未来を担う人づくりという視点から、最近感じているいくつかの問題について質問したいと思います。
質問の第一は、子供を産み育てる主体者である女性の地位向上のベースとなる男女共同参画についてであります。
今月初め、与野党の女性国会議員6人が、ある大学の学園祭で少子化などをテーマにした討論会に参加した際、佐藤ゆかり氏は「財政再建という大切な問題がある。(子供を産む女性も)自助努力でがんばっていくことが大事」と話すと、連舫方氏が「働いている女性の4割は非正社員。子供を産めば職を失う女性がどうやって自助努力をすればいいのか」と反論し、火花を散らしたと報じられていました。
先の総選挙で、女性国会議員数は、敗戦直後の39人という記録を抜いて、43人に達しましたが、男女共同参画基本法制定から6年、男女共同参画は本当に進んだのでしょうか。
「民でできることは民へ」というスローガンを掲げ、「自己決定・自己責任」を原則とする改革路線を進める小泉政権下、男女共同参画の現状を「フェミニズムはどこへ向かうのか?」というテーマで論じた上野千鶴子氏の毎日新聞の記事は説得力のあるものでした。
「ジェンダー」の用語を禁句にしようという提言が公然とまかりとおり、「男女共同参画基本法」すらその廃案が論議される今日、上野氏は、『「こんな社会」に対する女たちの答えは出ている。非婚化と少子化である。こんなところで産めない、育てられない、と女たちの集団無意識は、歴史的な答えを出している。「ジェンダー」バッシングは、家族の危機に対する守旧勢力の反動だろう。だが、声高に「家族を守れ」と叫ぶほど、ネオリベラリズムの圧しつける「自己責任」の重さは、家族を崩壊させる結果になることに、かれらは気づかない。』と述べています。
そして、処方箋はすでに練られ、考えつくされ、提案されているが、それらがひとつとして実現されていないと結んでいます。
上野氏の見方を否定しきれない、決してバラ色とは言えない男女共同参画を取り巻く環境にあって、島根県男女共同参画計画が策定されて5年、現在、男女共同参画審議会にその改訂を諮問され、審議会が「中間まとめ」を発表、パブリックコメントを求めている中でありますが、わが県の男女共同参画の現状をどのように認識・評価されているのかお尋ね致します。 |
男女共同参画について四点の御質問にお答えします。まず、本県の男女共同参画の現状に対する認識・評価についてであります。
本県では、男女平等に関する県民の生活実態と意識等を経年的に把握するため、5年に1回実態調査を行っています。昨年8月に行った実態調査では、県内の満20才以上の男女2000人を対象に実施し、992人の方から回答を得ております。
この調査結果では、性別役割分担等に関する意識について「男は外で働き、女は家庭を守るべきである。」という考え方について、59%が「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」と回答し、前回平成11年度の調査に比べ4.3ポイント増えております。
また、社会全体における男女の地位の平等感については、「男性のほうが非常に優遇されている」と、「どちらかといえば男性の方が優遇されている」と合わせると82.6%にのぼります。また、社会通念・慣習・しきたりなどの分野でも81.9%が男性の優遇を感じており、前回とほとんど変わらない結果となっております。
日常生活での家庭の仕事等の役割分担においては、家事・育児・介護については「妻がすることが多い」の割合が前回調査同様高くなっております。
その他、女性の人権に関して、セクシャル・ハラスメントやドメステイツク・バイオレンスの経験については、直接経験したことがある人と自分の周りに経験した人がいる人を合わせると、いずれも20%を超えている状況にあります。
この調査結果から、県内の男女共同参画は、徐々に進みつつあるものの、男女の不平等感や固定的な性別役割分担意識が、依然として根強いことが伺えると認識しております。 |
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小泉政権では女性が積極的に登用されているように見えますが、女性閣僚の登用がサプライズとして報じられ、女性候補の擁立が選挙戦略の重要な道具立てとして意図的に利用されているとする見方もあります。首相が「ポジティブ・アクション(積極的改善措置)」として意識して取り組まれているかどうかわかりませんが、女性にとって本当に喜ぶべき方向なのか、少し首をひねりたくなります。「ポジティブ・アクション」についての考え方と現状についてお尋ね致します。
また、今回の改訂に当たって特に留意されている点、パブリックコメントの状況についてお尋ねするとともに、男女共同参画推進についての知事の思いをお尋ね致します。
男女共同参画計画基本法では、市町村に対して策定に対する努力義務を課していますが、現在の取組状況と今後の支援方針についてお尋ね致します。 |
まず、男女共同参画の推進についてであります。
現在、我が国は、従来の社会システムをこれからの時代にふさわしいものに再構築するための大きな変革期にあります。こうした中で、県におきましては、行財政改革を推し進めるとともに、「自立的に発展できる快適で活力のある島根」 を目指して各種施策に取り組んでおります。とりわけ豊かで活力のある。地域づくりを進めるためには、男性も女性もそれぞれの特性を生かし、生き生きと輝き、お互いのパートナーシップのもと、共に知恵を出し合うことができる男女共同参画社会の構築が極めて大切であると考えております。
男性も女性も自分の意志で、社会に参画し、支え合い、喜びも責任も分かち合う二十一世紀にふさわしい男女共同参画社会の早期実現を目指して、全力で取り組んでまいります。 |
次に、ポジティブ・アクションについての考え方や現状についてであります。
ポジティブ・アクション(いわゆる積極的改善措置)は、島根県男女共同参画推進条例第二条の定義にありますように、「社会のあらゆる分野における活動に参画する機会についての男女間の格差を改善するために、必要な範囲において、男女のいずれか一方に対し、この参画機会を積極的に提供する」ものであります。
また、条例第四条において、「県は、社会のあらゆる分野における活動に参画する機会に関し、男女間に格差が生じていると認めるときは、積極的改善措置を講ずるよう努めるものとする」と規定されております。
ポジティブ・アクションの現在の取り組みとしては、政策方針決定過程への男女共同参画を推進するため、県の審議会等への女性の参画率を平成17年度末までに原則として40%以上にするようにとの知事の指示により、各部局で計画的、積極的な取り組みを行っており、平成15年4月に29.2%であったものが、本年10月現在、約38%となっております。
市町村や企業、民間団体などにおいても、自らの課題としてポジティブ・アクションに取り組んでいただくことが必要であり、今後とも「島根県男女共同参画社会形成促進会議」などを通して積極的に働きかけてまいります。
次に、審議会専門部会で中間まとめをされるに当たって、特に留意された事項、パブリックコメントの内容等についてであります。
現在、審議会専門部会では、答申に向けて調査審議が進められ、この十月には中間まとめが行われたところです。
この中間まとめでは、男女共同参画を一層推進し、定着していくため、四つの項目を特に重点的に取り組む事項として掲げております。
まず、一つ目に「あらゆる世代での男女共同参画の普及・定着を図る」、二つ目に「男女が共に家庭と仕事・地域活動を両立することができる環境づくりを進める」、三つ目に「女性が様々な分野にチャレンジし、活躍できるような社会づくりを進める」、四つ目は「配偶者からの暴力の防止と被害者の保護のための対策を充実強化する」というものです。
また、この中間まとめに対するパブリックコメントは、10月24日から11月24日までの間実施されましたが、結果、四名、一団体から、男女共同参画の本質にかかわるもの、目標数値に関するものなど様々な御意見が寄せられております。
最後に、市町村の男女共同参画計画についてであります。
男女共同参画社会基本法では、計画策定は、県には義務づけられ、市町村は努力義務とされております。
男女共同参画社会実現のためには、住民により身近な市町村において自らの課題として取り組んでいただくことがなにより重要であることから、県の計画の中でも市町村計画の策定を促進することとしております。
しかし、市町村合併が行われた直後ということもあり、21市町村のうち計画を有しているのは、8市町でありますが、今年度以降大半の市町村で既存の計画の改定や新たに計画の策定が予定されておりますので、希望する市町村には、財団法人しまね女性センターの専門員等をアドバイザーとして派遣するなど、支援・助言を行ってまいります。 |
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質問の第二は、人口減少問題についてであります。
先日、国勢調査の速報値が発表されました。それによりますと、わが県の人口はほぼ2万人減少し、美郷町、津和野町、吉賀町は10%を超える減少を記録したとのこと。
また、総務省の統計によれば、今年上半期、初めて日本の人口が減少したとのこと。今年の通年での人口は微増するのではないかと言われておりますが、いずれにしても06年、あるいは07年には日本が人口減少社会に突入するのは間違いないと思われます。
ウェルカム人口減少社会とする論がある一方、わが国の持続的発展を図るため、少子化対策を充実すべきとして、初めて少子化・男女共同参画担当特命大臣を任命し、少子化対策の一層の強化を図ろうとしています。また、わが県でも少子化対策は喫緊かつ最重要な課題として、明年も引き続き取り組まれることになっています。
しかし、佐藤ゆかり議員の発言に見られるように、「自己決定・自己責任」という原則のもとで非常に厳しい、上野氏の言う「こんな社会」の実相があることも事実であろうと思います。
先日、大阪のある中学校を訪れる機会があり、授業も見せて頂きました。創意工夫のある魅力的な国語の授業でしたが、私の目には全く授業を受け入れない生徒が少なくとも1/3、今年転勤してきたという先生は、前の学校と比較すると国語の平均点で20〜30点は低いだろうとのこと。校長は、外部からの苦情の対応や、遅刻してくる生徒達の対応などで忙殺されているが、うちの学校は大阪市の平均だろうと話されました。田んぼの残る郊外、新旧住民の混在する地域で、生活が厳しい家庭の生徒が6割と聞きました。そのような地域にある学校での生徒達の授業を受ける姿や学校の雰囲気に接し、わが国の将来はどうなるのかと震撼しました。「自己決定・自己責任」のもとに二極化が進む社会の姿が凝縮した、「こんな社会」の実相を見事に映し出す学校だったかもしれません。
姉歯建築事務所の構造計算書偽造事件や、先頃起こった広島での少女殺人事件はじめとする子供たちを取り巻く厳しい現実など、わが国の底流に広がる人間力の低下は、進む二極化と共に女性達の集団無意識を形成する大きな要因となり、更なる少子化を進行させ人口減少時代を加速させてはいないでしょうか。
人口減少時代到来に対する知事の所感をお尋ね致します。また、少子化の壁も男女共同参画の壁もその要因には多くの共通性があると思いますが、立ちはだかる大きな壁を打ち破るため、取り組まれる少子化対策に対する思いをお尋ねすると共に、少子化の進行を止めることのできない最も大きな要因はどこにあるとお考えかお尋ね致します。 |
人ロ減少がもたらす影響については、○経済、社会、地域の持続可能性を根底から揺るがすものであること。○社会保障制度等の諸制度に構造的な見直しを迫るものであることなど、様々な状況の変化が想定され、とりわけ人口減少とともに、少子高齢化が進行する本県においては、県民一人ひとりの生活に深刻な影響を及ぼすとともに、地域の存立をも脅かすものであると考えています。
このような中で、如何にして人ロ減少を最小限にとどめ、その影響を緩和していくのかが、当面する課題であり、定住対策や少子化対策に取り組む重要性がますます高まっているものと強く認識しています。
また同時に、私は、人口減少時代を先取りする形で少子高齢化が進行する本県であるからこそ、未来から島根を考えるという視座に立ち、今後の社会資源の活用方法や住民サービスのあり方などの仕組みづくりを全国に先駆けて検討していく必要があると考えています。
こうした取り組みを行うことによって、人ロ減少時代を心豊かな少子高齢社会として明るく前向きに迎えることができるよう努めていきます。
次に、少子化が進行する要因及び少子化対策に取り組む私の思いについてであります。
少子化が進行する直接的な要因としては、「未婚化・晩婚化の進行」と「夫婦間の子供の数の減少」が挙げられます。
これらの背景には、個人の価値観の多様化という側面がある一方で、核家族化や地域の繋がりの希薄化など、子育て環境の変化による子育ての精神的・肉体的な負担感の増大や、育児や教育に係る経済的な負担感の増大などが影響を与えていると考えています。
また、仕事優先の企業風土や、家庭や企業における固定的な男女の役割分業の意識も深く関連していると考えています。
こうした様々な背景の中で、人々が就職、結婚、出産などの人生の岐路において選択した、或いは選択せざるを得なかった結果の積み重ねが今日の少子化の進行をもたらしていると考えています。
私は、少子化対策に当たっては、個人の事情への配慮や、価値観を尊重する中で、結婚するかどうか、或いは、子どもをもうけるかどうかなどの選択の際に、社会的、制度的な障害があるならば、それを取り除いていくという姿勢で、誰もが人生の選択の幅を拡げていけるような施策・事業を展開していく必要があると考えています。
こうした考えの下で、現在、重点プロジェクトとして「子育てサロンの全県展開」や、子育てすることの喜びを広く伝える意識啓発としての「みんなで子育て応援事業」を通じて、「地域全体で支える子育て・子育ちの推進」に積極的に取り組んでいるところであります。さらには、仕事と家庭の両立支援や、就職、結婚などのライフプラン応援のための様々な施策・事業の一層の充実に努めます。
また、本県では、少子高齢化が進行する中で、子どもを生む世代の減少も大きな課題であることから、若者世代の定住促進や、UIターンの促進など、定住対策にも引き続き取り組んでいきます。 |
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人口減少社会にあって、国力保持には労働力確保が近未来の大きな課題になってくるものと思われます。
わが県にあっては、公共事業の減少などによって厳しい雇用環境となっていますが、一方では、安い労働力の供給源ともなる、研修目的の外国人労働者を必要とする環境が広がっています。幸い、わが県での不良外国人による事件はそう多くはありませんが、全国的に見ると不良外国人による凶悪事件が後を絶たず、外国人に対する目も一層厳しいものとなっています。
将来予想される一層の少子化進行と、国力保持のために、義務だけではなく権利もきちっと保障した上で、外国人移民を受け入れることが必要との意見があります。いずれは、真剣に検討すべき課題になってくると思うのですが、人口減少社会における外国人移民受け入れに対する知事の所見をお尋ね致します。 |
人口減少社会における、外国人の受入についてであります。
在住外国人につきましては、平成二年度の出入国管理法の改正以来、中国と南米からの就労外国人が急増し、特に南米から来日した二世・三世の日系人については、就業の長期化、家族の帯同などの傾向が強まることにより、定住化の傾向も顕著となりつつあります。またこれに伴って、治安、教育、医療など様々な問題の表面化も指摘されております。
こうした在住外国人と私たちが、共に暮らしていく社会を築くためには、国籍や民族の違いを超え、同じ住民として認め合うことが必要です。そして、多くの在住外国人が、習慣や言葉の壁に悩んでいるのが実態ですので、相談事業や日本語教室などの総合的な生活支援を行い、同じ地域の構成員として、社会参加を促す仕組みを作っていくことも必要となってまいります。
しかし、宗教的・文化的背景の異なる人々を大量に迎え入れながら安定した社会を築くことは、最近のフランスでの暴動が示すように、簡単なことではありませんし、他のヨーロッパ諸国やアメリカでも、同様の問題に苦慮していると承知しております。
人口減少社会において、これからの経済社会の活力維持の観点から、外国人を受け入れることは一つの考え方ではありますが、国民の文化的同一性が高い我が国にとっては、「国」 のあり方にも関わることであり、私としては、多角的な観点から、国において慎重に検討されるべきことと考えております。 |
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質問の第三は、教育問題についてであります。
先に触れたように、私にとって大阪の中学校の度肝を抜く「事件」もあって、松江市内の二つの中学校と、東出雲中学校におじゃましました。生徒達の視線を浴びながら授業を見せて頂きましたが、内一校の2年生を除き、だいたい落ち着いた雰囲気で、全体としては安心したというところです。
2年生に問題を持つ学校では、各クラスに中心になる生徒が2〜3人おり、その影響がじわっと広がっていると言う感じで、教える先生も教わる生徒も集中力が相当落ち、成績にも少なからぬ影響があるだろうと思いした。こうした状況も、今年は昨年よりもいいとのことで、学校としても校長はじめ教員も目一杯の対応をされているものの、こうした状況改善の有効な手が打てないという印象でした。この学校の校区内には、背景となる特別な事情もあるとのことで、こうした状況を改善するには県教委、市教委連携してクラスサポートを更に広げるなど、更に踏み込んだ対応を取るべきではないかと思いました。
義務教育学校における学級崩壊等の実情をお尋ねすると共に、クラスサポートの拡充についてのご見解をお尋ね致します。 |
今年度、公立の小・中学校において、児童生徒が教師の指導に従わず、授業が成立しない、いわゆる学級崩壊についての報告はありません。
しかしながら、教師の指導を受け入れない児童生徒や、問題行動を繰り返す児童生徒の対応に苦慮し、学級崩壊につながりかねない学校が、小・中学校それぞれ数校あります。
県教育委員会では、このような状況にある学校に、生徒指導専任主事やスクールカウンセラーを派遣し、対応の在り方や学校全体での支援体制づくりを指導・助言したり、必要に応じて児童相談所などの学校外の諸機関と連携したサポートチームづくりを援助するなど、児童生徒一人一人に応じた支援を行っているところです。
次に、中学校クラスサポート事業につきましては、大規模中学校の一年生を対象に、きめ細かなサポート体制の構築を目的として、平成16年度、10校に29名の非常勤講師の配置を開始し、今年度は、14校、39名に増員配置したところであります。
今後、配置校の在り方や配置人数、非常勤講師の効果的な活用方法などの成果を細かく分析、検討し、次年度以降この事業がさらに効果を上げるよう取り組んでいきたいと考えております。
なお、来年度につきましては、中学校において、情緒不安、集団不適応など配慮を要する生徒に対して、広範囲に対応することが可能な通級指導教室の増室を検討しているところであります。 |
今議会において、県職員、教職員の給与改定条例が提案され、給与が平均4.8%削減されることとなっています。
大変好評で、効果の大きい30人学級、スクールサポート、クラスサポート、にこにこサポート事業の財源は、3年間という時限付きで行っている給与カットによって捻出できた財源が充当されていると聞いていますが、既に行っているこうした事業が給与改定によって影響を受けないのかどうかお尋ね致します。 |
次に、30人学級等の事業予算に対する給与改定の影響についてであります。
この議会において、来年4月から教職員の給料水準を平均4.8%引き下げるという給与改定条例が提案されているところですが、この条例には、現給保障という経過措置を設けております。
この措置が採られますと、当面、給与費総額に大きな変動はないこととなり、従って、給与カットも含めた財源を工夫して取り組んでおります30人学級等の事業には、大きな影響を受けることなく、引き続き取り組んでいけるものと考えております。 |
また、給与カットの財源がこうした素晴らしい取り組みに充当されている、このことをもっと広く知らしめていくことによって教職員のインセンティブとして働くと思いますし、県民への発信になると思いますが、知事のご見解をお尋ね致します。併せて、給与カットが3年間という時限付きで行われているわけですが、時限切れとなる19年度以降の事業存続について、人づくりに並々ならぬ思いをお持ちである知事のご所見をお尋ね致します。 |
現在、学校教育を充実させるための施策の一環として、財源を工夫しながら、小学校の三十人学級、スクールサポート事業、にこにこサポート事業、中学校のクラスサポート事業を実施しております。
事業開始年度は異なりますが、いずれも、児童生徒一人一人の状況に応じて、きめ細かく対応することができ、落ち着いて学習に取り組めたり、集中力や意欲が増すなど、大きな成果をあげているところであります。
これまで、会合や広報誌等を通じて各事業の目的や推進方法などを県民の皆様に紹介し、学校関係者にも情報提供してきたところでありますが、さらに、具体的な取組内容や教育効果について広くアピールし、一層のご理解とご支援をいただきたいと考えております。
私としては、常々申し上げておりますように、次世代を担う人づくりは、県の重要な施策と位置づけており、小中学校における児童生徒の教育活動を支援する施策の充実は、誠に大切なことであると考えております。
今後とも、これらの事業の成果を見極めつつ、財政状況との調和を図りながら、必要な予算の確保に最大限の努力をしていきたいと考えております。 |
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次に、この議会でも度々論議されている学力低下についてでありますが、御承知のように、OECDが2003年に行った「生徒の学習到達度調査」結果が昨年末発表されました。それによると、平均点、順位がかなり低下し、なかでも、読解力の結果は非常に厳しいもので、習熟度での上位レベル群は変わらないものの、中位レベル群が減り下位レベル群が増えるという結果でした。内容を見ると、記述式問題で読解力+論理的表現力が不足しているとのこと。
また、わが国の学力低下の問題として、知識・理解を中心とした学力の低下よりも算数・数学などの学習意欲が低いことが問題とされたが、この調査結果が、「生きる力」の育成という学力観の転換が教育実践では必ずしも実現されていないことを示していると指摘されています。
読解力+論理的表現力を育てるためには、@読書量を増やすA読書したことについて意見発表し討論する機会を増やすB国語の授業で意見文を書いたり口頭発表して討論する機会を増やすB社会科や理科、総合学習などあらゆる教科の時間でも読んで発表して討論する機会を増やすことが有効だと言われています。
過去、読書教育の充実、それを支える学校図書館の充実を訴え、「生きる力」を育てる基盤が学校図書館にあるのではと言ってきましたが、その確信を深める調査結果でした。
まず、学力低下問題の中で揺らぐ「生きる力」の育成という学力観の転換について、読解力向上と読書教育との関係について教育長のご所見をお尋ね致します。 |
現行の学習指導要領の学力観については、近年、様々な議論が展開されております。
その多くは、「基礎的な知識・技能」と、「自ら学び自ら考える力」とのいずれが重要かとの論点であると整理しておりますが、これらは二者択一的にとらえるべきものではなく、この両方を総合的に育成することが必要であると考えます。
本県でも、昨年3月に策定した「しまね教育ビジョン21」の基本理念の趣旨に示しておりますのは、「児童生徒に基礎基本を確実に身に付けさせ、自分の生き方を考え、決定し、行動していく力や問題解決能力を育むこと」であり、これが教育の不易であると認識しております。
次に、読解力向上と読書教育の関係についてであります。
昨年末に公表されたOECDの学力調査における読解力とは、「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発展させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」となっております。
この定義に表わされているように、国語という教科の中の文章読解力のみではなく、より広く、社会で生きていく上で必要な力を育成することが重要であると考えます。このような読解力の育成のため、学校においては、教科の枠を超え、総合的な学習等の時間も含めて学校教育全体で取り組んでいかねばならないと考えます。
中でも読書活動は、「思考力」「表現力」「言語知識」等の育成のために欠くことができないものであり、学校教育全体の中での読書指導、家庭や地域と連携した読書活動の展開が必要と考えます。
県内の学校においても、国語以外の教科担任が学校司書や司書教諭と連携して授業のプランを練り、本を読み調べる学習を通して生徒の情報活用能力やプレゼンテーション能力の向上を図るなど、意欲的な取組がなされています。
県教育委員会としても、このような事例を県内に広めるなどにより、学校教育における読書指導の一層の推進に努めてまいります。 |
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東出雲中学校に行ったと話しましたが、お邪魔したもう一つの理由は、今年度、専任司書の配置によって大きな成果があり、町内の小学校にも専任司書を配置することになったとの新聞記事を読んだからであります。
学校にお邪魔し、図書館に足を踏み入れて真っ先に優秀な司書に恵まれたということを感じました。元気な息づかいの聞こえる図書館で、いい顔をしていました。
全てのクラスの授業風景を拝見し、更に、この司書がサポートする国語の授業があるということで、その授業を1時限参観致しました。授業の教材は、教科書に掲載されている詩でした。その詩は、昭和60年、中国残留孤児の第6次調査を終え、肉親が判明することなく帰りの羽田空港に立った劉桂琴さんという女性が、誰にともなく深々と頭を下げる一枚の写真を新聞記事に見た作者による詩でした。
その詩を読み解く背景を多くの参考図書、当時の新聞記事、最近の調査団に対する新聞報道の取り上げ方など、さまざまな資料を通してブックトークするものでした。私もその司書の話に引き込まれましたが、生徒達も食い入るようにその話を聞いていました。
この資料収集と話の組み立て、普段通りということでしたが、相当な準備がされていたと思います。専任司書、しかも優秀な司書をうまく使う授業の質の高さを感じましたし、図書館の資料を熟知していればこそと感じました。
そこで、読書教育、学校図書館の充実ということで何点かお尋ね致します。
最初に、今年は学校図書館図書整備5カ年計画の3年目です。東出雲中学校でも松江市内の小学校でも図書整備費が減額されたとの話です。交付税措置されているはずの図書整備費の現状をお尋ね致します。 |
次に、図書整備費の現状についてであります。
地方交付税措置額に対する県内市町村全体の決算額等の割合は、平成15年度は110%、平成16年度は111%となっており、県全体としては、毎年計画的に計上されているところであります。
しかしながら、平成15年度の市町村別の措置状況をみますと、100%を上回る市町村もあれば、大幅に下回る市町村もあることから、交付税額措置に見合った図書の整備に努めるよう要請しているところです。 |
次に、12学級以上の学校への司書教諭が配置されて3年目、鳥取県では読書教育、学校図書館の充実のために司書教諭には5時間の授業免除措置が取られているとのこと。校務分掌での配慮をお願いしてきましたが、その実情と司書教諭配置によってどのような変化が現れているのか、その効果についてお尋ね致します。 |
次に、司書教諭の校務分掌の実情と、配置による効果についてであります。
小・中学校において司書教諭に対して校務分掌等で配慮されている状況ですが、本年度、授業時数を 5時間から 3時間程度軽減をしている学校は、発令校92校のうち23校です。
また、司書教諭の校務分掌を軽減したり、校務分掌上、図書館担当を複数制にする等、何らかの配慮がされている学校は73校となっております。
配置による効果の事例としては、司書教諭の校内活動として、地域のボランティアや教職員による読み語りの実施を計画したり、児童会の図書委員会による読書集会や学級対抗読書パズルなど、多様な読書活動を指導するなどの活動が行われています。
また、調べ学習や発展読書のための資料提供を支援するコーディネーターとしても活動しております。
その成果として、子どもたちの学校図書館を活用した、読書意欲の向上や、情報活用能力の向上につながっております。 |
次に、東出雲中学校の例を話しましたが、効果絶大といえる専任司書配置の状況をお尋ね致します。また、専任司書配置拡大に対するご所見を改めてお尋ね致します。 |
次に、専任司書の配置状況等についてであります。
学校図書館の専任司書の配置については、小中学校の場合、本年度は、安来市、松江市、出雲市、東出雲町、斐川町の 3市2 町で16名の専任司書が配置されております。
専任の司書が配置されている学校においては、図書館利用のオリエンテーションを司書教諭とともに行ったり、司書教諭や学級担任と司書が連携しながら情報活用能力の育成を目指した授業を行うなど、多様な読書活動が行われており、学校図書館に専任の司書が配置されたことにより可能となった様々な活動が行われております。
また、このほか複数の市町で、司書資格はないものの、19人の専任職員が配置されており、学校図書館活動の支援や司書教諭等へ のサポートが行われております。
さらに、ボランティアの協力を得て、蔵書の整理や図書館の環境整備、本の貸し出しなどを行っている学校が相当数あり地域の協力に感謝しているところであります。
県教育委員会といたしましては、各市町村教育委員会に対し、専任司書あるいは専任職員のさらなる配置、ボランティアによる支援体制づくりについて、引き続き積極的に要請してまいります。 |
次に、東出雲中学校でも今年度から朝読書を始めたとのことでしたが、朝読書、読み聞かせなどの読書活動の取組状況についてお尋ね致します。 |
次に、朝読書、読み聞かせなどの読書活動の取組状況についてであります。
朝読書を含めた「全校一斉読書」の状況について、平成15年度には、小学校では96%、中学校では94%の学校で取り組んでおります。
読み聞かせについては、ボランテイアや教職員によるものや、子どもたちによるものなど多様な形で行われており、小学校では 91%、中学校では23%の学校で取り組まれております。
このほか、ブックトークやストーリーテリング、必読図書や読書ノートの活用等で、良い本と出会わせ読書習慣の定着化が図られるよう、様々な努力をしている学校が増えつつあります。 |
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教育問題の最後は、歴史問題についてであります。
東出雲中学校でのブックトークでは、戦争の実態について紹介され、戦争の悲惨さを再認識するとともに、不戦の誓いを新たにした感銘を受ける授業でした。
私の中学校、高校の時の歴史は、一番大切と思える近現代がほとんど取り上げられることのない授業でした。以前、北朝鮮2世の方と飲み屋で隣り合わせとなり、当然のように話題が拉致問題になりました。その方は、私の父は、故郷の畑で農作業中、日本軍に連行され日本に連れてこられた。拉致とどう違うのかと言われ、一瞬言葉を飲みました。時代背景が全く違うので、当然同列に論じることはできません。しかし、そのような事実を知らなかった自分を振り返って、外国人と信頼関係を築くためには、そうした歴史の事実を事実として知っておくことが不可欠と感じ、自分を恥じた次第です。
わが国の歴史教育について、自虐的だとする意見もあり、総理の靖国参拝問題と合わせて対中国、対韓国の外交関係は非常に厳しいものがあります。極東アジアと日本の将来を思った時、今の政治的冷却は憂慮に堪えないとの思いであります。
ドイツでは、周辺諸国と歴史認識について共通理解を深める努力が長い間続けられ、信頼関係構築に大きな役割を果たしています。わが国でも、韓国とは歴史認識について共同研究が進められていますが、緒についたばかりという印象で、更に幅広く深く進める必要があるのではないかと思います。
いずれにしても、次代を担う子供たちが戦争の現実を直視し、悲惨さをしっかり認識し、二度と戦争を起こさないと、不戦の誓いを命に刻む歴史教育であって欲しいものと思います。教育長に歴史教育の現状と基本的な考え方をお尋ね致します。 |
次に、歴史教育についてであります。
学習指導要領は、小・中学校の社会科及び高校の歴史の授業を通じて、「国際社会に生きる民主的、平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う」ことを目標としております。特に、歴史教育においては、アジア近隣諸国との関係を含め、近現代史の学習の充実が図られており、これにより、「戦争を防止し民主的で平和な国際社会を実現することが重要な課題であることを認識させること」としております。
本県においても、このような学習指導要領の趣旨に則り社会科の授業時数のうち、小学校で10%、中学校で40%を近現代史の授業に当てており、近現代史を重視した学習計画を立て授業に取り組ん
でおります。
戦後六十年が経過し、国際化が進展している現代においては、我が国の歴史に対する理解と我が国への愛情を深めるとともに、世界の国の歴史を学び、異文化を理解し国際協調の精神を養うことが一層重要になってきております。
特に、島根県は日本海を介して北東アジアに隣接しており、今後とも歴史教育を通じて、島根の子どもたちに近隣諸国の歴史を理解し、友好関係を確かなものにしていく力を育んでいくことが、重要であります。 |
また、わが国の戦後の歴史認識に対する知事の所見をお尋ね致します。 |
私の戦後の歴史認識についてであります。
我が国は、二十世紀初頭の激動する国際情勢の中で戦争への道を歩み、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与え、世界で唯一の原爆被爆を経て敗戦を迎えました。戦後、我が国は世界平和を希求する国家として再出発し、廃墟の中から目覚ましい発展を遂げてきました。
このような我が国の歴史を顧みるとき、現在の平和と繁栄は、多くの人々の犠牲の上に築かれたものであることに思いを致しますとともに、平和を愛する国家として、国際協調に力を尽くしていかなければならないと考えます。
また、近・現代の歴史については、様々な評価があります。私は、歴史的な事実を正しく検証した上で、一人ひとりが、様々な考えや思いを持ち、相手の主張は主張として認め合いながら、現在そして未来に向けて、より望ましい道を志向することが歴史を学ぶ大きな意義であると考えております。戦後六十年、改めて先人が歩んできた歴史を正しく認識し、後世に伝えていくとともに、国においては、平和国家として歩み続ける我が国の姿勢を理解してもらうための外交努力を切に望むものであります。本県も国際交流と協力を通して、相互理解と友好関係をつくり上げ、世界の平和と繁栄の一翼を担いたいと考えております。
未来への道は、自らが歩を進めて拓くものであります。島根の明るい将来を次の世代に約束すべく、全力を傾注してまいります。 |
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最後に、その他の項目で一点だけお尋ね致します。
過日、益田行きの特急に乗車したときのこと、松江から指定席は満席、自由席もほぼ満席、途中空いた席も途中の駅で埋まるという状況、この乗客のほとんどがグラントワを目指して歩き始めました。
私は別の用件で益田に行ったのですが、大変嬉しい光景でした。
新聞によれば、グラントワの入館者が早くも10万人を突破したとのこと。この喜ばしい現状について、また、石見地域の文化の発信地として、豊かな文化的土壌を作っていくべく知事の所感をお尋ね致します。 |
グラントワは、「石見に美術館を」という県民の皆様の熱い思いを受け、美術館と劇場の機能を持つ全国有数の複合施設として、十月八日に開館いたしました。
既に、予想を遥かに上回る十四万人以上の多くの皆様に御来館いただいており、県民の皆様のグラントワに寄せる期待の大きさを改めて感じ、大変うれしく思っております。
グラントワが、国内外の優れた芸術文化の鑑賞機会を提供するとともに、石見神楽など地域の文化や風土を大切にしながら新しい文化を創造する芸術文化の殿堂として、将来にわたり地域の皆様に愛され、石見地域の活性化の拠点となるよう取り組んでまいります。 |