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2010年9月議会一般質問

[2010/10/1]
 9月定例議会は、大きく5点について質問。持続可能な社会作り、島根原子力発電所にかかる交付金等、地籍調査、うつ病対策、教育問題についてです。
 特に力を入れた子持続可能な社会作りは、新しい社会作りの仕組みとして、ソーシャルバンクと補完通貨、自然農法について問いました。ある方からのメールでには、具体的提言に欠けるとありましたが、その通りです。特に、現在の金融システムについての所見を知事に求めましたが、これは、知事の政治姿勢を問うものですが、答え辛い質問でした。

 具体的な質問については、特に教育問題を中心に前に進むと思える答弁でした。
  1. 持続可能な社会作りについて
    1. ソーシャルバンクと補完通貨について
    2. 自然農法について
  2. 島根原子力発電所にかかる交付金について
  3. 地籍調査について
  4. うつ病対策について
  5. 教育問題について
    1. 特別支援学校を取り巻く課題について
    2. 学校図書館について
    3. 子育て支援について
    4. 学校支援地域本部事業について
    5. デジタル教科書について
 質疑内容は下記の通りです。それぞれ文字色で私の質問知事答弁関係部長・教育長答弁がわかるようになっています。
  質問の第一は、持続可能な社会作りについてでありますが、二点伺います。
 最初に、ソーシャルバンクと補完通貨についてです。
 「現在のマネーは利が利を生むことをもって至上としています。そして、労働成果と自然資源を貧しい国から富める国へ移す道具となっているのです。今日のシステムの犠牲者は、第三世界の人々と自然に他なりません」
 これは、「根源的なお金の問い直し」を洞察したドイツの作家、ミヒャエル・エンデの言葉です。
 1999年、ミヒャエル・エンデのインタビューを基に構成したNHK・BSの番組「エンデの遺言」は、わが国に大きなセンセーションを巻き起こしました。
 その主役となる貨幣は、パンを買うという交換手段として作り出されたものが、貯蓄手段という機能を持つようになり、ネットの力と結びついて貨幣自体が投機の対象となるに至り、実体経済とかけ離れたマネーが世界を席巻し、一瞬で一国の経済を破綻させる力をも持つようになりました。
 利が利を生むこと、例えば、100円を年利3%で100年間運用すると1,921円になります。100年で19倍に、200年だと370倍にできるこの経済システムは永遠に回るのでしょうか。
 紙幣発行が何をもたらしたのか?エンデは一つの実例を述べています。
 「たしかロシアのバイカル湖だったと思いますが、その湖畔の人々は紙幣がその地方に導入されるまではよい生活を送っていた。日により漁の成果は異なるものの、魚を採り自宅や近所の人々の食卓に供していた。毎日売れるだけの量を採っていたのです。それが今日ではバイカル湖の、いわば最後の一匹まで採り尽くされてしまった。どうしてそうなったかというと、ある日、紙幣が導入されたからです。それといっしょに銀行のローンもやってきて、漁師たちは、むろんローンでもっと大きな船を買い、さらに効果が高い漁法を採用しました。冷凍倉庫が建てられ、採った魚はもっと遠くまで運搬できるようになりました。そのために対岸の漁師たちも競って、さらに大きな船を買い、さらに効果が高い漁法を使い、魚を早く、たくさん採ることに努めたのです。ローンを利子つきで返すためだけでも、そうせざるをえませんでした。そのため、今日では湖に魚がいなくなりました。競争に勝つためには、相手より、より早く、より多く魚を採らなくてはなりません。しかし、湖は誰のものでもありませんから、魚が一匹もいなくなっても、誰も責任を感じません」
 これは、ロシアだけのことではありません。先日、笠岡諸島に行ってきましたが、いくつか覗いた港ではほとんど小魚を見ることはありませんでした。不思議に思って同行した環境コンサルティングの専門家に聞くと、瀬戸内海では完全にフードチェーンが壊れているとの答えでした。世界の海でも同じことが起こりつつあると言われています。
 お金はあくまでも人間が作った社会制度ですが、本来は人間の生活水準を引き上げるために作られたお金によって破滅に追い込まれてしまうという現状は、そもそも本末転倒ではないでしょうか。
 ドル買い介入のアドバイザーとして政府に呼ばれる金融の第一人者である知事に、今日のマネーシステムに対する所感をお尋ねいたします。
 御指摘のように、貨幣がいろんな用途に使われるといったようなこと、あるいは世界の金融危機を起こしたりしているといったようなことから、この問題をどう考えるか。あるいは、貨幣そのものが投機の対象になっておるといったような御指摘があったわけであります。私もよくわかりませんが、ここ100年から200年ぐらいの市場経済の発展と申しますか、それが世界に広まることによって、世界全体が豊かになってきているということは一面としてあると思いますけども、貨幣はそういう市場経済の機能の発揮のために必要な存在であるわけであります。しかし、リーマン・ショックでありますとか、いろんな問題を起こすわけでございます。そういう意味におきまして、安定したマネーのシステムをつくっていく、構築をしていく、これは大変大事な課題だと思います。そういう面で、各国が協力して、そういう安定したシステムをつくる、あるいは市場経済の問題について必要な制約を設けていく。先ほどバイカル湖の例が出されましたけれども、資源保護でありますとか、あるいは環境保護といったようなものを、市場経済の枠組みの中に組み込んでいく必要があるというふうに考えているところであります。
 今日の暴走するマネーシステムは、グローバル化と切り離せません。この島根もその影響から離れて存立するわけはありません。
 島根のお金をはじめとする地域の資源は、その多くが都市に吸い上げられる仕組みになっていますし、誘致した大企業は、自分たちの都合でいとも簡単に地域を見捨てざるを得ない構造であります。
地域が持続可能な地域として存立するためには、地域資源を地域の中で如何にうまく回すのかが問われる時代です。
 エンデの思索に大きな影響を与えたシルビオ・ゼゲルは「減価する貨幣」を提唱しました。1929年の世界大恐慌後、オーストリアのヴェルグルでは、ゲゼルの提唱した月に1%減価する貨幣を労働証明書の形で導入しました。
 この労働証明書を受け取った人はすぐに使用したといい、流通する速度は、月12回くらいだったとのこと。その結果、町の税収は8倍に増え、失業はみるみる解消。商店は繁盛し、ヴェルグルだけが繁栄する事態となりました。しかし、この試みも国家の貨幣大権という壁に阻まれ、終息。再び30%近い失業率になったとのことです。
 今、世界各地でヴェルグルのように地域資源を地域の中で回す取組みが行われています。
 酪農によって発展してきたオーストラリアのマレニーでは、オーストラリアのバブル崩壊等の影響で疲弊した町が、「マレニー・クレジットユニオン」という信用協同組合の設立によって、小さなビジネス立ち上げに無担保で融資し、ビジネスサポートもしっかり行われ、地域に埋もれていた潜在力が顕在化し、地域再生を実現しています。
 マレニーの地域循環システムのもう一方を担うのが地域通貨マレニーLETSです。地域通貨によって、住民の持つ潜在力をお互いに活かしあうことが可能となり、普通の経済システムではお金になりえなかったものが地域の中で活かされています。
 6月議会で、なごみの里の看取りをサポートするエンゼルチームのことが話題になりましたが、こうした地域の潜在力を更に活かすツールとして、貯蓄機能のない補完通貨は有効ではないかと考えます。
 また、担保がないとお金が借りられない、担保があっても信用力がないと高い金利でしかお金を借りられない今の仕組みの中で、持続可能な地域づくりのためには個人の小ビジネスなどをサポートするソーシャルバンクなどの仕組みづくりが不可欠ではないかと思います。
 ソーシャルバンクとしては、NPOバンクの取組みが少しづつ広がっています。本県では、民主導の「島根県民ファンド」や県の各種地域活動支援の補助制度、県と中国労金協調による低利のNPO支援融資が創設されるなど、その取組みが広がっています。しかし、地域資源を地域で回して経済のボリュームを高めるには至っていません。
 また、「エンデの遺言」放映により全国に広がった地域通貨も、そのほとんどは活動を休止していますし、平成17年に総務省主導で取り組まれた地域通貨実証実験に参加した本県の2市町も、市では休止、稼動している町では、効果が認識されて回りだすのには少し時間がかかるだろうという状態です。
 ある研究者は衰退の理由として、地域通貨団体のネットワーク欠如、世界各地で生まれた事例が知られていないこと、取引対象の限定によって商店や地元企業にとって地域通貨を使用する経済的動機が失われてしまったことをあげています。
 ソーシャルバンクや補完通貨は、持続可能な地域づくりの強力なツールとなりうるのか、知事の所見をお尋ねいたします。また、ソーシャルバンクや補完通貨の課題、そうした仕組みづくりにおける行政の役割についてどのようにお考えかお尋ねいたします。
 他方、そうした世界のグローバルの問題とは別に、ソーシャルバンクでありますとか、補完通貨、あるいは地域通貨の役割についてどう考えるかという御質問がありました。
 こうしたものは、いずれも特定の地域の発展に役立つようにということで、いろんな工夫がなされてきていると思います。特に、地域通貨につきましては、例えば商店街の活性化でありますとか、ボランティア活動の参加の促進を目的に、特定の地域で特定の名称をつけて発行されておるというふうに理解をしておりますが、県内でも、御指摘のようにそういう例があるわけであります。例えば、浜田市では、海岸の清掃のための活動に参加をされると、神楽という名称の紙幣が活動した人に交付をされて、それを市内の商店などで使用ができるといったようなこと。あるいは、松江市におきましては、プラバ通貨というのがあるようでございまして、プラバホールで主催する活動にボランティアを確保するということで、そういうボランティアの報酬としてプラバ通貨というものが交付をされておるというようなことでございます。ほかにもいろいろ県内でもそうした取り組みがなされておるようでございます。
 いずれも、ある意味で、地域の社会貢献活動を促進をするとか、そういう地域社会のために活用をする。あるいは、その地域の商店で利用されますから、商店の販売等にも、域内で使うということによって、商業活動にも活力を与えるといったような面があるように思います。そういう意味で、地域通貨、あるいは地域活動をされる方々に対して資金の融資を行うソーシャルバンクといったものが、今後の地域づくりの一つのツールになり得る可能性があるわけでございまして、そのためには、やはり地域住民の参加がかぎでございますけども、行政として何ができるか、検討すべき課題ではあるというふうに理解をしてるとこであります。
 次に、自然農法についてであります。
 雑草を最大限に活用し、無農薬、無肥料、不耕起で作物を作るという、一見突飛と思える自然農法ですが、実は、大変合理的で、人が生きていくために一番自然な形の農業かもしれません。
 先日、自然農法国際研究開発センターの圃場を見学する機会がありました。
 今回の調査を通して、自然農法による自給自足が実現できれば、持続可能で格差や貧困の克服を可能とする共生可能なコミュニティの生活基盤になりうると思えました。
 なぜ自然農法か、その理由ですが、ミニトマトの濃厚で芳醇な味との遭遇です。トマト嫌いな私ですが、エグミや嫌味がなく、酸味はあるもののとても甘くて濃厚、過去の記憶にあるトマトの味とは全く違っており、自然農法の懐の深さを感じました。
 また、案内してくださった方の実践に裏打ちされたお話はとても説得力のあるものでした。その一つは、収量です。慣行農法と同量かほぼそれに近い収穫が可能だと実証している点。そして、必要経費が極端に低いという点です。極端に言えば、鍬と鎌と軍手さえあれば可能だということ。もう一つ極端に言えば、ずぼらでもとても美味しい野菜が出来、それが一番自然の理に適っている。
 木次乳業の佐藤忠吉さんは、一反三畝で親子5人自給できると仰いました。自然農法であれば、初期投資もほとんど不要ですから、新規参入の壁がどんと低くなるし、耕作放棄地が最良の耕地になりうる。
 田舎暮らしが大きなトレンドを形成する昨今、農業参入のハードルが低くなったことと併せて、定住促進と持続可能社会の基盤となりうるのではないかと考えます。
 ただ、自然の土壌中には、投入する肥料の何十倍、はるかに多くの窒素、リン、カリが存在しているようですが、近代農法の導入によりそれを有効に活用する輪作や混作の経験的知見がほぼ消失し、参入のハードルはきわめて高い。よって、新たな科学的知見に基づいて普及を図る必要があると思います。
 大規模化とは対極をなすような自然農法ですが、知事に自然農法を始めとする有機農業に対する所見をお尋ねします。併せて普及啓発についてのお考えを部長にお尋ねいたします。
 自然農法を始めとします有機農業は、一般的に土地が持つ本来の力を有効に利用し、作物を育てようとする農法であります。また、いわゆる草や虫を敵視をしないで、それらの力を活用して、自然環境にできる限り負荷をかけない生産方式だと言われているわけであります。
 島根県では、早くから、昭和40年代からのようでございますが、消費者と連携した有機農業に取り組む地域が存在をしております。木次町でありますとか、柿木村などがそういう取り組みをされたというふうに聞いております。さらに、近年では、若い生産者が施設栽培で高収益な有機農業に取り組む事例が出てきております。浜田、江津の地域で、20代から40代の若手の生産者グループによる有機野菜が行われておりまして、かなりの生産、販売の実績を上げられておるということも聞いておるわけであります。
 小規模でも付加価値の高い農業経営が可能な有機農業は、中山間地域が大半を占めて、豊かできれいな自然の残る島根では、目指すべき農業の一つの方向ではないかというふうに感ずるところであります。
 また、この世の中、食の安全・安心、環境保全等々に関心が非常に高くなっておるわけでございまして、そうした有機農法でできる農産物につきましては、高い価格でもお買いになる、買いたいという消費者が多いということもございます。今後、島根県の大きな魅力の一つとして、こういう農法を普及していくということも考えられるわけでございます。それはまた、定住の促進にもつながるというふうに期待をされるとこでありまして、関係者あるいは農業団体等々と協力をしながら、そうした有機農業、自然農法の拡大等につきまして、努力をしてまいりたいというふうに思うところであります。
 先ほども知事が申し上げましたように、島根県農業の目指すべき方向の一つとしての有機農業の普及啓発の取り組みのポイントといたしましては、担い手育成の仕組みづくり、技術的な支援、そして生産者と消費者とをつなぐ販売対策の3つにあろうかと考えております。
 まず、担い手の育成についてでありますが、来る平成24年に、農業大学校に、全国では初めてとなる有機農業コースを開設いたしまして、県内の先進農家の協力も得ながら、必要な技術習得の可能となる場といたしますとともに、指導者の養成なども含めた総合的な人材育成を行うこととしているところであります。
 また、技術的支援でありますが、本年3月に、これまでの試験研究の成果や、先進的な取り組み事例など、「有機農業への道しるべ」と題する冊子に取りまとめまして、研修の場への活用や、希望する農家への配付なども行っております。また、有機JASの認証機関として、国から認定を受けております県内のNPO法人とも協働いたしまして、有機農業チャレンジスクールの開催や、有機JASの取得支援などにも取り組んでおります。
 3番目の販売対策についてでありますけれども、島根県独自の環境を守る農業宣言を行った消費者のネットワーク化や、有機農業の生産者グループと消費者との間の交流の支援、さらに環境問題に関心の高い小売店への販売コーナーの設置等々の連携の促進についてのモデル的な取り組みを進めているところであります。このような取り組みを通じまして、売れる物づくりなどの有力なツールの一つになり得る有機農業の普及に積極的に取り組んでまいる考えであります。
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 質問の第二は、島根原子力発電所にかかる交付金等についてであります。
 本県では、中国電力からの要請により、平成21年に島根原子力発電所2号機でのプルサーマル実施受け入れを決定しました。これにともない、MOX燃料の装荷が決定すれば、ルールに基づいて「核燃料サイクル交付金」が順次交付されることになります。
 中国電力島根原発1、2号機の点検漏れ問題により、原子力発電にかかる住民の不安が大きく膨らんだことを考えると、プルサーマルの実施については、これまで以上に地域住民の安心・安全の確保が前提となるとともに、当該地域の振興が実感できるような事業を展開することで住民の理解を得る必要があります。
 今後、地域振興に資する地域振興計画の策定と配分率の決定などの課題があります。配分の考え方については、各県によってまちまちとなっていますが、松江市との調整、配分の考え方、事業テーマ、実施時期等、本県としての考え方についてお尋ねいたします。
 昨年3月に、県は島根原発2号機に係るウラン、プルトニウム混合酸化物燃料の使用について、いわゆるプルサーマルの実施についてでございますが、事前了解をしましたが、これによりまして、所定の手続を踏まえて、60億円の核燃料サイクル交付金の交付を受けることができることになっております。この交付金は、1つには、最初に交付決定を受けてから初めて混合酸化物燃料、いわゆるMOX燃料ですが、これを使用した年度までの間に10億円、2つ目には、その翌年度から5年間で50億円が交付される制度となっております。
 また、交付申請をするまでに地域振興計画を県が策定いたしまして、国の承認を得なければならないことになっております。この地域振興計画では、テーマを設定し、そのテーマに基づく各年度ごとの事業を明らかにすることとなります。
 中国電力におきましては、昨年9月に、混合酸化物燃料の加工契約をしたところでありまして、現在の予定では、平成26年度には、この燃料を使用する計画で進められております。県といたしましては、この燃料を使用する時期と事業の実施時期等を考慮しながら、地域振興計画を策定する必要があると考えておりまして、現在、松江市とともに、この交付金で実施する事業の候補をピックアップしているとこであります。
 今後は、それらを踏まえまして、松江市と十分協議をするとともに、県議会の御意見もお聞きしながら、事業のテーマ、配分方法等について決定したいと考えております。以上です。
 質問の第三は、地籍調査についてであります。
 本年5月、国の第6次国土調査事業十箇年計画が閣議決定され、その概要が示されました。
 この計画では、地籍調査実施地域の面積の割合を平成21年度末49%から、平成31年度末57%まで引き上げることを目指すとされていますが、ここまで到達するのに50年間ということのようですから、このままいけば完了するまでに更に50年以上かかるということになります。
 比喩的に表現すると、世界に名だたる先進文化国家を自称する我が国では、半分以上の土地がどこにあり、どんな形をして、どれほどあるのかわからないということになっています。
 沖縄のように98%を越える県もあるようですが、本県の進捗は平均以下、県内市町村によっても大きなばらつきがある上、特に市街地での実施率が低いことから、円滑な経済活動を阻害する要因にもなっています。また、厳しい県財政の中、市町村の要望に応えきれない現状もあるようです。地籍調査の現状と今後の考え方をお尋ねいたします。
 地籍調査は、国土の実態を正確に把握するために、国が事業費の2分の1を、県と市町村がそれぞれ4分の1を負担し、1筆ごとの土地について市町村が調査と測量を行い、地籍簿及び地籍図を作成する事業であり、その成果は個人の土地取引や社会資本整備などの事業を円滑に推進するための基礎データとなるものです。
 本県では、現在完了済みの出雲町、海士町、知夫村と財政上の理由などから休止している斐川町、西ノ島町を除く16市町で地籍調査が実施されていますが、進捗率は毎年1%程度で上昇し、平成21年度末では約45%と、全国に比べると約4%おくれている状況にあります。これは、調査に多くの費用と時間、労力を要することや、一部の市町村ではほかに優先する事業があったため、地籍調査の着手がおくれたことなどが要因ではないかと思われます。
 県といたしましては、厳しい財政状況の中ではありますが、公共事業を円滑に進めるためにも、実施市町の要望にできる限りこたえられるよう努力してまいりたいと考えております。
 また、地籍調査に先行して、都市部の官民境界や山林の境界を調査する事業として平成22年度に創設された国の直轄事業である都市部官民境界基本調査や山村境界基本調査などを活用すれば、将来地籍調査を実施するときの労力や費用の軽減が図られることから、市町に対し、これらを積極的に活用するよう働きかけてまいります。
 こうしたことより、県内の地籍調査が着実に推進し、第6次国土調査事業十箇年計画の終了時点である平成31年度末には、国の目標数値である57%を上回る進捗率となるよう取り組んでまいりたいと考えております。以上でございます。
 質問の第四は、うつ病対策についてであります。
 近年、社会全体にストレスが蔓延し、うつ病など心の病が急激に増加しています。
 平成21年版の自殺対策白書によると、平成20年における我が国の自殺者は、3万2,249人であり、病院で亡くなる人などを含めると10万人とも言われています。その原因は「健康問題」が64.5%と最も多く、そのうち4割以上を「うつ病」が占め、総合的な「うつ病対策」が重要な課題であります。
 うつ病対策としては、予防対策、早期発見・早期治療、最後に、リハビリや復職支援となりますが、治療に関しては、医師は、患者1人あたり5分から10分程度の診療時間しか確保できずに薬を出して診察を終わるケースも多いと言われ、じっくりと時間をかけた治療ができにくい現状もあって、薬物療法に加え認知行動療法に健康保険が適用されることになりました。
 また、うつ病患者に対しては、早期発見、早期治療はもちろん、症状に応じて医師、精神保健福祉士、薬剤師、看護師、心理士など数多くの専門職が知恵を出し合って対応することが必要と言われ、職場復帰への支援や、病院に行けず悩んでいる人が早期に相談、受診できるしくみづくりなど、医療機関や職場、県、市町などの連携のもと、取組みを進めていく必要があると思います。
 うつ病対策として今後どのような取組みを進めていこうとしているのか、知事のご所見をお伺いいたします。
 最後は、うつ病対策でありますけれども、島根県におきましても、うつ病で医療機関に行く患者は近年ふえております。自殺予防対策の観点からも、早期発見、早期治療など、うつ病への対策は極めて重要であります。また、うつ病は、睡眠障害など身体症状を伴うこともあって、そのためにかかりつけの一般内科などで診断を受けるといったことがあるわけであります。そういう意味におきまして、一般の診療を行う医療機関と、精神科の医療機関との連携、協力ということが大切であるというふうに考えております。
 また、議員も御指摘になったわけですけれども、うつ病というものが自殺につながるケースが多いわけでございまして、自殺の危険サインをできるだけ早い段階で気づいて、適切な対応につなげていくために、そうしたサインを発見する人材、ゲートキーパーと称しておりますけども、そうした人材を養成することも重要であると考えております。また、企業等におきまして、職域、職場でメンタルヘルスについての推進を行っていくと。そういうものに対して、県が情報提供、啓発等を行っていくということも大事でございます。
 こうしたうつ病対策の取り組みにつきましては、医師会や市町村との連携のもとに、幅広く展開をしてまいりたいというふうに考えているところであります。以上であります。
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 質問の第五は、教育問題についてであります。
 最初に、特別支援学校を取り巻く課題についてであります。
 静岡での全国学校図書館研究大会の折、特別支援学校での学校図書館を活用した教育の有用性について話を聞く機会がありました。その意識と実情に較差があることを知り、先進校を含めて、いくつかの特別支援学校で実情を見させていただきました。
 その後、常任委員会視察でも特別支援教育がテーマで、とても有意義な調査となりました。その調査活動を通して多くの課題を抱えている現状を改めて知ることとなりました。
 その一番の課題は、特に養護学校高等部への入学者の急増にハード面での対応が追いついていないことです。
 松江養護学校では、生徒の100名程度までの急増を想定し、平成18年度に高等部棟が増築されましたが、生徒の増加はそれをはるかに超えて現在131名です。しかし、生徒数は今後も増え続けてピークは27年度あたりが想定されるとの事。
 早急なハード整備が必要だと思いますが、松江養護学校の立地状況では、現在の児童生徒に対しての教育環境を維持しながらのハード整備は非常に困難ではないかと思いました。
 そこで、県内知的障がい養護学校高等部の現状と今後の生徒数の推移予測についてお尋ねするとともに、県内知的障がい養護学校のハード整備に対する考え方をお尋ねいたします。
 次に、小中学校の特別支援学級の現行8人定員について、障がいの高度化、多様化もあって定員減を要望する現場の声が多いと聞きますが、その現状と県教委の認識をお尋ねいたします。
 知的障がい養護学校高等部の現状でございます。
 県内の知的障がい養護学校高等部の生徒数でありますが、平成17年度297名でありましたものが、今年度は438名と、この5年間で約1.5倍の生徒数となっております。特に、その中でも、松江と出雲の知的障がい養護学校高等部の生徒数の増加が著しい状況にあります。この生徒数の増加傾向ですが、この先当分の間は続くものと予想をしております。
 次に、知的障がい養護学校のハード整備に対する考え方についてであります。
 今後も特に、多くの生徒が入学してくると思われます松江、出雲両養護学校におきましては、教室不足等が予想されます。早急に対応していく必要があると認識をいたしております。このため、両校につきましては、学校敷地の状況、それぞれ違うわけでありますが、敷地の内外も念頭に置きながら、必要な施設の確保について、現在検討を進めているところであります。
 それから、特別支援学級の定員についての現状とその認識についてであります。
 特別支援学級を有する学校でありますが、この10年間で約2倍と増加をいたしております。また、情緒障がい学級、この学級もこの10年間で約3.5倍と増加をしておりまして、1つの学校に複数の特別支援学級を有する学校が増加をいたしております。現在、御質問にございました特別支援学級の編制の標準、障がい種にかかわらず、1学級8人ということになっておりまして、次のような課題があるところであります。
 1つには、複数学年の児童生徒が同一学級におります。こういったことから指導が困難になる場合がある。それから、児童の障がいの特性によりまして、個別の指導が必要な場合も多うございますが、その際、多人数の学級編制では指導が困難になるということ。それから、重度の障がいを有する児童生徒、こういった生徒が特別支援学級に入級する場合も増加をしております。そうした場合、担任1人では対応がなかなか難しいということから、市町村教育委員会が独自に支援員を配置しなければならないと、こういった事例もございます。
 こうしたことから、現在は8人となっております学級編制の標準を引き下げること、これらを国に対して要望してきているところであります。特に、重度障がいを有する児童生徒が特別支援学級に入級した場合には学級編制を1人とすること。それから、障がいの種別や程度、重複等の実際の児童生徒の状況も踏まえまして、実情に応じた弾力的な学級編制を行うこと。これらの対応が可能となるような制度設計が必要だと考えております。
  次に、学校図書館の現状と学校図書館を活用した教育についてであります。
本県の特別支援学校を見たあとお邪魔した、鳥取県の白兎養護学校の図書館は、面積は狭かったのですが、資料が充実し、学校司書が配置され、司書教諭や先生方によるチームワークで計画的な取組みが行われ、大きな教育効果を挙げていました。
 一方、本県の現状でありますが、ハードソフトともきわめて厳しく、その落差に驚きました。特に、お邪魔した松江養護学校は、本を置くスペースはわずかに確保されていましたが、図書館と言えるものではありません。
 そういう中ですが、現場の先生方は一生懸命取り組んでいらっしゃいます。ですから、何とかしたいとの思いには強いものがあり、その一端が迸るように言葉となって発せられ、心に響いてきました。
 本県の特別支援学校における学校図書館と学校図書館を活用した教育についての現状認識と、豊かな育ちを支えるためのハードソフトの充実について考え方をお尋ねいたします。
 県内の特別支援学校におきましては、御質問にもございました生徒の急増等によりまして、学校図書館の環境整備が十分とは言えない、厳しい状況にあります。そういった中で、各学校におきましては、子どもにとりましてより効果的な環境にするために、子どもの障がいの状態に配慮した取り組みを行っております。例えば、車いすの生徒が簡単に本が手にとれるように、教室のすぐ近くに図書スペースを整備をいたしましたり、あるいは知的障がいの子どもにわかりやすく、使いやすい図書配列を工夫するなどの取り組みが行われております。また、各学校では、図書を活用した教育を行っておりますが、例えば知的障がいの特別支援学校では、子どもが安心して過ごせる教室などの場で、学級担任が絵本を読んだり、あるいはボードに絵を張ったり外したりして、子どもの興味、関心を引き出しながら、表現方法を工夫しながら読み聞かせを行っている、こういった工夫が行われております。
 今後のハード、ソフトの充実でございますが、特別支援学校におきましても、児童生徒の豊かな人間性の育成にとりまして、学校図書館を活用した学習は大変重要であると思っております。今後、管理職を核といたしまして、校内全体の理解の推進を図ること、あるいは児童生徒の障がいの種別や程度に応じた図書の計画的な整備を図ること。あるいは、利用しやすい場の整備、あるいは校内分掌に配慮いたしまして、司書教諭や図書館担当者が図書館業務に従事する時間をふやす、こういった配慮をして、学校図書館の環境整備を図っていきたいと思っております。
 二つ目は、学校図書館についてであります。
 最初に、6月議会の後、本県の司書教諭研修と全国学校図書館研究大会に参加させていただきましたが、関係者の間でわが県の取組みが羨望のまなざしとともに大変高い評価を得ていることを改めて実感しましたのでお伝えしたいと思います。
 前後して、県内のいくつかの学校を回り学校図書館の様子、読書活動や学校図書館を活用した教育の取組みを見て回りました。その中で驚いたのは、川本と邑南町です。両町とも本当に厳しい財政の中、全小中学校に司書を配置していました。当初人の確保が心配されましたがいずれも素晴らしい人が配置されていることと、情報活用能力を育てる授業に戦略的に取り組まれていました。県西部には劇的な変化が起こっています。
 とはいうものの、さまざまな課題を抱えています。その一つは、資料の少なさです。川本町では、厳しい財政の中、昨年の経済対策予算を資料購入費に充当してくださっていましたが、砂漠にバケツの水をばら撒いたようなもの。学校図書館活用教育図書整備事業を来年もぜひ継続して欲しいとの強い要望をお聞きしました。
 学校図書館活用教育図書整備事業継続について、所見をお尋ねいたします。
 また、司書教諭の配置についてですが、県西部及び隠岐地区は、司書教諭資格者が県東部に比べて少ないために、現在の状況では100%配置はできません。司書教諭の発令状況、東西格差解消への考え方、学校図書館活用教育を進める上で、司書教諭に対する負担軽減の配慮が必須だと思いますが、その状況についてお尋ねいたします。
 今年度から、小中学校の調べ学習図書を市町村図書館に寄託をいたしまして、近辺の学校が共同利用できる取り組み、これが今の事業でございますが、こうした事業を、今年度実施をいたしております。今年度は、10の市町に寄託をすることといたしまして、現在、県立図書館のほうで準備を進めているところであります。この事業につきましては、議員からもございましたが、ことし寄託を受けられなかった市町村の図書館や学校から、新たな寄託の要望も受けているところであります。今後、これらの要望や、市町村図書館の受け入れ態勢の状況、これらも踏まえまして、来年度以降の事業の実施につきまして検討してまいりたいと考えております。
 それから、司書教諭の発令状況等であります。
 現在、司書教諭は、全県で小中学校合わせまして202校、全体の60%で発令をされております。しかし、地域ごとに見ますと、配置校の割合でありますが、東部地区では65%、それから西部及び隠岐地区では55%ということで、西部、隠岐地区が東部地区に比べますと低い割合となっております。このことは、司書教諭の資格を持った教諭が西部及び隠岐地区に少ないということから生じているものであります。この差を解消いたしまして、あるいは平成26年には、司書教諭を100%配置したいというふうに考えておりますが、そういったためにも、まずは有資格者、この全体の数をふやす必要があるというふうに考えております。このため、昨年度から、司書教諭を養成する講習、この受講が、島根大学、放送大学あるいは通信制大学で行われるわけでありますが、これに講習を受ける教諭に対しまして、旅費でありますとか、受講料の補助を昨年度から始めているところであります。また、採用試験におきましては、こういった資格を持つ者を優遇する制度も設けております。そして、特に東西の格差でありますが、今年度、西部及び隠岐地区、これに所属する教員に対しまして、積極的な司書教諭の講習を働きかけまして、この地区からは県下全体で43名のうち21名と、半分程度が西部、隠岐地区からの受講者が占めるということで、昨年度に比べますと大幅にふえてきております。今後とも、こうしたことによりまして、西部、隠岐地区におきましても、司書教諭が発令されるように努めてまいりたいと考えております。
 それから、司書教諭の負担軽減でございます。
 現在、司書教諭を発令している小中学校、冒頭申し上げました202校でありますが、その中で、何らかの負担軽減措置をしている学校、6割程度ございます。その内容は、授業時数の軽減、それから公務分掌や部活動の担当についての配慮、それから学びいきいきサポート事業という事業を設けておりますが、これによります非常勤講師を配置をいたしまして、司書教諭の負担を軽減しているところであります。
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 三つ目は、子育て支援についてであります。
 先日、智頭町にある森の幼稚園「まるたんぼう」に行ってきました。まるたんぼうは園舎を持たない幼稚園ですが、雨の日も雪の日も開園しています。驚くようなことばかりでしたが、実は子どもたちは雨の日が大好き。自然の中に道具もなしに放り出される状態ですから、感性が磨かれ、例えば「今日の陽の光は青と黄色が強いね」と4歳の子が言う。そして、自然相手ですから、忍耐力が強い。昨年入園した4歳児が、今年入園の3歳児が片付け終わるのを15分、20分とひたすら待っていました。
 また、けんかをしても大人は手を出さない。ですから、自分で問題を解決する術を身につける。
 などなどですが、振り返ってみれば僕たちの子どものころは、こんな姿が普通でした。社会性や人の生きる術を地域の集団の中で自然に身につけていました。
 この様子を見ながら、幼児教育とはいったいなんだろう、“教育”というものが本当に必要なのかと考えてしまいました。そして、自分たちの力で自然を手にできなくなった子どもたちですので、こんな取組みや環境整備こそが必要ではないかと思いました。
 幼児“教育”に対するご所見と、こうした取組みに対する所見をお尋ねいたします。
 幼児期は、知的、感情的な面でも、人間関係の面でも、日々急速に成長する時期であります。この時期の教育は、子どもたちが人間として心豊かにたくましく生きる力を身につけられるよう、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであると思っております。そのため、幼稚園、保育所では、幼児が遊びやさまざまな体験、人とのかかわりを深めることを通しまして、自立の心や自分で行動しようとする態度、あるいは豊かな感性や思考力の芽生え、あるいは決まりの必要性など、規範意識の芽生えを養うことなどを大切に教育を行っているところであります。
 議員御紹介のありました森のようちえんの幼児でございますが、自然の中の遊びの中で感性を磨き、忍耐力や自分で問題を解決するすべを身につける、こういった取り組みでありますが、御質問にございました、私ども考えてみますと、子どものころには、隣近所の友達と遊ぶ中で自然と身につけた分もあったように思います。現在、そうした環境が失われております。そうだからこそ、幼稚園教育でもこうした体験をさせていく必要があるというふうに思っております。その意味で、こうした体験を取り入れた活動につきまして、島根県の幼児教育の中でも、特に大切にしていきたいというふうに思っております。
 次に、幼保一元化の動きの中で市立幼稚園に指定管理制度を導入できない学校教育法の改正を求める声があります。実施主体の多様化が想定される国の幼保一元化検討の中で、指定管理制度導入など多様なありかたも担保できるのではないかと考えますので、県としても積極的に推進すべきだと思いますが、ご所見をお尋ねいたします。
 国の幼保一体化の検討がされている中で、指定管理者制度導入など、多様な管理運営のあり方、これについてどうかという御質問でございます。
 学校教育法では、学校の設置者、幼稚園も含むわけでありますが、学校の設置者は、その設置する学校を管理しなければならないというふうになっておりまして、市立の幼稚園におきましては、指定管理者制度の導入など民間の力を活用することができないということから、法の改正を要望する声があることも承知をいたしております。一方で、現在国におきまして、こども園という構想が検討されております。幼稚園でありますとか保育所、この垣根を取り払いまして、幼児教育と保育をともに提供するものでありますが、この新しい制度案では、学校法人に加えまして、社会福祉法人とか株式会社、これらが参入できると、可能になるというような制度を考えておられるようであります。したがいまして、当面、この国の新たな制度案がどのような制度設計となり、幼稚園教育のあり方にどのような影響を与えるのか注視をしてまいりたいと、その動向を見守ってまいりたいと考えております。
 四つ目は、学校支援地域本部事業についてであります。
 社会がますます複雑多様化し、子どもを取り巻く環境も大きく変化する中で、家庭や地域の教育力が低下し、学校に過剰な役割が求められるようになっています。
 このような状況のなかで、これまで以上に学校、家庭、地域の連携協力が不可欠となり、学校支援地域本部事業がスタートしました。
 昨年、松江市内のある中学校にお邪魔した際、学校支援地域本部事業によって、学校に関わる住民の輪が大きく広がっている実情をお聞きいたしました。取り組まれる事業は、学校や地域によってさまざまですが、学校や子どもをサポートする大きな力になるものと期待しています。
 ここまで取り組まれた事業の評価と、拡充に向けての県の対応についてお尋ねいたします。
 この事業は、地域の人がボランティアとして学校の教育活動を支援するという事業でありまして、平成20年度から国の委託事業として市町村において取り組まれてきたものであります。現在、県内では17市町で48本部が設置をされて事業が進められております。この事業を実施した市町村におきましては、いい評価が出ております。子どもの学習を支援する活動や、花壇づくりなどの環境整備などで、地域のボランティア、多くの方が参加をしてそうした活動を行われまして、地域が学校を支援する、そういった機運が高まってきておる。あるいは、学校が身近に感じられるようになった。子どもの顔がわかるようになった。そういう声がございます。また、学校におきましても、地域の人とのかかわりの中で子どもの人間性が豊かになったようだというような声も聞かれます。
 国の委託事業でありますが、今年度で終了いたしまして、23年度からは、県、市町村も財源を負担いたします国の補助事業に制度が変わることになります。本事業を継続するかどうかにつきましては、これまで先ほど申し上げましたような学校と地域との連携協力体制、かなりできてきております。その維持、充実を図る観点、こういったことも踏まえますとともに、県内各市町村の御要望、御意見、これを今後聞きながら検討してまいりたいというふうに思っております。
 五つ目は、デジタル教科書についてであります。
 @PADが上陸し、大ブームを巻き起こしています。
 読書まででき、新聞や折り込み広告も不要になるかもしれませんので、膨大な紙で配布している新聞自体が環境への悪影響という見方をされてしまうかもしれません。功罪さまざまに取り上げられる@PADです。
 このように、@PADの登場で活字のデジタル化が一気に進む気配の漂う昨今ですが、7月末、「デジタル教科書教材協議会」の設立シンポジウムで、ソフトバンクの孫正義氏は、教科書のデジタル化を「5年以内にやらなきゃいけない」とぶち上げたとのこと。
 いろいろ意義が語られても、@PADで大儲けする孫さんのことですから、目前の巨大マーケットに意識が行っていることは想像に難くありません。そんな穿った見方は置くとして、柳田邦男氏は、デジタル教科書は「人格形成にゆがみ生じる」と断じています。
 情報活用教育に取り組む学校現場から、調べのスキルが高い子は、本もネットも使えるが、必ず本に行くと聞いています。情報活用能力の基礎をしっかりと身につけるためには、やはりアナログの基礎があってこそと子どもたちが証明しているかもしれません。
 私も、柳田氏同様、教科書までゲームの延長にして欲しくないと素朴に感じます。
 デジタル教科書導入の動きについて、教育長のご所見をお尋ねいたします。
 デジタル教科書でございますが、今言われておりますのは、児童生徒一人一人が、教科書も副読本などの教材もすべて見ることができる携帯用の情報端末、これをデジタル教科書と言ってるようであります。このことにつきまして、現在、文部科学省が設置をいたしております学校教育の情報化に関する懇談会、ここで議論がされているところであります。
 デジタル教科書につきましては、一般論で申し上げますと、まずメリットといたしましては、教科書の文字や写真を任意の大きさに拡大したり、文章を朗読したりする機能のほか、インターネット機能、それから子どもたち同士の双方向の情報交換、あるいは教員によります子どもたちの理解度に応じた演習などができるというようなメリットが言われております。一方で、デジタル教科書を毎日、長時間、見続けることによりまして、目が悪くなったり、あるいは先ほどのインターネット等のメリットの反作用でありますが、注意散漫になったりするなど、子どもたちの心身に悪影響が出るのではないか。あるいは、論理的な思考が低下するのではないか。あるいは、教師と子どもとの対話が少なくなるのではないか。こういった点が危惧をされているところであります。
 私といたしましては、まだ具体的な教科書というのが出ておりませんのでわかりませんが、感覚的な感想で申し上げますと、子どもの成長にとりましては、やっぱりしっかりと実体験をし、あるいは読書などで文字や文章に親しむ中で、いろいろなことを感じて、さまざまな思いをめぐらすことが大切ではないかというふうに思っております。いずれにしましても、こうしたメリット、デメリットを見きわめまして、人格形成の基礎を培う時期にどのような教育を行うことが大切であるのか、慎重に検討していく必要があるのではないかというふうに考えております。以上でございます。

 

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