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2013年9月議会一般質問

[2013/6/18]
 大きく6点について取上げましたが、具体的に良い答弁が帰ってくるとうような質問ではなかったので。ただ、道路ストックに関して、レーダー探査による調査は技術評価型の入札方法に変わっていくのではないかと思います。

  1. 「マネー資本主義から里山資本主義へ」について
  2. 各種行政委員の報酬について
    • 見直しのルールや考え方につい
  3. 林業の振興について
  4. 道路ストック総点検について
  5. 愛着形成期の母子支援について
  6. “本”に関わる教育問題について

 質疑内容は下記の通りです。それぞれ文字色で私の質問知事答弁関係部長・教育長答弁がわかるようになっています。
  質問の第一は、「マネー資本主義から里山資本主義へ」について。
 先日、今回はIT産業がメインという県主催の産業セミナーin東京に参加させていただきました。
 誘致企業の皆さんによる座談会や出席者との懇談では、多くの皆さんから担当職員への高い評価を頂きました。私の脳裏にも何人かの県職員の顔が思い浮かびました。島根県民の一人としてとても誇らしく思いました。
 座談会では、「場所が接待する」、「もっと健康や幸せな地というソフトでの発信に取り組んだら」という発言が印象に残りました。
 ちょうど読んでいた「里山資本主義」の考え方と重なる発言でした。また、後日意見交換した、自産自消の循環を行い、「理解ある消費者」を増やし「情熱を持った農業家」を育てることを経営理念とする、マイファームの西辻社長や、詩人であり随筆家でもあるアーサー・ビナード氏の考え方とも通底しています。
 中曽根元首相は、「エネルギーと科学技術がないと、日本は農業しかない4等国家になる」と、福島原発事故の後のインタビューに答えています。我が国の国づくりの底流にある考え方であろうと思います。
 そのお陰で、私たちは豊かになりましたが、物質的な豊かさと反比例するように心に起因する問題が深刻さを増しています。
 今、若者を中心に成長優先的な価値観が大きく変化し、トレンドが変わりつつあります。
 先日、農業をやるのが夢で、島大医学部に来ましたという女子学生に出会いました。彼女は、報酬として野菜を貰う野菜診療がしたいとも話していました。面白いですね。
 その朝には、島根にTターンをして有機農業をやりたいという、3年前に島大の大学院を卒業して東京に住んでいるという女性から問い合わせの電話がありました。
 そうした変化の受け皿、問題解決の入り口こそ第一次産業の基盤のある私たちの地域ではないでしょうか。
 「里山資本主義」では、日本再生のためにマネー資本主義から里山資本主義への転換をと提言されています。GDPは下がるかもしれないが、地域や人が豊かになる里山資本主義へという提言について、知事の所見をお尋ねいたします。
 「里山資本主義」という本が発行されておるわけでありますけども、日本再生のためのマネー資本主義から里山資本主義への転換を図るべきだという提言についてどう思うかと、こういうことであります。
 その本の中では、アメリカにおけますリーマン・ショックなど、マネー資本主義で大変なことが起こっておると。こういうことはこれからも続くわけでありましょうが、そうしたシステムよりも、これまで人間が活用してきた、しかし今や活用されてない里山といった休眠資産を再活用することによって経済の再生、コミュニティーの復活などができると、こういうことが根底に考え方としてあるようでございます。私もそういう面はあるだろうという気がいたします。他方で、このシステムはマネー資本主義に取ってかわるということではなくて、バックアップをするものであり、そして人によってマネー資本主義の割合が9割の方もあるし、里山資本主義が1割の方、あるいは五分五分の方、いろいろ人によって違うだろうということで、全体のシステムをマネー資本主義から里山資本主義に変えるという主張ではなくて、非常に現実的な提言ではないかと思います。
 やはり市場経済、世界がグローバル化された経済になって、大きな変動が生ずる世界になったわけであります。日本においても、大企業といえどもずっと安定した企業として存在するかどうかがわからないような時代になっておるわけであります。それに伴いまして、そこで働く人々の生活も非常に不安定なものになっておるわけであります。そうした中で、地域に根差したビジネスを活用する、あるいは自然の中で、今までの支出を切り詰めて、むしろ里山でいろんな活動をすることによって、支出は減るけども生活は豊かにできるといった面もあるわけであります。それは人々の選択にもよるもんだろうと思いますけども、日本では急激な都市化が戦後進んだわけであります。人口の移動も、地方から大都市へ巨大な流れがあったわけであります。こういう国はなかなか歴史的にもなかったんだろうという気がいたします。そういう意味で、自然との関係、市場経済との関係、人々によってそれぞれ見直しをされる一つの動きではないかというふうに感じておるところであります。 
  また、本県は、新しい地域像のフロンティアであると思っていますが、若者を中心としたトレンドの変化を大きな潮流とするにはまだまだ課題が多いように感じています。課題認識と今後の課題に対する考え方をお尋ねいたします。
 まず、議員の御質問の中にございました、島根県は新しい地域像のフロンティアとは、県内各地で地域の活性化を図るため先進的で工夫を凝らした特色ある取り組みが多数展開されていることだというふうに理解させていただきますと、それは例えば海士町の新凍結技術CASを使った島ブランドの創出、隠岐國学習センターや島留学などの隠岐島前高校の魅力化プロジェクト、邑南町では、地元の良質な農畜産物を活用したA級グルメ、食材の生産から販売まで一貫して行う耕すシェフ研修制度、江津市では、総務大臣賞をこのたび受賞することになりました江津ビジネスプランコンテスト、地元の産業人材の育成、創業支援を図るNPO法人てごねっと石見の活動などが挙げられると思います。
 こうした各地の取り組みの共通項として、どの地域にも若い人材を中心とした新しい知恵や頑張りが見受けられます。また、地域側にも共通して、新しい若い力を受け入れる包容力がございます。最近は、地域貢献、農業志向の高まりといった若者を中心としたトレンドの変化により、都市から地方への人材の動きも出てきています。
 このような状況の中、今後の課題としては、これらの動きを島根県としてうまく取り込み、大きな潮流に成長させ、地域の活性化に結びつけていくことであると考えています。そのためには、地域側も、異なる価値観を受け入れていくための受容力や、新しい発想を取り組んでいくための柔軟性を高めていく必要がございます。今後、県としても、市町村とともに現場に入り、地域の皆さんと膝を交えながら、こうした世の中のさまざまな動きにつきまして議論を深めていきたいと考えております。
  関連して、セミナーでお話しした政策投資銀行関連のキャピタル会社の方から、山陰両県からは大学発ベンチャーの申請が全くない。自ら考える・打って出る力が弱いと指摘されたのですが、トレンドの変化を大きな潮流とするにもそうした力は不可欠です。
 大学の生き残りをかける時代。評価の一つになるのではないかと思われる島根県の大学発ベンチャーの現状はいかがですか?また、併せて県内で活躍する人材の育成に関する取組事例についてもお聞かせください。
 大学の特許や研究成果などをもとに起業する大学発ベンチャーの設立数は、平成22年度に文部科学省が行った調査によりますと、調査時点までの累計で、県内では8社が設立されており、全国では38番目の設立数となっています。平成23年度以降の事例としては、ことし4月に、島根大学大学院の2人の学生により株式会社パワエレアカデミーが設立されています。この会社は、節電のための電力変換や制御などに使われる技術であるパワーエレクトロニクスに関して中小企業への技術指導やセミナーの開催などを行う会社です。この2人の学生は、製造メーカーと実際に話をしたときに、そこでの実践内容と学校で学んだ内容との距離を強く感じた、こうしたことから、産業界と学術界のかけ橋になりたいという熱い思いで会社の設立に至ったと伺っております。
 一方、ベンチャー企業の誕生までにはつながらないにしても、学生のうちに、みずから会社を興した方や県内で会社経営をしておられる方から会社経営の苦労や楽しさについての声を聞くなどして刺激を受け、ベンチャースピリットを養っていくことは重要であります。こうした趣旨から、松江高専では、4年生を対象として、地域社会と地域産業について学ぶ連続講座を平成17年度から実施しており、また島根大学では、全学年を対象として、中小企業について学ぶ連続講座が平成24年度から設けられています。県としては、創業、起業に向けた社会人へのセミナーなどを引き続き実施するとともに、大学、高専のこうした動きを通して学生が経営の社会性や厳しさを感じ、県内で活躍する人材となることを期待して、協力支援してまいります。
  県立大学では自ら考える・打って出るというような力を磨くということに関してどのように取り組まれているのか、お尋ねいたします。
 県立大学の大学ベンチャーのような打って出る取り組みについてでございます。
 県立大学では、人文社会学系の学部学科が中心で、大学ベンチャーが多く誕生いたします医学薬学分野や情報通信分野、製造業などとの関連が少ない面がございます。そうしたこともあり、県大発ベンチャーの実績はございません。
 一方、産学官の連携では、松江キャンパスでの研究により取得した特許の実用化を共同で進めている事例などがございます。また、県立大学は地域の知的拠点として、研究機関や自治体等との共同研究や受託研究、ボランティア活動の推進、地域ニーズを踏まえた公開講座の開催など、地域に根差した活動を積極的に進めております。そうした活動を通して、大学は主体的に地域とかかわり、一定の成果を上げているものと考えております。こうした成果の中から、ビジネス的な手法などを用いて地域課題の解決につながるような事例が生まれてくることを期待いたしております。
 次に、各種行政委員の報酬についてでございます。 
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 第二に、各種行政委員の報酬について
 本県の各種行政委員の報酬は、「月額制は地方自治法の趣旨に反する」として、滋賀県に支出差し止めを命じた2009年1月の大津地裁判決を契機に関係部局で検討され、一昨年4月から、日額制を基本としながらも、業務実態を勘案して条例で定めることで月額制と併用されています。
 上告を受けた最高裁は、支出差し止めを命じた一、二審判決を破棄、住民側請求を退け、被告の滋賀県側逆転勝訴が確定していますが、「報酬水準などは住民に十分説明できる内容にすべきだ」との補足意見が付けられています。
 条例改正から2年余ですが、環境の変化はないのでしょうか。
 住民に十分説明できる内容であるのか、時には見直しの検討も必要だと思います。見直しのルールや考え方についてお尋ねいたします。  
 まず、 非常勤の行政委員の報酬につきましては、議員も御指摘がありましたが、平成23年4月に、非常勤の職員等の報酬及び費用弁償支給条例を改正し、教育委員、人事委員、非常勤の監査委員、公安委員及び労働委員以外の行政委員の報酬は日額により支給することといたしました。月額支給から日額支給へ見直すに当たりましては、他の都道府県の状況も勘案しながら、業務の恒常性が高い監査、公安、教育、人事の各委員については月額支給、それ以外の委員につきましても、会議、行事の日以外に行う審査調査業務、委員が単独で行う業務、取扱事件数の多寡などを総合的に判断し、労働委員につきましては月額支給といたしました。
 現在把握しています各行政委員の活動状況からは、月額支給を判断した事情に大きな変化は見られないため、現時点では見直す必要はないと考えております。行政委員の報酬につきましては、今後とも、他の都道府県の動向など社会状況の変化や月額支給を判断した事情の変化などを注視し、適切に見直ししてまいります。
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  第三に、林業の振興について
 一昨年11月、再生可能エネルギーをテーマとした委員会視察で、大分県の木質バイオマス発電所を訪問しました。
 その際、再生可能エネルギーは推進しなければならないけれど、今のところバイオマス発電を含めて、これと言う決定的なものはないというのが委員間の共通した認識だったように思います。
 そんな認識も今は昔、国が本気で乗り出すと変われば変わるもので、2015年春、江津市と松江市でバイオマス発電所が稼働予定であります。
 小水力発電の可能性はほとんどないという調査結果などもあり、エネルギーの地域自給を進め、地域産業の振興を図るという観点からは、とても貴重な再生エネルギーです。
 そのような意味では、林業の振興によって、エネルギーの地域循環をさらに進めることは喫緊の課題であろうと思いますが、生産性と技術力、用材需要に体質的課題を持つと言われる木材産業ゆえに、バイオマス発電という風が吹き始めたとは言え、林業の振興も思うに任せない状況ではないでしょうか。
 ここ10年余りの間に、林業を国内産業の柱の一つに育てるとともに、バイオマスを地域エネルギー自給の要に育ててきたオーストリアですが、注目すべき点は、用材としての需要をとことん掘り起こし、売れるだけ売る。バイオマス利用の拡大はあくまでも木材需要の拡大に伴う製材屑や端材の活用にあります。
 バイオマスタウン構想を進める先進地、真庭市も同様のコンセプトで構想を進めようとしています。
 買い取り価格という追い風の中でバイオマス利用が進もうとしていますが、持続性を可能にするためには、用材としての需要に応えて供給できる、生産性と技術力の向上など体質的課題を克服する努力が欠かせないと思います。買い取り制度という追い風を体質的課題克服の好機とすべきだと思いますが、所見をお尋ねいたします。
 まず、木質バイオマス発電の買い取り制度を林業、木材産業の技術力や生産性向上の好機とすべきという御指摘がございました。
 木質バイオマス発電につきましては、主として林地残材を燃料用チップとして活用するものでございまして、これまで林内に放置されてきた林地残材が取引され、収入になるということでございまして、森林所有者や原木生産、チップ生産事業者など林業全体の収益向上につながるものと考えております。そういうことになりますと、原木生産やチップ生産事業者の生産意欲も高まりまして、作業道の開設や高性能林業機械の導入、また人材の育成といった投資あるいはその前向きな動き、こういったことが強まることによりまして、生産性、技術力の向上につながっていくものと考えております。
 県といたしましても、燃料チップの安定供給に向けた支援はもとより、原木増産、木材産業の強化に向けた取り組みを引き続き積極的に支援し、循環型林業の確立、林業、木材産業全体の活性化につなげていきたいというふうに考えております。
 今、ヨーロッパでは、CLTという積層材技術の開発によって中層ビル建築が可能となり、木造のビルがどんどん建築され、北米等にも広がっています。オーストラリアでは、10階建ての木造ビルまで建築されています。
 わが国でもCLTには熱い視線が注がれ、首相出席のもと官邸で開かれた農林水産地域の活性化会議では、CLTのプレゼンが行われ、高知県では、CLTの推進県にしようと協議会も発足しています。
 我が国のCLTは、JAS規格の取得や建築基準法改正、建築士のインフラ問題などクリアすべき課題はあるようですが、循環型社会に最も適していること、軽量で断熱効果に優れ、工期が圧倒的に短いことなど、数年後にはブレイクスルーする可能性を秘めています。
 また、国産杉材が使用できる点、積層材ですから、辺材や心材、節あり等々、木材利用の歩留りも一気に上がることになります。また、CLTの拡大によって用材需要が増すことになれば、発電を目的にすることなく、すべてのバランスの中で発電も可能となると思います。
 かつて、実にうまく森を守りながらたたら産業を振興した島根であります。CLTによって、かつて作り上げた地域として回る林業へと脱皮できるのではないでしょうか。
 島根でも、CLTの推進県を目指して研究すべきであろうと思います。CLTは日本の林業を変える起爆剤になりうるのか、今後どう向き合っていくのか所見をお尋ねいたします。
 CLTにつきましては、板の繊維方向が直角になるように何層も張り合わせたパネルでございまして、強度が強く狂いが少ないなどの特徴がございます。これが広く中層建築物で使われるようになりますれば、木材の需要拡大、ひいては林業の活性化につながる可能性がある、そういう素材だというふうに思っております。ただし、現時点ではCLTの国内規格というものがなく、規格に対応する製造技術も確立されていないといった、そういう課題がございます。
 このため、現在、国においてJAS規格の設定のための手続を進めており、来年度、製造技術の確立に向けて必要なデータの収集や試験などに取り組むという、そういう段階にあるというふうに承知をしております。県といたしましては、当面このような国の動きをよく見守っていきたいというふうに考えております。
 なりうるのであれば、早く取り組む必要があると思います。現行の建築基準法では無理がありますが、大臣認定という道もあるようです。県営住宅などの中層公共建築物で道を切り開く取り組みはできないかお尋ねいたします。
 県営住宅などの公共建築物における木材利用につきましては、島根県木材利用率先計画に基づき、県としても積極的な取り組みを進めてるところでございます。近年、諸外国において採用されつつあるCLTは、我が国では現在、技術開発の途上であり、建築に当たっては、建築基準法に定める性能に適合させる必要があります。また、建築基準法に基づく大臣認定に際しましては多大なコストと時間を要することなど、克服すべき課題が多いものと認識をしております。今後、県営住宅などの公共建築物へのCLTの活用につきましては、国の動向や実用化の状況などを注視していきたいと考えております。 
 関連して、CLTによって木材産業の振興が可能となれば、余剰材としての製材屑はペレット化などで農業の加温用燃料としての可能性が開けます。市場価格が大きく変動する燃油と違い、安定的な価格での調達が可能な熱源として積極的に振興を図るべきと思います。
 農業の加温用燃料としての森林資源活用の現状と、今後の考え方をお尋ねいたします。
 農業での利用の現状につきましては、県内では現時点ではほとんど見られない状況でございます。その理由といたしましては、まず木質ボイラー等の導入経費や、県内での木質ペレットの流通価格から見たトータルのランニングコスト、これが燃油市場と比べ割高になっておること、それから木質ペレット等の安定的な供給元が県内にはないこと、こういったことが挙げられます。こういう状況にございますので、現時点では、農業の加温用燃料としてコスト的に見合う利用可能な森林資源というものはない状況にございます。今後、CLTが普及いたしますと、木質ペレット等が安価で安定的に供給できるようになれば、施設園芸において普及の可能性があるというふうに考えております。以上でございます。
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 第四に、道路ストック総点検について
 今夏の集中豪雨では、尊い人命が失われるとともに、多くの皆さんが被災されるなど、わが県に甚大な被害をもたらしました。
 地球が悲鳴を上げているのでしょうか、極地的豪雨の頻発など以前とは比べるべくもない自然現象に、人間の知恵の限界を感じる今日この頃ですが、インフラ整備などに象徴される効率化が私たちを豊かにしてきたのも事実。
 今後、地域社会の持続的発展を図るためには、既存ストックをどう安全に、長期的に使っていくのかが大切であろうと思います。
 しかし、全国的には、自然災害など様々な要因で既存ストックの安全が脅かされる事例が多発しています。特に、河川護岸に隣接した道路や下水道の想定を上回るスピードでの劣化を原因とする吸出しや地震による液状化での空洞の発生、橋梁などコンクリート構造物の劣化などは、私たちの生命の安全に直結しています。
 そうした対策のため、道路などのレーダー探査による空洞調査が行われていますが、空洞調査を行う場合には品質確保が大切で、装置の精度と、読み取る技術者の練度が不可欠です。
 しかし、地方自治体のレーダー探査による空洞調査による入札の制度では金額面しか考慮されず、発見能力のない企業が低入落札していると言われています。
 本県の河川護岸に隣接した道路や下水道の劣化が予想される道路ストックの現状認識、空洞調査に対する入札方法と実績への評価についてお尋ねいたします。
 河川護岸に隣接した道路区間約695キロメートルにつきましては、議員御指摘のとおり、吸い出しによる道路の陥没のおそれがあるため、県では平成21年度からレーダーによる空洞調査を行っております。これまでに554キロメートルの調査を行ったところ、79カ所の空洞が見つかり、これらにつきましては今年度中に修繕を終える予定でございます。残りの141キロメートルの調査も今年度中に終え、その中で見つかった空洞につきましては順次修繕をしていく予定でございます。今後は、下水道など地下埋設物の多い市街地における道路の調査や、調査済みの区間の追跡調査についても取り組んでまいります。
 また、県の空洞調査の実施に当たっては、全国の路面空洞調査における施工実績などに基づいて指名競争入札を行っております。昨年度までに調査した3件につきましては、業務経験のある技術者が国の基準に基づき調査を実施しております。業務内容はいずれも良好であり、適切であると評価しております。
 レーダー探査による空洞調査の技術力に大きな格差があることから、先進自治体では、技術評価型の入札方法が取り入れられていると聞きます。本県でも早期の技術評価型の入札方法が望まれると考えますが、所見を伺います。
 島根県では、高度または専門的な技術が要求される業務であって、技術力を適切に評価することにより品質の向上を図れるものについては、従来から技術評価型入札を取り入れております。空洞調査は、近年、民間において、データの判読技術や探査機器の精度などの向上に取り組む動きが見られます。こうした日々進歩する技術を適切に評価することにより、調査の品質向上につなげることができると考えられるため、今後、技術評価型入札方法の導入について検討してまいります。
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 第五に、愛着形成期の母子支援について
 8月、厚労省が実施した中高生のネット依存に関する全国調査の結果が発表されました。
 全国の中高生10万人近くが回答した調査結果では、「病的な使用」と判定され、ネット依存が強く疑われる生徒が8.1%、推計51万8千人に上るとされ、中高生の深刻な現状が明らかとなりました。
 ネット依存に関わる中国科学院の研究結果によれば、依存被験者には大脳白質で神経線維の走行の乱れの増加や密度の低下など、麻薬や覚せい剤中毒患者に特徴的な変化が脳内に起こっていると報告されています。女子がより深刻との調査結果は、この世代に止まらず、次世代への影響が懸念されます。
 この議場でもメディア依存対策を取り上げてきましたが、改めて震撼する思いもあり、九州を拠点にネット依存対策に取り組む方と、厚労省調査の結果などについて意見交換させていただきました。
 話は、ネット依存対策に止まらず、教育や食育などにも広がりましたが、対策はなるべく早いほうが効果あるよね。そうしないと間に合わないという認識は一致しています。
 そこで、課題を抱える子どもは家庭に課題を持つ場合が多いが、課題を抱える家庭ほど届かないのが悩みですよね、と投げかけると、そこを何とかしようとプログラムを考え、取り組みを始めているとのことでした。
 プログラムを組むに至った基本認識は、課題を抱える子どもたちの多くは愛着システムに問題があり、その親も愛着システムがうまく働いていない。しかし、愛着形成期は、母親を変えるチャンスだと。
 この問題を考えるのに、岡田尊司著「愛着崩壊」を読みました。
 今、人に関わる様々な社会的な課題の多くは、愛着システム形成に問題があり、生物として進化する過程で獲得した愛着システムがたった数世代で崩壊する危機に瀕していると指摘しています。
 先日の新聞には、「モンスター社員」の言葉が躍っていましたが、ここまで来たかという思いと、当然ありだなあという思いが交錯しました。
 モンスター○○、発達障がい、ニート・フリーター、ネット依存、鬱、食の崩壊、教育からのドロップアウト、貧困問題等々、成熟社会の代償として片づけるには、あまりに重い社会的コストを必要としています。
 このような社会的課題は、「愛着崩壊」で指摘されるように、確かな形で愛着システムが形成できれば、改善の方向に向かい、社会を変えることになるかもしれません。そのためには、母子が安心して子育てできる環境を整えることが鍵かもしれません。
 社会的に手の届きにくい母子が増えているゆえに、社会的コストが大きくかかり、それはさらに増えるだろうと考えられる現状への認識をお尋ねするとともに、母子ともに健全に育つ環境づくりについて、知事の所見をお尋ねいたします。
 母子の健全な育成の環境づくりについてであります。
 議員もお触れになりましたけども、いろんな要因によりまして、親の中にも子育てに不安を持ったり強いストレスを感じたり、あるいはそういう中で子どもとのスキンシップなどがうまくとれないとか、あるいは子どもに愛情や関心を持てないといった課題を抱える方も出てきておるということでございます。これもやはり経済社会の大きな変動の中で、こうした問題がかつてよりも大きな規模で起こってきてるのではないかと想像するわけであります。
 そうした中で、議員御指摘のように、こうした状況は社会的な課題にもなるわけでありまして、親子の愛情を形づくる大切な時期に不安感や孤立感を和らげ、親がしっかりと子どもと向き合い、喜びを感じながら子育てができるようにするということは大変大事なことだと思います。県では、親子の触れ合いを深めるため、保健師やボランティアなどがかかわり合いながら、乳幼児健診の機会を活用した育児相談や絵本の読み聞かせ、出産前に赤ちゃんを抱いたりあやすといった経験をする母親学級、親子のリズム遊びや赤ちゃんと触れ合う赤ちゃん教室といった取り組みなども推進をしておるわけでございますが、これは行政だけでできることではありませんで、周りの人、いろんな方がそういう子育て世代に対しましてあったかい姿勢で臨むと申しますか、みんなで助け合う、そうしたことが大事なことではないかというふうに思います。
 今、乳児母子を取り巻く課題として、乳児期の子育ての孤立、子育て経験の不足、乳児とのコミュニケーションや基本的な世話のできない親の増加、過剰な情報、「育てにくい乳児」「おとなしい乳児」の増加、養育基盤の弱い家庭の増加、早期の保育入園などが指摘されています。
 九州では、このような課題解決のため、特別な支援を必要とする以外の、全ての第一子6か月未満の乳児母子のための支援プログラム「IPPO」の導入がジワリと進んでいます。
 プログラムは、所定のトレーニングを受けたリーダーの他、何人かがサポートすることで、何組かの母子がグループで毎週1回、6週連続で実施されています。
 このプログラムを通して、親が産後うつや虐待、育児放棄、支援への過剰依存などに陥ることなく、子育てで自立できるよう支援するものです。また、このプログラムは社会的コストを下げる効果も考慮して考えられています。
 「幸せにとって大切なことは、人々がつながって生きていること」、ブータン研究センターの所長の言葉だそうですが、助けを必要とした時、周りに必ず助けてくれる人がいるという安心感こそ、心の拠り所を与えるというのです。
 「IPPO」は、プログラムを通じて、包括的に親子双方の育ちを見守ることのできる人材の育成する場となり、その人材を核とした信頼できる人間関係が育つ場ともなっているようです。
 ひるがえって、松江市の子育てサロンや子育て教室は大盛況と聞きます。それだけ不安を抱えながら子育てに取り組んでいるということであろうと思います。
 県下の各市町村では、乳児母子を取り巻く課題解決のため、様々な施策に取り組んでいただき、大きな成果が出ていることと思います。
 このような取り組みが更に広がり、すべての乳児母子が地域の人々とつながって生きていると実感できるようになって欲しいと思います。現状と今後の考え方をお尋ねいたします。また、親子双方の育ちを見守ることのできる人材の育成はいかがですか。現状と今後の考え方をお尋ねいたします。

 先週の田中議員の一般質問では、改めて少子化対策について考えながら聞かせていただきました。島根らしい子育て環境が平均以上の出生率を維持している、という部長答弁はキモでしたね。
 今回の質問では、愛着を考える中で、保育支援中心から妊娠期を含めた母子支援中心に舵を切る必要性を感じました。出産・子育ては楽しいし、何の心配もいらないという実感がじわじわ広がる島根にしたいものです。
 子どもが親との愛着を育みながら心身ともに健やかに育つためには、親子が地域の人々とつながって生きていると実感できるような環境をつくっていくことが必要であると考えております。そうした観点からの取り組みの一つとして、県内各地には、子育て中の親子が気軽に集い、交流や仲間づくりが行える子育てサロンの活動がございます。サロンでは、民生児童委員や子育て経験者などがスタッフとして運営し、市の保健師と一緒になって赤ちゃん訪問を実施したり、公民館等において親子が地域の高齢者の方や中高大学生と交流する活動などが行われております。
 県では、こうしたサロンに対し、ベビーマッサージや紙芝居など、子育て支援活動に役立つ技術などを提供する講師を派遣しております。また、市町村におきましては、育児に不安を持つ家庭を対象とした遊びの教室などに、保育士、子育てサポーターなど地域のさまざまな人材やボランティア団体等が参加し協力を行うなどの取り組みが進められております。
 このような取り組みにおきましては、議員御指摘のような親子双方の育ちを見守る人材が欠かせません。県では、こうした親子の愛着形成の核となる人材の育成に向けた取り組みとして、市町村が実施する遊びの教室等のスタッフに対する研修会や、県内の子育て支援団体のスタッフを対象としたスキルアップ講座などを開催しております。今後とも、市町村や関係団体と連携し、子育て、子育ちを支援する環境づくりを進めてまいります。

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 第六に、“本”に関わる教育問題について
 この夏、「はだしのゲン」問題がクローズアップされました。
 当事者であった松江市教委は、2週間以上業務が止まってしまったと聞き及んでいますが、是非や手続きなどの問題は置くとして、この問題を通して見えた現場の課題についてお尋ねいたします。
 今回の松江市教委から校長会で発せられた、「はだしのゲン」の取扱いについての要請またはお願いに対する対応と、その後の報道に端を発するドタバタを振り返ってみると、学校への配慮が見え隠れし、市教委の苦悩が伝わってくるようです。
 図書館には、図書館の自由宣言がありますが、学校図書館は「学校図書館法」に基づく学校教育のインフラとして学校図書館活用教育を推進してきた島根県においては、図書館の自由宣言より上位に学校図書館法があると考えられます。学校の図書資料は、「はだしのゲン」に限らず、各学校でその実情にあわせてそれぞれが判断するものだと思います。
 多くの学校で関係者による協議が行われることなく閉架に至りました。それは、学校の自治権の放棄という問題を内包するとともに、教育のインフラとしての学校図書館の位置づけと、そのインフラを活用する要としての司書教諭・学校司書が学校現場において学校組織の中に定着していないということではいかと感じました。
 今回の問題で明らかとなった学校管理職の認識について、人事権を持つ島根県教委としてどう評価しているのかお尋ねいたします。また、学校図書館の運営の在り方について、教育長の所見をお尋ねいたします。
 今回の問題でございますが、当事者でございます松江市におきまして、さまざまな観点から議論が行われてきたところであります。私のほうから具体的な点について触れることは差し控えさせていただきたいと思いますが、学校図書館の運用に当たっての校長の役割といたしましては、学校の管理責任者であり、そのリーダーシップが大切であり、図書館運営の体制づくりについてみずから積極的に主導していくことが大切であると思っております。あわせまして、学校図書館やその活用につきまして専門的な知識を持つ司書教諭や学校司書の役割も欠かすことができず、今後、司書教諭や学校司書の専門性を一層高めていくことが必要であると思っております。各学校におきましては、校長とこの司書教諭及び学校司書がよく話し合いをしながら、児童生徒の学びを支え心を育む場所としての図書館を運営していくことが大切だと思っております。今後とも、各学校におきます図書館を活用した教育がより充実したものとなりますよう、市町村教育委員会と協力しながら支援を行ってまいります。
 9月14日、米国テキサス州にビブリオテックという紙媒体のない図書館がオープンしたそうです。低所得者層の多い地区にこうした図書館を設置することで、情報弱者へのサービスを考えたアメリカらしい図書館であると言えます。
 インターネットが無料で利用でき、900台のEブックリーダー、57台のコンピューター、40台のiPad、タッチスクリーンが内蔵された机が置かれ、1万冊以上のタイトルの電子書籍にアクセス可能だそうです。
 ここまで行ったら嫌だと思うネット社会の象徴が電子書籍と思うのですが、電子図書館開館という現実も進んでいます。
 忌み嫌ってばかりではなく、自分で体感しなければ語れないと考えて浜田市立図書館にお邪魔し、職員の好意で私物のiPadに触れさせていただきました。確かに便利ですし、アプリとしての電子出版が進めば、メディア慣れした人にはたまりません。
 市川真人氏の批評ユニットである前田塁は、「紙の本が滅びるとき?」で、ネットを使いこなす若者にレイヤー化が進んでいる。検索機能が象徴するように、情報もレイヤー化されたものを使うようになり、それが進むことによる文学の衰退を危惧しています。確かに、ソーシャルメディアを使っていると、人との関係性がレイヤー化するように感じます。
 関係書籍を読むと電子書籍への評価は様々ですが、出版業界の根深い病弊と相まって紙の本が先細るのは間違いないだろうと思います。
 電子書籍時代と教育について、前田塁氏の懸念にあるような時代が目の前に来ているからこそ、現実に基づいた思考力・判断力・表現力を磨くことが必要だと思えてなりません。電子書籍時代と教育について、読書活動を推進してこられた知事に時代認識と所見をお尋ねいたします。
 次に、電子書籍の時代が来つつあるけども、こうした時代と教育についてどう考えるかということでございます。
 電子書籍、急速な勢いで進んでおりますし、本を読むには便利なものであろうかと思います。アメリカのような例もあると思いますけども、電子書籍、紙の書籍を問わず、子どもたちがこれを活用する力を身につける環境を整えるといったことは大変大事なことだろうというふうに思います。子どもたちが、電子書籍であれ紙の本であれじっくり読んで、何が書いているか理解をし、人に伝えるためにまとめるといった学習は、子どもたちの思考力、判断力、表現力の育成に大変大事なもんだというふうに思います。
 私自身としては、まだ電子書籍がそれほどまでは利用されておりません。それから、私などはやはり本を手にとって読むというほうがいいような感じがいたしますね。ぱらぱらっとめくれる、一覧性がありますし、それから気に入った本は愛着があるわけでありまして、それから図書館などに行くと、必要なもんじゃなくて、いろんなところを歩いてるうちに、表題などで、ああどんな本かなあと手にとってみたりして、それによってそういう違う世界の本に触れる、違う世界に入り込む、そういうチャンスがたくさんあるわけでありまして、電子書籍が全て代替をするということにはならんのではないかというふうな感じがするわけであります。以上であります。
 過日、鳥取県日南町の小中学校が2校、全員にiPadを持たせ、電子教科書などを使った授業に取り組んでいると報道されていました。本県では、本格的な取り組みは行われていませんが、川本小学校でiPadを40台配置する計画だと聞きました。
 私は、思考力・判断力・表現力等、これからの時代に必要とされる力を育てるためとして、教育の方法や授業デザインを変えてまで、ICTを活用する必要性を認める気持ちにはなれません。
 その理由は、情報機器の応答性のなさであります。授業参観を重ねる中で、特に小学校の普通教室では不要ではないかと考えるに至りました。
 論議が分かれるところですが、ICT教育の専門家は、情報格差の問題もあるから、使い方の規範を決めて活用すべきだと仰っていました。
 どちらにしろ、便利や安易に流されないことが重要ではないかと考えています。
 ICTを活用した教育について、また、同じ情報活用スキルを柱とする学校図書館活用教育とのリンクをどう考えるのかについて、教育長の所見をお尋ねいたします。
 ICTを活用した教育でありますが、これは調べ学習や発表などにおきまして多様な学習活動を行っていくための手段の一つであるというふうに思っております。その活用に当たりましては、当然のことながら、児童生徒の発達段階や指導の目的、場面などを踏まえまして、学びの充実に資することが大切であると思っております。
 一方で、学校図書館活用教育、今県のほうでも重点的に推進をしておりますが、これはいわゆる調べ学習の中で、課題を設定する、情報を取り出す、情報を整理、分析する、まとめて発表する、こういった力を育成することが狙いの一つであります。したがいまして、この学校図書館活用教育で培った力をもとにいたしまして、先ほどのICTを効果的に利用する力を身につけることで、児童生徒の情報を活用していく能力、これは全体的に高められるというふうに認識をいたしております。以上でございます。 
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