質問の最初は、施策の優先順位と予算編成についてであります。
昨年、総合計画に掲げられた70本の主要施策の優先順位が示された際、強い違和感を覚えました。説明を受けた全員協議会では、ある自民党議員が、私が大切だと思っているソフト事業はみんな最下位の方に位置しているが何故かと質問されました。私も全く同じ思いを持ち、その疑問を述べました。
「優先施策」の一覧表を見返すと、なるほど、上位に位置している優先施策は、県民の意識調査をはじめ、行政指標、市町村職員や県職員への調査などを積み上げ、考えうる最高・最良の裏づけを持って選ばれており、今の島根県にとって最重要課題であることに異論を挟む余地はありません。しかし、どうしてもすっきりせず、ずっと引っかかってきました。
ある学者は、20世紀の日本の社会科学、とりわけ第二次大戦後のそれは、長らくマルクス・レーニン主義の圧倒的な影響下におかれ、唯物史観を日本の現実に適用することが、その主要な課題とみなされてきたと言っています。官僚主導によって規格大量生産型の近代工業社会を目指した日本は、"最も成功した社会主義国"といわれていますが、今、大半の社会主義国は崩壊、東西の対立構造は消滅しました。
絶頂期を迎えたもののバブルは弾け、わが国の凋落が始まったのですが、官僚の無謬性ゆえに、いまだその社会主義的体質から抜け出すことができていないと言われています。
堺屋太一は、1985年、「知価革命」でこれからの社会を「知価社会」と定義しました。氏は規格大量生産社会から「知識」や「智恵」が主導する知価社会への変革の成否が国の命運を分けると説いていますが、同氏の近未来小説「平成30年」は、1ドル=300円、ガソリン1リットル1000円、消費税は20%へ―、平成30年(2018)の日本はまだ何も"改革"できないでいたとの前提で書かれています。著者は、そのような日本の将来を予見しています。
知価社会における企業経営を論じたある経営者は、ビジネス機能変革の重要な要素の一つとして相互牽制・横並びからの脱却を挙げています。私が施策の優先順位で引っかかっていた点は、このことであります。
昨年末、ある女性から、松江市のキャッチフレーズ"山陰の中核都市松江"はいかにも志が低い。もっと大きな夢と目標を掲げて、世界に向かって発信し、発展する松江市を目指すべきではないかとの指摘を受けました。"山陰の中核都市松江"は、相互牽制・横並び的発想ではないかというのです。
日本の合計特殊出生率が1.30を割り込み、国も県も少子化対策を最重要課題として取り組んでいますが、先進諸国の近年の出生率と比較すると、イギリスは1.63、フランスは1.90、アメリカは2.13。これら諸国よりも日本の方が、特に女性の社会的進出が進んでいるわけではないと言われます。少子化にはさまざまな原因が指摘されますが、将来に対する確とした希望と誇りが持てれば自然と向上するという意見もあります。今、将来に対する不安を払拭し、希望と誇りを持てる県土の姿を示すことこそが求められていると思います。
横並びの発想では、将来に対する不安を払拭し、今までのように"他県では"というよな追随する位置を脱することは不可能ではないかと思えます。
しまね映画祭助成カットについて述べた山陰中央新報の論説は、県民に失望感を抱かせないで欲しいと記しました。私も同感です。知価社会の基盤を創るものこそ、このような取り組みではないでしょうか。
「ハァ〜」。島根家からは今日も、花子さんのため息が漏れる、と表現される現状の中、現在の島根に県民は"希望と誇り"を持ちうるとお考えでしょうか、ご所見を伺います。この厳しさの中で目指される自立的に発展する島根とは、他県とはどこが違う島根なのか、「平成30年」にはどんな島根にしたいとお考えか、施策の優先順位をもって県政運営を進める延長上には"希望と誇り"があるのか、また、新年度予算における位置づけについてもお尋ね致します。 |
まず、施策の優先順位と予算編成についてであります。
国・地方を通じた厳しい財政状況下では、これまでのようにアレもコレもとすべての施策を同じように展開しようとしてもかないません。限りある行政資源の選択と集中が必要な所以です。
そこで、私は、自立をめざす島根の将来像すなわち「夢」を掲げ、その実現をめざした総合計両を新たに策定し、施策の優先順位付けを行いました。平成17年度の予算編成にあたっては、総合計両の優先順位に基づく施策の選択と集中を徹底することとしました。
私は、現下の厳しい状況のなかで、自立し、持続的に発展する高根のため、何よりもその確実な基礎固めを今こそしておかなくては、後顧の憂いを避けられないと考え、産業振興を核とした重点施策に力を集中しました。
もちろん、産業の振興といっても、決して、他県の前例を踏襲する、後塵を拝するものではありません。ご指摘の「知価」の観点も含めて、島根発の技術や素材など島根の強みを活かす、それゆえ島根ならではの産業振興を図ろうとするものです。
私は、地域における「希望と誇り」とは、県のみならず市町村の行政、県民、企業、NPOなど様々な主体が自立し、それぞれの主体が自らの夢を語り、その実現のために行動することにより、自ずから醸し出されるものだと思います。いわば地域の総合力の証左であり結果であると考えています。
「夢しか実現しない。」テクノアークのロビーに掲げられを言葉です。私もまた、島根の夢を実現すべく、語り、実行して行きたいと考えています。 |
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質問の第2は、県の合併、道州制についてであります。
わが県にとって、当面する大きな課題であった市町村合併ですが、県当局と関係の皆様のご努力によって、ほぼ形が見えるところまで参りました。紆余曲折、さまざまな利害対立の中で、ここまでこぎつけられた関係者の皆さまのご尽力と決断に心より敬意を表すものです。
いよいよ、県の合併や道州制も次の課題として検討を加速させる時が来たのではと思っています。昨年末、わが党の中国ブロックの県会議員が意見交換する機会がありました。その際、県の合併や道州制についての温度差の違い、利害対立の根深さ、調整の困難さを実感すると共に、次のステップの中でわが地域が、"生き残っていく"ことの困難さを実感致しました。
人口歴史学者のレイナールらによれば、15世紀のイタリアでは人口が極端に減ったとのこと。1340年には930万人だった人口が、1500年には550万人へと約4割減少したのですが、この間にこそ、ルネッサンス文化が花開いています。
人口が減少すると、生産性の低い土地は耕す者がいなくなって捨てられ、人は生産性の高い職業や土地に向かった。その結果、一人あたりの所得が高まり、庶民にもフィレンツェの絹製品やベネツィアのガラス器を購入する余裕が生まれた。こうした手工業が発達し、国外にも輸出され、イタリア経済は発展。教会への寄付も増えて新しい聖堂が次々に建設され、そこに壁画を描き、彫刻をつくった。これがやがて、ミケランジェロやラファエロを生み出したというのです。
ところが、同じ頃のドイツでは人口の減少によって経済が衰退した。当時のドイツは、封建領主の権力が強く、農民の自由な移動を禁じて生産性の低い土地に縛り付けた。このため、一人あたりの所得が上がらず、むしろ都市の商工業が衰退してしまった。繁栄を極めた南ドイツの諸都市が衰亡したのはこのためだと言われています。
県の広域化・道州制の時代に、わが地域が中世ドイツの徹を踏まないためには、県境を越え、中海・宍道湖圏域が結束して全国へ、全世界へ発信していけるものをどれだけ創造していくのかにかかっているのではないかと考えます。
両県の懸案が解決に向けて動きだした今こそ、県境を越えて力と智恵を出し合い、地域の結束をつくり、新たなものを生み出すチャンスの時と思いますが、知事のご所見をお尋ね致します。 |
次に、鳥取県との県境を越えた連携についてであります。
議員御指摘のように、両県が県境を越えて知恵と力を出し合い、新たなものを生み出すチャンスが到来したことにっ、いては、私も全く同感です。
特に、中海・宍道湖圏玖は、日本海側でも有数の人口集積地域です。この圏域が、山陰地方の中核都市圏として、経済、観光、文化など様々な分野において、周辺地域との連携を図りつつ、先導的な役割を果たすことを大いに期待しています。
こうした状況を踏まえ、昨年四月、両県が連携して、地域の魅力向上と活性化に向けた取組みを推進するための、実務者レベルの協議の場を発足させました。この協議を通して、交通や観光をはじめ、「島根県立美術館」と「とっとり花回廊」との相互会員割引や、圏域内の遺跡をめぐる史跡ツアーの実施など、文化面での具体的な連携も行っています。
また、昨年開通した江島大橋は、観光や物流の大動脈として、まさしく、新しい時代の両県の交流の架け橋になりつつあります。
民間においても、昨年十二月、両県の二十の神社仏閣が、しやじえんざ「出雲の国社寺縁座の会」を立ち上げました。神仏や宗派を超えた新たな巡拝コースを設けるなど、全国的にもユニークな取組みが始まっています。
このような行政や民間団体による連携や交流の動きが、今後より一層多彩で活発なものになり、この圏域や、その波及効果が期待される周辺地域の、更なる発展に繋がっていくことが重要と考えています。 |
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質問の第3は、行財政改革についてであります。
先日、軽度発達障害関係団体の皆さまと意見交換をする機会がありました。この会で、今議会での焦点の一つでもある福祉医療の見直しについて、県の関係者は「財政が厳しいからご理解ください」というばかりで、何故見直さなければならないのか説明がないとの意見が出ました。
また、ある自治体の方から、上海便の誘致断念と一畑電鉄補助金の見直しを例に挙げ、県は改革を進めるに当たって、もっと関係自治体と丁寧に協議すべきであるとの苦言を頂戴しました。
国は、日本を世界に発信するため、観光立国行動計画を策定し、世界35位に甘んじている外国人旅行者を増やす取り組みを行っています。県都松江市でも、観光を市の柱となる産業と位置づけ、対岸地域からの観光客誘致も視野に入れながらその充実に取り組んでおり、上海便に寄せる気持ちも並々ならぬものがあろうと思います。
例えば福祉医療にしても、国分学園等の民営化にしても、県は十分な説明に心がけながら進めていらっしゃると思いますが、県の思いと現場の思いには、利害の対立を超えたところで乖離があるように思えます。
話は変わりますが、以前より要望していた県立図書館の駐車場、時間はかかりましたが、守衛さんのログハウスを図書館の角に移動する計画とのことで、県職員駐車場の空きスペースに素早く案内できるとのこと。ゼロ予算の考え方も同様の発想と思いますが、投資は最小限、ちょっとした智恵を使っていただくだけで県民の利便性が格段に向上することになります。
駐車場では、県営住宅の駐車料金徴収と共に、県職員住宅の駐車料金も徴収する計画とのことですが、県庁横、図書館前の駐車場は月2210円とのこと。県庁から200メートルの県職員宿舎は3DKで8160円と9070円であるとか。更に、退去要件はないようで、どんなに偉くなっても住み続けられる。職員会館も年間の管理費が1500万円だそうですが、県職員関係者以外は使用禁止だとか。一般県民から見ればお手盛りもいいところです。これで金が残らなかったら不思議と言う人もいます。
福祉医療の見直しなどで弱者に痛みをお願いする前に、見直すべきところ、改めるべきところはもうありませんか?
行財政改革を進めるにあたり、市町村や関係者との協議や意見調整、理解を求める手法について、上からの発想ではなく、県民の目線に立った丁寧な手法を求めたいと思います。最初の自治体関係者の発言については、行き違いのようなところもあるようですが、いずれにしても、県民が一体感を持って進めるよう一段の御努力をお願いしたいと思いますが、ご所見を伺います。 |
行財政改革を進める際の手法についてであります。
未曾有の財政危機に直面し、これに真正面から立ち向かうためには、全体として歳出規模を縮小せざるを得ず、内なる改革としての行政の効率化・スリム化を徹底して行った上で、あらゆる事業について見直しを行うことが避けられません。
もとより、見直しに当たっては、議員御指摘の県民の視点を大切にした改革とすることが不可欠であり、そのためには、積極的な情報提供と意見の反映が必要であると考えております。
このため、御質問にありました福祉医療費助成制度や一畑電車運行維持対策事業費補助金などにつきましても、平成十五年十月の平成十六年度当初予算編成方針策定時から、見直しの方向性を公表し、その後、それぞれの事業について、関係者や市町村等への説明、協議を行いながら、見直しに取り組んできたところであります。
その過程においては、見直しの目的等についての説明やいただいた意見の反映等に十分留意してきたものと考えておりますが、今後の行財政改革に当たりましては、御指摘を踏まえ、県民の視点を一層大切にした丁寧な説明を心掛け、県民に御理解をいただくよう努めてまいります。 |
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このたびの財政健全化の取り組みの中で注目を浴びた福祉医療見直しについて。
先般、委員会の現地調査で歴博に行かせて頂きました。改めてその規模に目を見張る思いでした。
22日、NHKのクローズアップ現代で、財政逼迫の中で苦闘する公立美術館が取り上げられていましたが、歴博の将来がとても気になります。それは別として、この番組のテーマの一つは、「公共性の対価」と言うことであったと思います。
県民が、毎年4億円の運営費を注ぎ込み続けなければならない歴博の「公共性の対価」と、社会的弱者の痛みを天秤にかけて見るのは当然でありましょう。
関係者の皆様の悲痛な叫びや議会からの要請にこたえられて、当初の見直し案からするともう一歩踏み込んだ配慮をいただきましたが、それでも負担はとても重く、厳しさを強いることは間違いありません。県財政健全化が至上命題の中での福祉医療見直しについて、知事の率直な思いをお尋ねいたします。 |
この制度は、重度の障害者や母子家庭の福祉の増進に大きく寄与している大切な制度であり、将来にわたって安定的に維持していかなければならないと考えております。
しかしながら、現行の制度には、国の医療保険制度改正による自己負担額の増がそのまま転嫁されることや、応能・応益の、仕組みとなっていないことなど制度白体に問題点を抱えており、また、現下の厳しい財政状況を考え、見直さざるを得ないと判断したものであります。
今回の見直し議論の中で、さまざまな御意見をいただきましたが、中には、心臓病の子どもさんをもっ家族の方から、県外の医療機関を受診せざるを得なく、医療費以外にも交通費や宿泊費などがかかり、経済的負担は計り知れないといった実体験からのお話など切実な気持ちを訴える御意見があったと報告を受けました。
こうした救いを求める声の一つひとつを真剣に考え、制度をあるべき姿に再構築する中で、それに応えていくことが、知事である私の責務と考えますが、一方で、今日の危機的な財政状況の中で、我慢すべきは我慢し、是正すべきは是正して、財政改革を断固やり遂げることが私に課せられた大きな責務であります。
私は、このたびの制度改正は、熟慮に熟慮を重ね、様ヵな角度から慎重に検討し、この大切な制度を将来にわたって安定的に維持したいとの強い思いをもって、配慮すべき点は可能な限り配慮した上で、結果として県民の皆様にさらなる御負担をいただくという苦渋の判断をしたものであり、御理解いただきたいと思います。 |
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この項の最後に、職員の福利厚生の見直しを進める中ですが、県職員駐車場、県職員住宅、職員会館使用等に対する考え方をお尋ね致します。 |
次に、県職員駐車場、県職員宿舎、県職員会館についてであります。
先ず、県職員駐車場は公共交通機関による通勤が著しく不便であるなど、特に必要と認められる職員に限って使用を許可しているものであり、その料金は「行政財産の使用料に関する条例」を基に算定しております。
県庁横の職員駐車場の料金水準については、@比較的地価の安い「松江合同庁舎職員駐車場」と合算して同一料金を設定していること。A県職員駐車場は週木目等を一般開放していることから、年間三六五日のうち使用日数を二四五日として使用料を計算していること。等から周辺の民間駐車場に比して低い水準になっているものと考えております。
次に、職員宿舎は、概ね三年〜六年毎に転勤する県職員が、能率的かつ円滑に職務を遂行するために設置しているものであり、その料金は「国家公務員宿舎法」に定める使用料に準じて定めています。
国家公務員宿舎については、平成十六年四月から使用料の引き上げが行われており、本県の職員宿舎貸付料についても、これに準じた改定を本年四月から実施したいと考えております。
併せて職員宿舎敷地内駐車場貸付料についても徴収を開始したいと考えており、現在鋭意、職員団体の理解を求めているところであります。
次に職員会館の使用についてであります。職員会館は職員の福利厚生施設として平成二年十二月に設置しており、健康診断や相談、診療所の開設などを通じて職員の健康管理に利用するとともに、アリーナ、会議室を健康増進や文化教養を高める目的で、その利用に供しているところです。
現在は県、職員およびその家族等を中心に利用されており、一般利用は県の行事に参加される場合や県職員と一緒に利用される場合等に限られております。
今後は、例えば地域のサークル活動等でアリーナや会議室等を利用したいとい要望がある場合には、施設の目的に支障のない範囲で、一般利用に供することを検討したいと考えます。 |
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質問の第四は、改正高年齢者雇用安定法と高齢者対策について。
今後数年のうちに、いわゆる団塊の世代が60歳に達し、その多くが定年を迎えます。しかし、わが国の高齢者の労働意欲は非常に高く、40歳以上の中高年のうち、8割以上が少なくとも65歳まで「働き続けたい」と考えていろとのこと。
ですが、意欲とは裏腹に、希望者全員が65歳まで働ける場を確保している企業はわずかで、再就職しようにも、募集・採用時の年齢制限などで高齢者は極めて難しい雇用状況に置かれています。
そうした状況や、厚生年金の支給開始年齢が段階的に65歳まで引き上げられつつあることを踏まえ、昨年、改正高年齢者雇用安定法が成立しました。
この法律は、65歳までの定年延長か継続雇用制度の導入などを事業主に義務付けるものですが、事業主からは、人余りの中、本当に仕事のできる人は逃げてしまい、残って欲しくない人を残すことになるのではないか、高齢者継続雇用のためワークシェアリングも考える必要があるが、全体の給与ベースが下がることになってしまう等、不安の声が聞こえます。
平成25年に完全実施されることになりますが、今後の高齢者雇用についての県の考え方、そして、不安を抱える県内事業者に対し、どのように誘導していくお考えかお尋ね致します。また、県においては、県職員の定数削減や外郭団体の改革に取り組む中ですが、どのように対応して行くお考えかお尋ね致します。 |
今後の高齢者雇用についての県の考え方についてであります。
高齢者雇用は、少子・高齢化の進展により高年齢者の労働力としての活用の必要性が高まってくることや、年金の支給開始年齢の引上げに伴い高齢者の生計維持のための収入の確保が求められることなどから、今後、国全体において取り組むべき大きな課題と考えております。
また、全国一の高齢者県である本県にとりましても、高年齢者が長年培ってきた知識・経験を活かし、生涯現役として活躍できる杜会を実現することは、極めて重要な課題であります。
そのため、県におきましては、継続雇用制度の県内事業所への導入促進を図る広報活動や、県内職業安定所に配置した.「高年齢者就職相談員」による高年齢求職者への職業相談の実施、さらには、高年齢者に多様な就業形態を提供するシルバー人材センター事業の普及啓発など、高年齢者に対一する様々な就業支援対策を展開しているところであります。
それと同時に、高年齢者の雇用促進似ためには、産業の振興が不可欠であることから、新産業創出プロジェクトの推進やコミュニティ・ビジネスの創出などの産業振興施策を積極的に推進し、高年齢者の安定した雇用や就業機会の拡大に努めてまいりたいと考えております。
次に、「改正高年齢者雇用安定法」に対応するための県内事業者の誘導についてであります。
この法律施行に伴い、事業者が、定年の引き上げ、継続雇用制度の導入等を行うためには、年功的賃金や退職金制度を含む人事管理制度の見直し、職業能力の開発及び向上、職場改善など様々な条件整備に取り組む必要があり、議員ご指摘のとおり事業者の方の懸念も推察できます。
このため、国においては、「高年齢者雇用了ドバイザー」を配置し、先程、申し上げました条件整備などの具体的な相談・助言を行っております。また、継続雇用制度を導入するための課題と方向を整理する「コンピューターによる簡・易診断」、さらには、新たに継続雇用制度を導入した事業主に対する「継続雇用定着促進助成金」の支給などを実施しているところであります。
県といたしましても、県内事業者に対してこれら支援制度の周知と.啓発に努めることにより、継続雇用制度等の導入に関する事業者の不安解消を図り、高年齢者が意欲と能力の.ある限り活躍↓続けられる社会の実現をめざしてまいりたいと考えております。
また、県内事業者が高年齢者を積極的に雇用していく環境を作るためには、何よりも各企業の経営体質の強化が必要であることから、既存産業の競争力強化を興る「産業競争力強化プロジェクト」などに今後とも取り組んでまいります。
県職員の定数削減に取り組む中での、職員の高齢者雇用の在り方についてお答えします。
県職員の定年は、条例で原則として六十歳と定めております。定年後の雇用については、平成十四年度から、高齢者雇用を促進し、知識・経験を活用していくこと及び年金が満額支給されるまでの就労機会の確保の観点から再任用制度を設け、運用してまいりましたが、平成十七年度以降、当面休止することとしたところです。
また、現在、外郭団体の役職員への再就職については、団体から要請があった場合、県を退職する職員を斡旋しているところですが、外郭団体の見直しを進める中、漸減に努めているところです。
定年退職者の再任用の休止につきましては、職員の五〇〇人の定員削減を進めていくなかで、少しでも多くの新規職員を採用するための措置であり、止むを得ないものと考えております。
今後、一定程度の新規職員採用枠が見込める段階になりました時に、再任用についても再開すべきものと考えており、とりわけ、新規職員の確保が困難な職種については、柔軟に対応する必要があると考えております。 |
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さて、いよいよ訪れる人口減少社会において、高齢者対策の成否によって国のありようが全く違うと言われています。
定年延長などの措置によって働く高齢者が増えれば、高齢化社会を支える若い世代の勤労者の負担が減少することになります。そして、高齢者が打ち込めること、好きなことを持っていれば、子や孫のために残すのではなく、もっと自分のためにお金を使うようになります。また、高齢者が付加価値を認めるものであれば、全国に発信できたり、地域発展にもつながると思います。
私の趣味は磯釣りですが、一年一年、釣りがハードになってきました。釣りがしたい高齢者や障害を持った方が安心して行ける、そして釣果もある釣り場があれば、少々のお金のことは気にしません。体力に不安な釣り人が集まってくること請け合いです。
私の母が、旅館などで食事をすると、全てが私でも食べられ、もっと少ないといいのにねと言います。外国にはシニア向けのメニューが準備されていると聞きますが、わが国ではお目にかかったことがありません。
例えは悪かったかもしれませんが、高齢化社会を県勢発展のバネにする取り組みを進める必要があると思います。特に、これから10年後に65歳を迎える団塊の世代への対応が県政発展の鍵の一つであると思いますが、ご所見をお尋ね致します。 |
次に、団塊の世代への対応についてであります。
二一十一世紀は高齢者の世紀」といわれています。今世紀初頭には、いわゆる「団塊の世代」が高齢期を迎えます。この世代は、生まれ育った時代や文化的な背景から、これまでの高齢者とは異なった価値観やライフスタイルを有しており、生活様式、世代間関係のあり方、地域社会の仕組み、さらには産業や雇用のあり方など社会全体に様々な変革をもたらすと予想されています。
このことは、我が国社会のあらゆる分野で高齢者の影響力がかつてなく強まり、同時に、その果たす役割と責任の重さが問われる時代になることを意味します。
私は、こうした時代認識に立ち、昨年度、「おしゃれで凛とした生涯現役社会・しまねの実現」を基本理念とする、「しまね高齢社会振興ビジョン21」を策定しました。
このビジョンでは、これまでの高齢者対策から、高齢者を含む「高齢社会対策」へと視点を変え、高齢者一人ひとりが社会の主要な構成員となり、自分らしさを大切に、いつまでも現役として活躍できる社会づくりを進めていくことにしています。
そのためには、これまで行ってきた高齢者の生きがいづくりを引き続き支援することはもちろんのこと、これから、団塊の世代が、高齢期を地域と深い関わりを持ちながら暮らすことを考えますと、これまでとは異なった、新たな発想による施策展開を行う必要があると考えます。
団塊の世代は、経済的なゆとりから生じる人生を楽しむ術を身に付けています。また、その行動範囲は広範であり、しかも、価値観やライフスタイルは多種多様であります。
私は、これからの高齢社会は、こうした新たな高齢者が、社会の中心的役割を担い、地域を支える原動力となると考えています。そこでこれをビジネスチャンスと捉え、元気で意欲のある高齢者による起業の支援や、多様な趣味や余暇活動などをうまく取り入れた商品の開発といった新たなビジネスを掘り起こすことは、本県が重点的に取り組んでいる産業振興の面からも大切と考えます。
私は、こうした取組みこそ、団塊の世代をうまく県勢発展に活かす道と考え、全国一の高齢化県である、ここ島根から、新たな高齢社会をリードしていくとの気概を持って取り組んでまいります。 |
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質問の第5は、教育問題について。
わが国の児童生徒の学力低下が顕著になってきたことから、ゆとり教育のあり方が論議されています。
私も、週5日制が完全導入された当初、ゆとり教育と学力低下問題についてお尋ねしたことがありますが、学力低下問題がどういう形で検討され、取り組まれて行くかは別にして、現在行われている総合学習の時間は確保し、充実に取り組むべきだと思っています。現場で総合学習の時間を見る中、取り組み次第で大きな成果が生まれると実感いたしました。総合学習の時間と生きる力を生み出す教育についての評価、ゆとり教育と学力低下問題に対するご所見をお尋ね致します。 |
ゆとり教育と学力問題についてであります。
学力の問題につきましては、これまでも繰り返し答弁しておりますとおり、我が国の児童生徒の学力は、国際的に見て上位にありますが、読解力や学ぶ意欲、学習習慣に課題が見られるとの結果が示されております。
本県においては、「教育課程状況調査」の分析結果に課題があることや、大学入試センターの試験の平均点が低下傾向にあることなどから、今後、総合的な対策を講じるため「学力向上プロジェクト」を創設し、総合的かつ具体的な対応策について検討をしてまいります。
次に、ゆとり教育につきましては、「生きる力」を育むことを目指したものであり、子どもの健全育成を図る上では非常に重要なことと考えております。
その一環として設けられた「総合的な学習の時間」につきまして、本県では、地域の人的・物的資源を生かしながら、国際理解、環境、福祉・健康などを取り上げた学習が積極的に展開されております。
例えば、ある小学校では、ホタルの飼育をとおして環境の探求など追究活動に取組み、その成果を地域へ発信することで、まとめたり表現する力を身に付けた事例や、またある中学校では、三年間の在校期間中、人権に焦点を当てた学習に取組み、常に自分たちの生活を振り返りながら人権意識を高めたりする事例が見られます。
このように、それぞれの学校では、一定の成果を上げつつあると評価しております。
さらに、本県では、来年度から、新たに各小中学校で「総合的な学習の時間」を中心に「ふるさと教育」を展開することとしており、地域の特色や人材を生かした活動を通して、児童生徒の豊かな心や学ぶ意欲を高めることとしております。この取組は、ゆとり教育をさらに充実させることができるとともに、学力の向上にも大いに資するものであると考えております。 |
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先日、ある報道で、日本の教育制度を学び、子供達を学力世界一に導いてきたフィンランドの教育制度が紹介されていました。そこで特に印象に残ったのは、教育予算の多さ、少人数学習と個別指導、そして何より教員任用への高いハードルでした。かの国では、教員養成の際、長期間の教育実習を課し、その中で不向きな学生は選別されるとのこと。わが国では、教員任用におけるハードルに問題があると思っていますが、任用後教育での対応しかない現状の中、本県の取り組みの現状とあるべき論についてご所見を伺います。 |
教員の任用についてであります。
教員の採用にあたっては、豊かな人間性と教職に対する熱意や使命感など教員として必要な資質能力の有無を、的確に判断する必要があります。
その主旨の基に、本県においては、今年度から第三次試験も導入し、実際の指導場面をより重視した模擬授業や個人面接を行うことなどにより、教員として必要な判断力・実践力、更には確かな指導観・教育観等総合的な観点から選考することとしたところであります。
さらに、教員は、その適格性を確認するため、採用後一年間(養護教諭、事務職員、栄養職員は六ヶ月)が条件附採用期間とされております。
この期間中に、社会性の欠如や児童生徒理解の不足、指導力の不足などの状況がみられる場合には、実際の授業場面の確認や聞き取り調査等を実施した上で、厳正な運用をすることになります。
なお、採用後においては、初任者研修等各種研修を充実させるとともに、管理職のリーダーシップのもと、学校全体で若い教員を育てていく校内指導体制を、整備していくことが特に必要であります。
そのため、新たな教員の評価制度の検討の中で議論されておりますように、管理職自ら、年数回にわたる積極的な面談を実施し、指導助言を行うとともに、定期的な話し合いの場を設け、子どもに分かり易い授業の在り方や、子ども理解、保護者への対応の仕方など、先輩教員が、率先して指導助言をしていく体制をより充実させてまいります。
このように、採用時のみならず、採用後においても、教員の資質能力に関して留意しているところであります。 |
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軽度発達障害関係団体の皆さまとの懇談会について触れましたが、新年度予算で措置される特別支援のための非常勤講師の配置事業、親御さんの大きな期待と感謝の声があったことをお伝えすると共に、県教委の英断に心より敬意を表します。
この会合ではさまざまな問題で指摘と要望がありましたが、特に支援する側の人材不足と現場の理解不足、軽度発達障害者支援のありかたについて考え方の違い等は、早急に取り組むべき課題だと考えます。
エキスパートの養成、関係者全員でサポートするための環境作りとして全教員が理解を深めるための研修、共通マニュアル作りに目を向けるのではなく、個々の子供達にあった指導の確立についてお尋ね致します。 |
LD、ADHD、高機能自閉症等の児童生徒への支援についてであります。
このような障害のある児童生徒に対する指導方法は、まだ十分に確立されていないことから、指導者の養成は特に重要であります。
指導的立場に立つ高い専門性を持つ教員の養成につきましては、従来から大学や教育センターに一年、あるいは六か月間教員を派遣し、人材育成に努めてきております。来年度は今年度と同じく八名を派遣する計画ですが、一年派遣を四名から六名に増員することにしました。研修内容につきましては、子どもたちへの直接的な支援を通して行う臨床研修を中心として、実践に生かせるようさらに充実することとしております。
また、教員の理解を深めるための研修については、平成十四年度から実施している「LD、ADHD研修」に加え、昨年度より「特別支援教育コーディネーター養成講座」を開催しております。これは、各学校の中心となる教員を対象とし、これらの教員がそれぞれの所属校において研修内容を広め、全教職員の理解を深めることをねらいとするものであります。二年間で百四十名が受講しておりますが、県内全ての学校にコーディネーターが配置できるよう今後も継続してまいります。
個々の児童生徒に対しては、各学校に設置する校内委員会において、保護者や、医療・福祉等の関係機関の協力を得ながらその内容について十分に検討し、個別の教育支援計画を策定するなど、一人一人に応じた指導・支援を行うよう、市町村教育委員会や学校に対し要請しているところです。
あわせて、現在、各学校が実施する校内研修に、教育センター等の指導主事が積極的に出向き、指導しておりますが、来年度は新たに、各教育事務所に特別支援教育の経験のある指導主事を配置し、さらに校内研修の内容を深め、教員の指導力を向上させることで、児童生徒一人一人に応じた指導・支援を一層充実させることとしております。 |
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また、特別支援のための非常勤講師配置事業は県単で18年度までとされていますが、今後の取り組みの考え方についてお尋ね致します。 |
「特別な支援のための非常勤講師配置事業」、いわゆる「にこにこサポート事業」についてであります。
この事業は、来年度新たに、小学校に県全体で五十人の非常勤講師を配置し、LD、ADHD、高機能自閉症等発達障害のある児童一人一人の教育的二−ズに応じて、生活や学習上の困難を克服するため、どのような対応が効果的か、指導を重ねながら研究する事業であります。
配置した講師は、担任とともにチームティーチングの形態で授業をしたり、必要に応じて個別指導を行うなど、児童一・人一人の障害の状況に応じた指導や支援を行うこととしております。
このことにより、該当児童が意欲を持って何事にも取り組むことができるようになることはもちろんのこと、この研究を通して、教職員全体が該当児童以外の児童に対しても適切な教育支援のあり方を明らかにすることができ、校内支援体制の充実にも資するものと考えております。
今後の取組につきましては、十七、十八年度の二年間研究を行い、児童一人一人の障害の把握の仕方、支援の方法、保護者を含めた心情面でのサポートの在り方など、それぞれの成果を検証した上で、この事業の進め方や今後の学校教育全体の中での位置付けについて検討していきたいと考えております。 |
関連して、親御さんにとってもう一つ深刻な問題は、専門医の不足です。予約して三ヶ月、半年待ちということもざらにあるとのこと。わが県の医師不足が一段と深刻になっている中ですが、専門医を増やすことについて、考え方と取り組みについてお尋ね致します。 |
発達障害児に係る専門的な医師の確保についてであります。
どのような医師を専門的と捉えるのか難しい面もありますが、例えば、発達障害を研究対象としている日本児童青年精神医学会あるいは日本小児神経学会の会員は、県内には合わせて二十五人程度おられると伺っております。
専門的人材の確保につきましては、現在、国において医療機関の確保や医師等専門家の養成について検討が進められておりますので、その動向を踏まえ、県としての取組みについて検討してまいりたいと考えております。 |
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質問の第5は、隠岐病院の移転新築問題について。
昨年末、待ちわびていた浜田医療センターの移転新築が正式決定致しました。わが県の医療提供体制で残る最大の懸案は隠岐病院の機能充実です。
市町村合併では、地域の自主性尊重という姿勢から舵を切って県の強いリーダーシップを発揮され、大きな前進を見ました。
地元の意志決定はよくわかりますが、この厳しい財政状況の中、容易に着地点が見出せるのかと思わざるを得ません。併せて、全県的な医師不足の深刻化という問題も抱えています。
ことは命に関わる問題です。県としてもう一歩踏み込んで、早期の問題解決に乗り出すべきではないかと考えますが、現在の検討状況と今後の考え方をお尋ね致します。 |
隠岐病院の整備に関するご質問にお答えします。
雛鳥という地理的条件から隠岐地域の医療の確保は極めて重要であると認識しております。このため、県も広域連合の一員として参画し、日頃から医師をはじめとする医療従事者の確保等に、地元町村とともに取り組んでいるところであります。
隠岐病院の整備につきましては、平成十五年三月に隠岐広域連合に隠岐病院整備方針検討会議が設置され、島後地域で確保すべき医療機能の範囲や、隠岐病院の整備方針等について検討が行われてきたところであります。
しかしながら、町村合併における隠岐病院整備の位置づけを踏まえる必要があったことや、県及び地元町村の財政を直撃したいわゆる「地財ショック」が生じたことなどから、検討が一時中断されているところであります。
現在、地元におきましては、昨年十月の合併により島後地域がひとつの町となったことや、検討再開のため隠岐広域連合において、これまでの検討組織が一部見直されたことなどの動きが見られます。
依然として財政状況は厳しい中ではありますが、こうした状況変化をみますと、島後地域の医療連携のあり方や、隠岐病院の整備方針等について、検討を再開する環境が整ったと考えております。
今後検討会議が再開されれば、広域連合の一員としてその責任を全うしていく考えてあります。 |
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