に一杯になるとして、池の半分が葉に覆われるのはいつだろうか?言うまでもなく29日目です。そして、今の地球での人の暮らしは、29日目の恐怖だと。
 アメリカインディアン・イロコイ族は、物事を決める時、7代先を考えて決めると紹介したことがありました。私たちは、本当に将来世代のことを考えて今の一手を考えているのでしょうか。

 成熟社会を迎えつつある今、夢が描き難いこともあってか、足るを知る生き方、降りて行く生き方を目指すなど、若者のトレンドが変わってきていると感じています。
 豊かさや便利の象徴である効率化は、物や時間の豊かさを生み出しますが、一方では、技術が失われるとともに、格差の拡大など、様々な社会的課題を生み出しています。
 然は言え、市場競争的には「不可避の中国化」かもしれません。そこも睨みながらも、貧しいかもしれないけれど、人々が支え合い、心豊かな「範囲の経済」が機能する持続可能な地域、島根を創造したいものだと思います。
 海士町は、日本や世界を牽引するタグボートを目指すと聞いています。海士へTターンしてくる若者は、年収が半分になっても厭わずにやってきます。志があるところに人が集う時代かもしれません。
 ある意味、降りて行く生き方だろうと思いますが、一方ではグローバル社会にも目を向けた人づくりも考えています。

 「中国化する日本」の著者は、再江戸時代化を「派閥談合+農村コミュニティ」とも言っています。
 その政治風土が1,000兆円を超える国の借金を生み出してきました。そのような政治風土は、再江戸時代化は、どんなマジックを駆使しようと持続可能ではないところまで来ているのではないでしょうか。
 五百川議員は、県土論を問う中で、国がどうあれ、永田町がどうあれ、島根は島根の我々が守るのが大儀であると仰言いましたが、同感であります。
 今こそ、国がどうあれ、30年、50年、100年後の島根のあるべき姿、明確な県土論を描き、そこからバックキャスティングで今何をなすべきか、そして、それを直面する課題とすり合わせながら一歩一歩進む必要があるのではないでしょうか。
 それが可能とすれば、島根は日本や世界を牽引するタグボートになるだろうと思います。行き過ぎたグローバル化を見直す動きは必ず起こってくると思います。
 3選を目指す知事には、今後、そうした視点をしっかり持っていただき、県政のかじ取りをお願いしたいものだと願ってやみません。
 持続可能な島根について、知事の思いをお聞かせいただければと思います。
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 次に、人づくりが地域の未来を決すると考え、議員活動のライワークとして取り組んできた図書館の問題について最後の質問をさせて頂きます。
 最初に学校図書館についてであります。
 2008年2月、知事は、行列のできる朝の城北小学校の図書館の様子を視察してくださいました。すぐに、子ども読書県しまねの取り組みを始めてくださり、2009年4月からは、全国で初めて、県内のすべての小中学校に司書等の人を配置する事業に踏み込んでいただき、高等学校、特別支援学校にもその取り組みを広げて頂きました。
 以来、今日まで、島根は全国の学校図書館関係者の注目を浴び続け、全国のモデルとなってきました。
 私は、事あるごとにこの問題を取り上げさせていただきましたが、「読書センター」としての図書館は様変わりし、子どもたちの姿が絶えることはありません。
 また、学校図書館を活用した教育への理解が広がり、「学習・情報センター」としての活用が進んでいます。しかし、まだ途上であり、多くの課題も抱えています。

 先日、先進的取り組みを行ってきたある学校で、「課題解決型」授業の取り組みをもう一度検証し、再出発しようという校内研修会に参加させていただきました。
 学校の先生は変わります。体制が整えられ、先進的取り組みが続いているように見えても、人が変われば同じモチベーションやスキルで続けられるものではありません。
 今後、どのような人づくりを目指すのかという明確なビジョンの下で、学校図書館を活用しながら課題解決型授業を一歩進めた、問題解決型授業に取り組んで行くのか。各種の研修会などを通し、もう一度原点を確認しながら、進む必要があるのではないかと感じました。

 2006年2月、シンガポールの学校訪問を踏まえ、シンガポールの目指す教育理念“Teach less learn more”について所感を尋ねました。
 教育長答弁は、体験的・問題解決的な学習を積極的に取り入れ、児童生徒が自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、判断し、よりよく問題を解決する力を身に付けることの大切さを明示しており、教員には「確かな学力」の必要性について、学校訪問指導や研修を通じて指導していると答弁されました。
 以来9年ですが、「学び方を学ぶ」「問題意識醸成力」を意識した授業の取り組みが広がりつつあるものの、未だ課題解決型授業さえも消化不良ではないかと思います。
 文部科学省は、新学習指導要領改訂を諮問する中で、更に問題解決型授業への進化を図る考えを示しています。これからの時代は、自ら問題を発見しその問題を解決する力が必要との認識です。
 問題解決型授業は脱・説明型授業、脱・訓練型授業であり、アクティブラーニングと学校図書館が鍵と言われています。
 松江市では学力調査結果を公表し、必要な学校に学力UPのための学習支援の人を配置すると報道されていました。そういう方向性は、自ら問題を見出し自ら解決する力を醸成することに繋がるのでしょうか。
 内田樹は、学ぶことを欲望するものしか学ぶことができないと言い、今、人生の師を持つ人は稀だと言っています。説明型授業や訓練型授業では、人生の師を持つ機会になりえないのです。
 一緒に課題解決型授業を見ながら、子どもたちが授業に「興味を持ち進んでしているのか」と疑問を呈した方がいらっしゃいましたが、訓練型授業の限界かも知れません。
 教師は仰ぎ見る存在であって欲しいと思いますが、学校図書館活用教育を進化させることは、人生の師をも生み出すことに繋がると思います。

 今後の学校図書館活用教育の充実について、教育長の決意を伺います。
 知事、「子ども読書県しまね」の取り組みを通して、どのような人づくりを目指したいのか、改めてお尋ねいたします。
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 次に、県立図書館のあり方についてであります。
 島根県立図書館が「日本建築家協会25年賞」を受賞したと聞きました。
 この賞は、25年以上に亘って「長く地域の環境に貢献し、風雪に耐えて美しく維持され、社会に対して建築の意義を語りかけてきた建築物」を表彰するというものとか。
 菊竹清訓建築設計事務所の手による県立図書館は、開館45年。モダニズムの真髄とも言える素材とダイナミックなデザインが評価されています。
 その話を聞き、館内に目を凝らすと、持ち出しの階段や回廊は床の厚さが3段階。そして、広いホールの屋根は鉄骨造ですが、梁の美しさは息を呑む感じ。
 菊竹氏の最初のデッサンを見ると、ゆったりと開放感に溢れた空間に身を置き、堀川や椿谷の木々との一体感を楽しめるように考えられているようでした。
 しかし、今はそうした設計者の思いは見る影もないかもしれません。
 昨年、「知の広場」の著者アンニョリ・アントネッラさんが、一月半日本に滞在し、各地の図書館を巡りました。最後の講演会で、日本で一番酷い図書館はと聞かれ、スライドに映し出したのがわが県立図書館だったようです。
 建築の文化的価値は、人や設備や備品などとともに一体的に存在するものだろうと思います。

 開館当時の県立図書館は蔵書が8万冊で、10万冊の開架を前提に設計されたものだそうですが、現在の開架は18万冊。そして、現在の閉架庫は45万冊でほぼ満杯。
 資料収集が大きな役割とすれば、閉架庫の増設は喫緊の課題ですし、日本で一番酷い図書館との評価は、前提を大幅に超える開架にその原因があるように思います。
 1986年に松江市立図書館が開館しましたが、現在でも県立図書館は松江市立橋北図書館の役割も持ち続けています。
 県立図書館の役割はどうあるべきか、日常的なユーザーの多くは松江市民という背反的な要素も踏まえて再検討する必要があるのではないでしょうか。

 先日、県立図書館で開催されたトークセッションで、講師の岡本真さんは公立図書館の新しいサービスの切り口の一つとしてコ・ワーキングスペースを提案されていました。そこまでの役割を担うべきか論議はあると思いますが、下北沢のマイクロライブラリーを持つコ・ワーキングスペースを見た実感から、説得力があるし、そうしたコミュニティづくりや人づくりに積極的にかかわるべきではないかと感じています。

 島根観光ナビのWeb Siteに「モダニズム建築物の宝庫 しまね建築探検ツアー」というサイトがあり、県庁、図書館、武道館、県民会館、県立美術館が紹介されています。
 宝には宝に相応しい運営や魅せ方があるのではないでしょうか。今の県立図書館は、島根県の文化を支える宝としての機能をどこまで果たしているのか、検証すべきであると思います。
 併せて、以前にも指摘させていただいたことがありますが、今の館長がということではなく、館長は、通過ポストや上りのポストであってはならないのではないかと思います。
 島根の文化を担い創造するリーダーであります。館長の人事は島根の民度そのものと言えると思います。戦略性のある館長人事を考えるべきではないでしょうか。

 島根県立図書館について感じていることを述べさせていただきました。
 現場をよく見て頂ける知事に、日本建築家協会25年賞の建築の神髄と県立図書館の現状をしっかり見て頂きますことをお願いするとともに、知事、教育長に県立図書館の在り方を県民とともに検討していただきますようお願い致します。
 所感があれば、お聞かせください。
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