11月定例議会は、9月議会に続いて持続可能な社会作りについて、違う角度から包括的に取り上げました
基本的な時代認識は、ほぼ同じ思いであろうと思いますが、具体的な施策展開については相当認識に差があると思います。
結局、エネルギー問題への認識という出発点が違うでしょうから、バックキャスティングで現在の施策を考えることが必要だという認識にはならないだろうと思います。もう少し論議したいと思っています。
- 基本的な時代認識について
- 島根の持続可能戦略について
- 持続可能な地域づくりに関しての政策について
- 高齢者を支える仕組みについて
- 社会起業家育成について
- 期間限定@ターン者の出口対策について
- 情報産業の長期戦略について
- 行動に移すインセンティブについて
- 都市計画について
- 伝統的な技術の継承について
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質疑内容は下記の通りです。それぞれ文字色で私の質問、知事答弁、関係部長・教育長答弁がわかるようになっています。 |
今議会の一般質問は、9月議会にも取り上げた持続可能な社会づくりについて、別の角度から論議させていただきます。
質問の第一は、基本的な時代認識についてであります。 昨年12月、私どもは「新しい福祉・教育・平和をつくる公明党」、「人道の先進国」日本へと題する山口ビジョンを発表しました。 その冒頭には、 「人間」よりも「利益」を優先する経済至上主義で走り続けた結果、世界の価値観は大きく歪んでしまいました。私たちは一度立ち止まり、将来に何を見るのか考え直さなければならない地点に来ています。 「人道の21世紀」は、経済やイデオロギーの争いから抜け出し、人間の幸せの追求に最大の価値を置く新しい時代です。その先端を行く国を、私たちは「人道の先進国」と名付けました。 私たちは「人道の21世紀」に、一人ひとりに最大の価値を置く、地域主権の政治を実現させたいと考えています。 と書かれています。 国民総幸福量という考え方があります。1970年代、16歳で即位したブータンの新国王は「GNPよりGNHが大切だ」だと仰った。GNPのPのかわりに、ハピネスのHを入れたのです。ブータン国民はこれを国是として真剣に受け止め、その後、30年間かけて議論を重ね、2008年、ブータン史上初の憲法の第9条にGNHという言葉が盛り込まれ、GNHを保障するのが政府の責任だと明記されています。 これに刺激を受け、わが国には会社の成長を利益ではなくて社員の幸せを中心に考えようと、マイナス成長を掲げている企業もある。 私たちが追い求めてきた豊かさは、人の幸せを保障したのでしょうか。世界143カ国の幸福度を試算し順位付けた結果、上位にはいずれもエネルギー消費量の少ない発展途上国が占めています。豊かになったわが国は75位、アメリカは114位です。
今、私たちは経済至上主義から人の幸せ至上主義へとパラダイム転換すべき時ではないかと思います。人口の地方分散のカギもその辺りにあるのではないか。知事はどうお考えですか。 |
最初の私への質問は、日本は豊かになったが、そしてその成長っていうのは経済を重視していたからなったんですけれども、今の時点で振り返ってみると、少し物の考え方を変えるべきではないかと。経済に偏重した考え、あるいは物質的な豊かさに偏重した考えじゃなくて、もう少し幅広く、人の幸せを実現するためにはどうしたらいいかっちゅうことを考える時期に来てるんではないかと、こういう御趣旨だとお聞きをしました。
経済至上主義から人の幸せ至上主義へのパラダイムの転換と、こういうふうにおっしゃったわけですけども、実際そういう流れにあると基本的には私も思います。やはり戦後日本は、高度成長して非常に豊かになったわけであります。戦争が終わったときは日本国内は荒廃をして、住むところもない、あるいは食べるものも十分ないという世界であったわけでありますけども、その後、復興に向けて日本人全体が努力をする、さらに復興が進んでまいりますと、やはり欧米の高い技術を導入することによって、技術の高い、いい商品を安くつくるっていうことができるようになって、輸出もふえ、どんどん成長して、人々も豊かになっていったわけであります。
その過程で、昨日も申しておりますけれども、大都市の産業が発展するところに多くの人たちが集まるようになって、大都市がどんどん発展をし、そこはまた豊かな世界であり、チャンスの多い世界でありましたけども、今の時点でこの日本の成長を振り返ってみると、果たしてそうした大都市を中心とした発展っていうものをこのまま続けていっていいのか、あるいはそれで幸せになるのかっていうような問題意識のようなものが世の中に出てきたと私は見ております。そういう点では、議員と似たような考えをしておるわけであります。
やはり大都市は産業が発展し、雇用がふえ、給料も上がる、あるいはポストもふえるっていうような世界がずっと続いとったわけでありますけども、今世界全体が大きく変わっております。これも一つの要因だと思います。日本の後をついてくる後発国は余りなかったわけでありますけども、今や中国、インド等々、大きな人口を持つ国が発展をし得るような世界的な環境になってきたわけであります。そういう意味からも、経済に偏重した考えだけでいいのかっていう考えが1つ出てきてる要因ではないかと思います。
それから、やはり大都市の生活を見ますと、豊かで華やかなところもあり若者を引きつけますけども、通勤は混雑してる、住む家は小さい、あるいは夜遅くまで働かなきゃいかん、決して子育て等にはいい場所ではなくなっております。若い時代にはまだチャンスがありますから、若干そういうストレスがあってもそれがほかのものでカバーされるわけですけども、そういうことがだんだんできなくなっておると思います。特に社会のセーフティーネットから外れると、悲惨な事態が起こるわけであります。よく孤独死っていったようなことも起こりますし、あるいは親の子の虐待といったようなものも、親が困るからそういう事態に陥るわけでありまして、そういう意味で、今までの発展の仕方、経済に偏重した仕方だけじゃなくて、もう少し幅広い観点から生活、あるいは働き方、あるいは国のつくり方、町のつくり方を考え直さなきゃいかん時期に来てると私も思います。それを議員はGNHですか、ハピネスを重視した考えでやるべきだということでございます。
そういう意味から見ますと、島根はむしろ経済発展からおくれたために、いわば大都市で失われたものがたくさん残ってるっていうのが私の見方でございまして、豊かな自然が残っております。きれいな河川、湖沼、海、そして豊かな食材、そして古きよき文化、そして温かい地域社会、大都市で失われたものがたくさんあるわけでありまして、そういう島根の持つ強みを生かしていくっていうことが大事でありますし、そういうことが可能な時代になりつつあるということでございまして、次の質問と関連するわけでございますが、持続可能な地域づくりのために島根県として総合的な取り組みをすべきではないかというのが次の質問でございますが、まさに島根の持つそうした強みを生かして、島根らしい発展を目指していくっていうことは大事だと思います。 |
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質問の第二は、島根の持続可能戦略についてであります。 先日、松江市八雲台の須田商店を尋ねました。 八雲台は、開発から40年が経過した住宅団地です。団地の中にあったスーパーマーケットは5年前になくなりました。 須田商店は、10年余り前、一度は閉店したお店ですが、ご近所の方の要望で市内に嫁いだ娘さんが1年前に再オープンし、週3日お店を開き、高齢者や親子連れなどの寄り合いの場所となっています。 経営はと聞きますと、最低賃金程度だと仰っていました。ここでは経済優先のコンビニは出店できません。 話は変わりますが、県内の商業統計には驚きの数字が並んでいます。平成19年の県内卸売り事業所数が平成16年比15.3%減、従業者数は15%減、販売額は19.3%減と、激減しています。また、小売では、事業所数9.8%減、従業者数は4.3%減、販売額は7.2%減といずれも全国平均を大きく割り込んでいます。大型小売店の売り上げ動向は全体と同傾向でありますが、コンビニエンスストアは、シェアは低いものの着実に業績を伸ばしています。 次に、県際収支を見ると、平成12年から平成17年で商業は405億円、サービス業で117億円、農林水産業で76億円、赤字幅が大きくなり、移輸入への依存度が高まっています。 こうした数字から類推できることは、県内資本と域内循環の衰退が進んでいる状況です。 さて、今、世界的なピークオイル、ラストオイルショックということが注目されています。 ピークオイルには諸説ありますが、ドイツやフランスが示す2020年前というのは、信憑性としては高いかもしれません。 そのピークオイルについて、東京大学の石井名誉教授が会長を務めるもったいない学会の討論会のまとめによれば、天然ガス、非在来型石油や二次回収による石油など高い石油が安い石油の下落を一時的に補う。安い石油から高い石油へと移行するにつれ、石油価格は、乱高下しながら上昇するであろう。石油ピークによって、石油・天然ガスの争奪戦が起こり、日本が輸入できる絶対量が現在の半分に減る。石油価格は市場原理が成り立たず、政府が介入して、流通をコントロールすることになる。経済は石油生産の下落とともに下降する。2030年を迎える前に在来型、非在来型含めた全ての石油のピークが訪れるというシナリオは可能性が高い。
最近国際エネルギー機関(IEA)が発表した今後の石油生産は、上記のシナリオより楽観的な見通しになっている。特に当てにならないにもかかわらず、未発見石油を2030年で全体の20%としているように、今、混乱状態になることを避けたいとの意図が見える。 現実的な予測は、2020年までは、天然ガス液、非在来型石油、回収率向上、未発見石油、未開発石油でなんとか現状維持、あるいは生産量増加となるであろうが、2020年を過ぎると、中東の油田の老朽化による確認埋蔵量の減少が著しくなり、石油生産量全体は下降を開始する、というものである。 欧米は石油メジャーを持ち、中国も産油国であり、地下資源に関する知識は豊富であり、資源政策が最優先となっている。 日本は、経験や情報が不足しており、地下資源の重要性、動向に関して鈍感である。突然石油不足になった場合、もっとも影響を受け、最大の被害者になりうるのが日本である。 したがって、突然来る石油不足に対応する準備が重要である。石油生産の落ち込みに対し、原子力発電や自然エネルギーの開発によってエネルギーの不足分を補う努力は行われるはずである。しかしその開発が十分石油生産の下落を補えるという保障はない。 つまりエネルギー不足は社会的なリスクと捉え、社会全体で検討することがリスクに対し強い社会を作るためには必要。というもので、ピークオイルに関する論調は、ほぼこうした内容のようです。 今、3つの話をしました。これらのことから気にかかるのは、例えばピークオイルを迎えた時、フードマイレージが群を抜くわが国にあって、大手ショッピングセンターやコンビニが地域の生活を支え続けてくれるのか。地元資本の商店が疲弊する中であり、大手資本が撤退してしまったら一体誰が県民の消費生活を支えるのか。 農業についても同じで、農薬、化学肥料、農機具の燃料、農業資材、トラック流通など石油製品に支えられた大規模農業に極めて大きな痛打となるのではないか。この認識は、一昨日の中村議員の循環型農業に関する質問の趣旨と同じであり、持続可能な地域の基底となる部分で、構造は漁業も同じです。 エネルギー供給はもとより、商業やサービス業、農業、製造業など、あらゆる分野に劇的な影響が及ぶことになるのではないかと危惧するのです。 一方、わが国は、「今後、原油高によって商業採算ベースに乗る油田が増加し、確認埋蔵量の増加につながるはずであり、ピークオイル説には疑問も多い」というのが公式な見解のようであります。 ある関係者は、「政治家は問題の大きさを知らない有権者の票を取り合い、権力を得たいという願望から、事実を知らせようとしない」と言っています。この指摘がわが国に当てはまらなければいいのだがと思います。 ひょっとしたら、すぐそこにあるかもしれないXデーとそれにともなう劇的変化の時代に、国を支えるのは地域であります。幸いなことに化石燃料を背景とした成長主義、経済至上主義から一番取り残された本県であり、持続可能社会に一番近いともいえます。
わが県が、世界の潮流やわが国の政策を離れて独立した歩みを進めるわけには行きませんが、地域主権という大きな流れがありますし、「中山間地域に人々が集う脱温暖化の『郷』づくり」事業はじめ、さまざまな先進的な取り組みを行っている島根です。私は、もう一歩も二歩も踏み込み、バックキャスティングの手法でわが県の持続可能戦略を立て、持続可能な地域づくりのために総合的な取り組みを進めるべき時ではないかと考えます。知事の所見をお尋ねいたします。 |
もちろん経済っていう基礎がなければ、豊かさも実現できないわけであります。経済が豊かでありますから、高い医療技術が利用できるような設備が導入できるとか、あるいは働く場がふえるとかありますから、やはり経済とそうしたもの、両方を大事に考えていかなければならないだろうとは思います。
特に、日本はまだエネルギーを外国から輸入しなきゃいかんわけでありまして、平たく言えばそういうものを輸入し得るような経済力がなきゃいかんわけであります。輸出力がなきゃいかんわけでありまして、そういう意味で、グローバルな競争に打ち勝つようなところに力を入れると同時に、地方の豊かな社会をさらに豊かにするような、この2つの政策っていうのをバランスをとってやっていくっていうことが日本にとって大事なことではないかというふうに思うわけでありますし、島根におきましては、もちろんこのIT産業の振興、議員もお触れになりましたが、そういうこともやりつつ、島根の持つ観光資源を生かす、あるいは豊かな自然を生かす、そういうものもやっていくことによって、バランスのとれた発展を目指していかなければならないというふうに思うわけでございまして、そういう観点から、私どもは島根県総合発展計画っていうのを策定をいたしまして、島根の持つ豊かな農林水産資源、そういうものを活用する、さらに観光資源を活用する、そういうことによりまして豊かな島根を築き、そして豊かな地域社会がありますから、みんなが助け合うような、そういう社会を目指すべきではないかということでございまして、今後もそういう両者のバランスをとりながら、島根の強みを生かした発展を目指してまいりたいというふうに考えておるところでございます。 |
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質問の第三は、持続可能な地域づくりに関しての政策について何点かお尋ねいたします。
最初に、高齢者を支える仕組みについてです。 八雲台のことをお話しましたが、市内の古い住宅団地では買い物難民が増え、須田商店のような機能を必要としている地域がどんどん増えています。中山間地域はもっと深刻であろうと思います。
買い物など日常生活の受け皿が提供され、なお且つ人が支えあえる新しい形のコミュニティ作りが求められているのではないかと感じています。高齢化地域の生活を支える仕組みの現状と今後の考え方、合わせて、仕組み構築への支援についてお尋ねいたします。 |
議員からは松江市の団地の例を引いてお尋ねがございましたけども、中山間地域のみならず、都市部でも高齢化が進んでいることがございまして、身近な地域での商店がなくなったり、自家用車等の移動手段を持たない高齢者家庭が買い物や病院などの通院、そういうところに、そういう手段に困るといった状況が顕著になってきております。地域の生活を支えるために、配食サービスの提供などの介護サービスであったり、地域の支え合いによる生活交通の確保、それから中山間地域での移動販売車の導入であったり、また1人で暮らしておられる方の見守りなど、県内の各地でさまざまな主体が、各地域の課題に対応したさまざまな取り組みを行っておいでになります。
そうした状況の中で、県としては自治会であったり公民館であったりいろんな対象に、住民相互の支え合いの仕組みづくりを目的といたしまして、地域運営のキーパーソンとなる人材の育成を核といたしましたモデル的な取り組みを推進してきております。今後は、県内の多くの地域でそれぞれの課題に応じた多様な取り組みが継続的に展開できますように、各部が連携をいたしましてこうしたモデル的な事業の成果を全県的に波及させていきたい、そういうに考えております。以上でございます。 |
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次に、社会起業家育成についてです。 須田商店では、小さな農家などと直接取引きしています。例えば、須田商店のようなお店をネットワークし、小さな生産者を結び、お店と生産者を橋渡しするビジネスモデルがあるね。また、例えば、インフォーマルサービスなどとの連携も考えられるねというような話をしました。 多くの儲けはないかもしれませんが、志ある若者や女性の社会起業の対象になると思いますし、そんな視点で考えるとコミュニティビジネスは多面的に展開できるように思います。
ただ、社会起業家育成の仕組みが極めて脆弱ではないかと思います。起業家スクールが健闘していますが、起業した人は少ないし、社会起業家という視点は薄いと感じています。社会起業家育成の仕組みづくりが必要だと考えますが、所見をお尋ねいたします。 |
まず、社会起業家の育成についてであります。
ソーシャルビジネス、コミュニティービジネスは、まちづくりや高齢者支援など地域社会で顕在化しておりますさまざまな課題を、地域住民と協力しながらビジネスの手法を用いて解決しようとするものであります。中山間地域を多く抱えます島根県では、地域課題の解決だけでなく、地域における新たな起業や雇用の機会の創出にもつながる有効な手法であると考えておりまして、具体例としましては、高齢者の食料や生活用品などの買い物の代行サービス、地域の食材を生かした産直市、農産加工、農村レストラン、都市部の方々と交流を深める田舎ツーリズムなどを進めているところであります。このため、今年度からコミュニティービジネスに関するセミナーやリーダー養成塾など、人材育成支援に努めております。
議員御指摘のように、地域によって課題はさまざまでありますが、事業の利益は多くは期待できないが、地域の実情に応じたコミュニティービジネスの種はあると考えております。その種をいかに発掘して育て上げるかが課題と考えておりまして、県として何ができるか、さらに検討してまいりたいと考えております。 |
次に、期間限定@ターン者の出口対策についてです。 地域おこし協力隊など、期間限定@ターン者との交流を持ってきました。志を持った素晴らしい人材が来ています。彼らは、ネットワーク構築にも積極的ですし、自己啓発、自己研鑽の機会にも貪欲で、気に入った島根に定住したいとの思いを持っている皆さんが大勢います。 ただ、雇用期間終了後への大きな不安を抱えている上、受け入れ自治体の意識にもばらつきがあるようです。貴重な人材である彼らの自己研鑽に対する受け皿の拡充、期間終了後の出口対策についてお尋ねいたします。 |
地域おこし協力隊は、人口減少や高齢化が進む地方で意欲ある都市住民を積極的に誘致し、その定住、定着を図ることにより、地域力の維持、強化を図ろうとするものでありまして、特別交付税措置による財政支援が行われております。地域おこし協力隊員は地方自治体が委嘱し、おおむね1年から3年間、地域で生活し、地域のさまざまな活動に従事することとなっております。県内市町村では地域の実情に合わせてこの制度を活用しておりまして、現在6市町村で23名が配置されております。任期終了後は、活動の経験を生かした農林業への従事や、スキルや着眼点を生かした地域資源を活用したコミュニティービジネスの創出などが期待され、受け入れ市町村の中には協力隊活動のNPO法人化ですとか、新たな産業創出への支援を検討しているところもございます。
県といたしましても、こうした一定の期間、島根で生活、活動していただく方々は、担い手不足が深刻化しております中山間地における貴重な人材として期待をしておりまして、協力隊員など相互の交流会や中山間地域研究センターの研修会を通じまして、こうした方々の活動を支援するとともに、引き続きの定住につながるよう市町村とともにサポートしてまいりたいと考えております。
最後に、Rubyの活用と地元業者への発注についてお答えいたします。
今年度、再開発が必要となりました県の13の業務システムの開発業者の選定に当たりまして、地域振興の観点から、評価項目のうち地元業者であること、プログラムにRubyを使用することを特に重視することとしたところでございます。その結果、13のシステムすべてが地元業者への発注となりました。また、そのうち12システムがRubyを使用して開発を行うこととなりました。
今後も県のシステム開発に当たりましては、費用対効果の観点のほか、地域振興のため、地元情報産業の育成やRubyの活用についても最大限配慮していくこととしております。これらの取り組みを通じまして、県内業者の受注機会が増加し、地域経済への波及効果が期待できることに加え、Rubyによる業務システム開発、ノウハウの地元業者への蓄積がさらに進むことで、県外からの受注も期待できるなど地域経済の活性化に結びつくものと考えております。以上でございます。 |
次に、情報産業の長期戦略についてです。 今後の持続可能な地域づくりは、最先端のテクノロジーをうまく活用することが必要だと思います。 わが県では、情報産業の振興に力を入れていただいており、こんな時代にありながら、産業としても少しづつですが拡大しています。しかし、大きく時代が変わろうとする今日、持続可能な地域を支える産業として更に育てていくためには、長期的な戦略が不可欠だろうと考えます。 名古屋で交流してきた関係者は、30年前から戦略的に情報産業振興に取り組んできた名古屋の姿に、長期的な戦略に立って振興を図らないと島根の情報産業の未来はないと仰っていました。 自然界の力を最先端のテクノロジーで人の生活に役立てていくバイオミミクリーへの取り組みも進んでいます。こうした視点や、地域課題解決にITの活用が進めば、ビジネスとして世界に展開できることもあろうと思います。 情報産業の長期的な戦略についての考え方をお尋ねいたします。関連して、域内循環を図ることと情報産業界のスキル向上のため、Rubyの活用と地元業者への発注を要望してきました。努力して頂いていると聞き及んでいますが、その概要と今後の考え方、期待する効果についてお尋ねいたします。 |
それに関連しまして、情報産業の長期的な戦略についてどう考えるかというお話がございました。確かにこれまでは重厚長大の産業が中心でありましたから、大きな平野がある太平洋側で産業が発展しましたけども、今情報のネットワークが広がり、地方にいても非常に価値の高い生産活動ができるような世の中になり、そういう意味で、IT産業をこの島根で発展をさせるっていうことは島根の強みに合った産業ではないかと思っておりまして、私どもはその振興にかなり力を入れてきておるわけでございます。豊かな自然の中で若い人たちがクリエーティブな仕事をすると、そこで子育てをすると、大変いい組み合わせではないかというふうに思うわけでございまして、これまでの推移を見ますと、例えば平成19年には、IT、情報産業関係の従業員は島根県で1,400人弱でございましたが、21年度には1,600人とふえておりますし、売上高も19年から21年度の間に16%ぐらいふえておるということでございます。
IT産業を発展させていくためには、やはりこれも島根の強みを活用していくということではないかと思います。例えばRubyという新しいコンピューター言語がございまして、島根在住の方が開発し、これが世界から注目をされておるわけでございまして、Rubyを中心とした発展、Rubyを使いこなせる人材を大学等と協力して育成をする。
あるいは、ソフトビジネスの世界におきましても島根が持ってる強みがあります。例えば県立中央病院を中心としまして、医療関係の業務をコンピューター化するというのが早く進んでおりまして、こうしたものの技術の技能の集積が島根の情報産業企業の中にあるわけでございまして、そういうものをさらに活用していく。
あるいは、最近では農業の活動にITを利用するっていう新しいプログラムなんかも開発される企業が出ておりまして、そういうものをさらに開発をするように支援をしていくとか、あるいは県外でITの需要がふえるわけでありますから、県外の市場に太刀打ちできるようなプログラムをつくる。大きなプログラムなんかになりますと1社ではできませんから、島根の企業が共同してやると、そういう体制も業界におきましてつくるような努力をされております。
そういうことも県として支援をしていかなければなりませんし、またRubyのような新しい言語におきましては、それを使う、使ったという実績をたくさんつくることが大事でございまして、そういう意味で県は、市町村などがRubyを使ったプログラムをつくるということを推進するように助成をするといったようなこともやっておりまして、いろんな対策を活用いたしまして、島根県でIT産業が発展するように努力をしてまいりたいと思ってるところであります。 |
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次に、行動に移すインセンティブについてです。 東京大学の月尾先生から、ちょっと古いデータだが、全ての家庭が2000年以前の電化製品をすべて06年度のものに変えただけで総電力量は15.4%削減されると聞きました。 しかし、消費電力が半分になるからと大型の冷蔵庫に変えるというのでは本末転倒。近くのお店を上手に活用すれば、安くて小さい冷蔵庫で生活できるのです。しかし、大型のものに多くのポイントを付与するエコポイント制度は、そんな賢い生き方に転換させるだけのインセンティブを与えていない。インセンティブをどう与えるかが政治には問われているように思います。 環境活動家の枝廣淳子さんが国会の参考人として興味深い話をしていました。 日本はこれまで環境省中心に国民大運動と意識啓発を進めてきたが、今、意識は高いけれど行動していない人がどんどん増えている。 名古屋市は、マイカー通勤から自転車通勤に変えようと呼びかけたが、幾ら呼びかけても行動が変わらないので、通勤手当の仕組みを変え自動車は半額に減らし、自転車は倍額にした。その結果、2年後に自動車通勤は25%減り、自転車通勤は50%増えた。これだけの人々の行動変容は、呼びかけだけでは無理であり、意識があってもなくても行動するような仕組みづくりが大切と話されていました。 この時、枝廣さんとともに小宮山前東大総長が参考人としてお話されていますが、小宮山氏の提唱された自立国債は、ソーラーパネルの普及などには極めて効果的な仕組みではないかと思います。残念ながら国は採用していませんが、県での導入を検討して欲しいものです。このような手法で行動を促すことについて所見をお尋ねいたします。 |
それから3番目の質問は、エネルギー消費を減らすためには、人の行動をそれに向けるようなインセンティブを与えるといったようなことを考えなければならないと。名古屋市の例をとられて、自動車通勤よりも自転車通勤を推進するような、いわば通勤手当の仕組みを変えたということを御紹介になりました。それも一つの方法だろうと思います。ただ、通勤手当そのものをそういう形で活用するということにつきましては、通勤手当そのものは通勤に要する経費を補助することを目的としておりますから、職員の理解を得るとか、いろんな論議があろうかと思いますが、いずれにしましても、エネルギー消費を減らすようにいろんなインセンティブを与えるっていうことが大事でございまして、御承知のように買い物の際にレジ袋を必要としない、自分の買い物かご、買い物袋で買い物をされるっていう方々に対しましては、しまねマイバッグキャンペーンといったキャンペーンの中で景品を進呈するとか、あるいは各協賛店がそれに同調されていろんな割引をされるとか、いろんなことがありますから、そうしたインセンティブを活用しまして、エネルギー消費を効率化することに努力をしてまいりたいと思っております。 |
次に、都市計画についてです。 ある本に松江市では2012年に路面電車が導入されると書かれておりびっくりしました。 私は、既存道路の幅員などを考えると、松江市での路面電車の導入は、将来ビジョンとしては自家用車から公共交通にシフトするという明確な意思表示であろうと思うのですが、一方では、城山北公園線の拡幅工事が進んでおります。 城山北公園線の整備は、車社会の利便性を高める施策であります。路面電車の導入という公共交通へのシフトとも取れる施策との整合はどうなのかと思いました。
人は関係性の中で生きていると言われます。商店街再生の鍵は、人が車で素通りするのではなく、交流機会が生み出せる中にあるのではないか、そこにこそ、持続可能社会の姿があるのではないかと考えますが、車優先なのか、人優先なのか、今後の中心市街地再生と都市計画道路整備の基本的考え方をお尋ねいたします。 |
最後に、中心市街地の再生に関連しまして、公共交通のあり方など、どう考えるのかという質問がありました。確かに、近年多くの地方都市で商業施設や病院などの郊外立地が進みまして、中心市街地のにぎわいが失われているといったことから、都市機能を町の中に移すことによって中心市街地のにぎやかさを取り戻す、そのためには自動車による通過交通ではなくて、公共交通を拡充することによって公共交通からおりて人々は買い物をする、必要な業務を行うといったようなまちづくりをしてはどうかという考え方があります。国交省などにおきましてはコンパクトシティーと言っておるようでありますけども、そういうことも一つの選択肢だろうと思います。
富山市などにおきまして、そういう路面電車を導入するっていうなこともあります。ただ、それはやはり町の地形あるいは道路の広さ等々、いろんなことがありますから、一概にどこなら可能、どこならそれがいいというふうには決められないわけでありますけども、それはやはり地元の方々がどう考えるか、どういう選択をされるかということに大きく依存をしておると思いますが、選択肢の一つとして、まちづくりあるいは中心市街地の活性化などを考える際に、一つの選択肢として頭の中に入れて検討するっていうことはあり得ることだろうというふうに思うわけでございます。
そういう意味におきまして、車優先か人優先かというのは、その地域の環境、状況、あるいは人々の考えをよく聞いて対応しなければならないと思いますけども、やはり我々にとって心地がいいのは、車が余りなくてゆったり散歩をしながら買い物などができるっていうことでありますけども、なかなか、そのためにはそれだけの土地が中心地にあるかどうかという問題があります。町全体を大きく変えないと、そういうことが難しいかもしれません。非常にコストがかかるかもしれませんが、そういうことを考えしながらいろんな可能性を模索するということは、大事なことではないかというふうに思う次第であります。私からの答弁は以上であります。 |
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最後に、伝統的な技術の継承についてです。 先日、ピアノ修理の職人に出会いました。 ピアノ修理の職人は、西日本でただ一人。後継者はないとのこと。 その理由は、今、日本メーカーのピアノ製造は海外に依存し、下請けが激減、ほとんどの工程は全国で一人だけになり、かろうじて修理を支えている状況だとか。当然後継者の育成もされていません。 いくつかの工程のうち一つが無くなっても日本での技術的裏打ちのある修理はできなくなりますと。 また、出雲和紙の紙すきで一番大切な道具である「すのこ」を作る職人は四国にただ一人、それも70歳を超えていて、いつ供給が止まるかわからない。そうなったら、今使っているものを大切に使い続けるしかないと聞きました。 わが国では、森林資源を収奪するのではなく、共生して資源を有効に利用してきました。それを支えてきたのが伝統的木造建築技術ですが、経済性や効率化の名のもとに廃れてしまい、継承が困難になっています。 東京大学の石井名誉教授は著書に、「人類は、便利なものを徹底的に使い切る、地球資源を最後まで徹底的に収奪するまで、その行為を止めない種なのである」と書かれています。根っこは一緒だろうと思います。 持続可能社会への転換は、無駄をしない、浪費しない社会作りだと言われます。それを支える木造建築技術など伝統的技術のわが県の現状をどのように認識し、どう継承発展しようとお考えかお尋ねいたします。 |
長い歴史の中でこれまで培われてきた技術を継承し、また時代のニーズに沿ってさらに発展させていくことは、島根の物づくり産業の振興を図る上で、また地域文化を伝承する上でもとても重要なことと考えております。あわせて、伝統技術を生かして古きよきものを長く大事に使い続けることは、議員御指摘のとおり、持続可能な社会づくりにもつながるものと考えております。
一方、伝統技術の継承は、高齢化や後継者不足などによりまして厳しい状況になってると認識しております。例えば、この10年間で建築大工、また左官の方で、島根県建築組合連合会に加入なさっている組合の方ですが、建築大工で約30%、また左官で約40%減少し、また平均年齢も上昇しております。伝統技術を継承していくためには、まずこうした技術に広く関心を持っていただくことが必要であると考えております。このため、県といたしましては小さいころから技能のすばらしさを実感してもらう機会をつくっております。例えば中学校に建築や左官などの技能士の方を派遣いたしまして、いすをつくってみるとか、工程などを体験する取り組みを島根県の技能士会連合会と連携して実施してまいっております。
また、新たな担い手の養成も重要です。高等技術校、来年4月再編整備を行いますが、来年の4月からは建築、左官の訓練コースにおきまして、宮大工の方など卓越した技術をお持ちの方を外部講師として招くなど、若い人にとっても魅力あるカリキュラムを編成してまいります。さらに、建築、左官の中堅の技能者の方を対象にいたしまして、伝統建築には欠かせない欄間などの建築彫刻やしっくい仕上げなど、高度な技術を学ぶセミナーを実施していきたいと考えております。今後もこうした取り組みを通じまして、伝統技術の継承発展に取り組んでまいりたいと思います。以上です。 |
【再質問】
持続的発展という言葉があるんですけれども、この持続と発展っていうのは両立するのかどうかっていうのがやっぱり1つ、もっと考えなきゃいけない点だろうと思います。特にこれからは、それは重要な視点ではないか。総合計画っていうのは総合発展計画ですから、持続性よりも発展っていうことがやっぱり主眼になってるというふうに僕は理解をしております。
さっき商業統計と県際収支の話をいたしましたが、農業においても、この県際収支が5年間で76億円赤字幅が大きくなっている。移輸入への依存が高くなっている。本当にこれで島根は持続していけるのか。商業においても一緒だと思っておりまして、そういう視点をもっとしっかり考えなきゃいけない時代ではないか、そんな気がしております。確かに競争に打ち勝つことも必要ですけれども、それを追い求めてきたがために、自殺がふえて、うつがふえて、格差が広がり、本当に私たちは幸せになったのか、もっと考えなきゃいけないんじゃないか。それが提供できるのが島根、この認識は知事と一緒なんですけどね。やっぱり少し長く、中長期のスパンで未来の社会をどうあるべきなのか、しっかり考えていく必要があるんではないか。バックキャスティングという話をしましたけれども、ぜひ改めてその辺の御見解を聞きたいなと思います。よろしくお願いします。 |
持続可能な社会あるいは世界、いろんな局面があると思います。1つは、世界っていうことから見ますと、議員もオイルピークでありますとか、いわばエネルギー資源が将来非常に不足をする、石油以外のもので代替しても追いつかない事態が生じると。そうなりますと、多くのエネルギー消費に依存した発展というのは持続可能でなくなるということがあります。それはおっしゃるとおりだろうと思います。そういう面での努力は、この日本全体、世界でやっていかなければならないというふうに思います。
それから、島根という地域について見ますと、そういう中では、島根はいわばエネルギー多消費型の産業っていうのはそんなにないわけでありまして、むしろエネルギーなどは多分、電力の需給を含めてみますと外に供給してることではないかというふうにも思われるわけでありますけども、島根はそういう意味で再生可能な資源、農業でありますとか林業でありますとか、林業などはほっとけばといいますか、ある程度整備をしていけば木は年々大きくなるわけでありますし、農業も手入れをし管理をしていけば、そこで再生が可能でありますし、海の資源もふやすっていうことも、そういう面もありますけども可能でありますから。あるいはほかの産業で見ますと、観光といったようなことでありますと、各地にもともと引き継いでおる資源がありますから、そういうものを活用していくっていうことであろうと思います。
そこで、県際収支との関係でお触れになりましたが、なぜそういうことが起こっているかっていうと、若者たちが外へ出ていきます。それはその背後には、産業の発展が十分でない、雇用が少ないということで出ていきますから、県内で生産するものに対して消費するものが多いわけであります、多分。それで、県外から入ってくるものが多分多くなってんではないかと思います。それで、それはじゃあなぜ可能かっていうと、そこは年金でありますとか所得の移転っていいますか、そういうものが多分影響してるんではないかと思います。
そういうことを踏まえて申し上げますと、今度は個別の産業について持続可能な産業を育成していかなきゃいかんという別な問題の次元になりますが、そういう面で見ますと、農業におきましては循環型の農業を、御指摘のように県内にはそういう可能性がありますから、さらに振興していきたいと思いますし、林業を育成をする、そのために県産材などの活用をする、あるいは観光資源を活用する、私どもはそういう意味で、あるいは行政としますと、エネルギーそのものをやはり減らすような、インセンティブを少なくするような行動を奨励するようなことを政策としてとっていく、いろいろなことがあると思います。そういう意味で、総合発展計画と申しますのは現行の計画のことを申し上げたわけでありますが、その中にも、この持続可能な社会、持続可能な産業、あるいはエネルギーの使用を減らすような対策もこれからさらに強化をしてまいりまして、持続可能な島根、島根らしい発展を目指していきたいというふうに思います。そういう意味では、ちょっと説明が十分でないかもしれませんが、議員と方向は同じでございます。以上でございます。 |