2004年2月議会一般質問 2004/2/27
1.知事の政治姿勢と財政問題について
 @福岡県赤池町に学ぶ財政再建団体への危機について
 A選択と集中の自己評価と今後の考え方について
2.行政改革について
 @内なる改革への知事の決意
 A地方独立行政法人について
3.産業振興についてであります
 @地場産業の高度化について
 A情報リテラシーとビジネス支援機能強化について
4.島根県政と図書館についてであります
 @公立図書館について
 A学校図書館について
 B特別支援教育について
【再質問】
質疑内容は下記の通りです。それぞれ文字色で私の質問、知事答弁関係部長・教育長答弁がわかるようになっています。
質問の第一は、知事の政治姿勢と財政問題について
 @福岡県赤池町に学ぶ財政再建団体への危機について
 三位バラバラ改革とも揶揄される小泉改革に対する論議はさておき、直面する現実を見据えてお尋ね致します。
マスコミ報道や自治体の広報の中で、一般の住民への警句や内部組織の引き締めのための“ブラフ”に使われる一方、「一刻も早く財政再建団体となって財政再建を」というやや安易な容認論もある財政再建団体。
 地方自治ジャーナル、ブックレットNo.28は、全国で最も直近の財政再建団体、赤池町の財政再建プロセスを検証して「財政危機の原因は、決して地域エゴ、甘い採算見通し、施政者の野放図な財政運営等といったステレオタイプに紹介されてきたものではない。財政悪化の背景には、自治体の財政支出を促す合理的理由が潜んでいる。しかしながら、現実には、そのような当然の動機や目的から生まれる自治体主導の地域振興策が、やがて何時の間にか、『民主主義』理念の下で様々な「しがらみ」を生み、財政危機からの脱出を困難にしていた。財政再建団体制度に頼ることなく、自主再建を成功させるキーは、ここで見られた民主的意思形成システムの未熟性の克服にこそあるのである。」と結んでいます。
 準用再建団体となった原因は置くとして、赤池町では、住民ボランティアの活発化など、住民に危機感の共有による前向きの効果が生まれ、職員間でも、少ない経費のなかでの工夫が凝らされるなどの結果、計画より2年早く再建団体を脱したということです。一方、財政再建団体制度による再建の本質が、「中央の権力性」に依存するものであることから、その選択は地方自治の自己否定にもつながるものとも言えます。
 さて、わが県の目指そうとする自主再建路線は、決して財政的に自立して行われているものではなく、起債への優遇措置や地方交付税など、国家からの巨額の資金移転によって支えられ、国と地方との間の極めてあいまいな責任体制の上に成り立っており、このたびの地財ショックに見られるごとく、国家の意思によって一挙に困窮度を高めるという構造であります。
有利な起債と基金と言う二つのキーワードのもと膨張し続けてきた県債残高、問題となってきた「歴史民族博物館」、長期計画に盛られた「古代文化研究センター」と「フリーゲージトレイン」、象徴的なこの3事業、そこには民主的意思形成システムの未熟性の克服という大きな命題が隠れているように思えてなりません。
 特に、一昨日からの答弁をお聞きし、知事が取り組まれようとする改革への決意との間に埋めきれない溝を感じてしまうのであります。
 この民主的意思形成システムの未熟性の克服という課題は、最終の政策判断者である知事自身の中でどのように整理されるとお考えかお尋ね致します。
 まず、民主的意思形成について、私自身どのよう、に整理しているのか、とのお尋ねでありますが、言い換えれば、私の意思形成過程においで民意をどのように反映しているのかということになると思います。
 私は、これまでの四期十六年の間、また、五期目の県政運営にあたっても、できるだけ多くの県民の声を聞き、県民の幸せと本県の発展に必要な施策の一つひとつを真剣に考え、実行しているところであります。
 このたびの「地財ショック」は、今後の県政運営に重大な支障をもたらしかねない非常事態であります。
 苦渋の選択であり、県民の皆様方にも大きな痛みや負担をおかけすることになひますが、こうした厳しい時にこそ、県議会はもとより、県民の協力を得て、将来を見据えた誤りのない県政運営を行っていかなければならないと決意を新たにしているところです。
 私は、県政を預かる最高責任者として、本県の将来に重大な責務を有しております。
 非常事態となった本県財政を何としても再建団体に陥ることのないよう舵取りをするのは、現下、私の最大の使命であります。
 また同時に、如何に困難であろうと十年、二十年先を見据えて、本県発展の布石をうつことも私に課せられた責務であります。
 この財政非常時に、思い切った施策の選択と集中、歳出の徹底した削減は当然のこととしながらも、個性光る島根づくりの礎を決して怠ってはならぬと考えます。
 毀誉褒貶は政治家には常であります。県民の皆様方の中には、県政に対する厳しいご意見やご批判があることは十分に承知しておりますが、県政を預かる最高責任者として私が責任ある判断を行ったことの一つひとつについては、如何なる評価も甘んじて受け、県民の幸せと本県の発展に邁進する覚悟であります。
 本来であれば、総務部長にも県の立場を離れて、監督する立場でのご意見を伺いたいものと思うのですが、この場でお答えを求めるわけにも行かないと思いますので、別の機会と場所で伺うことと致します。
 私は、先ほどの象徴的な3事業を見る限りにおいては、県自ら民主的意思形成システムの未熟性の克服ができるとは考えにくく、先送りでしのぐと思える財政運営を見るとき、この際、面子をかなぐり捨てて、進んで準用再建団体の道を選択することも考える必要があるのではないかと思います。
 その際、一番の問題は県民生活への影響です。
 150億程度とされた構造的歳入欠陥が、400億に膨らみ、更に増える可能性も予見される中、自主再建というか、抜本的構造改革による県民生活への影響は計り知れないものがあると考えます。また、自治体は自主再建を選択したならば、準用再建団体より厳しく臨むべきだと説く学者もいます。自主再建と準用再建による県民への影響の違いをお尋ねすると共に、準用再建団体の道を選択することについて知事の御所見をお尋ね致します。
 いわゆる「準用再建」は、総務大臣の同意を受けた「財政再建計画」に基づいて県政を再建するものであり、計画に掲げた事業については地方債の発行制限が解除される一方で、赤字を解消するための厳しい歳出削減と歳入確保対策を行う必要があります。このように、「準用再建」を選択する場合には、国の管理下で、公債費償還財源の確保が最優先となり、県の自主性・独自性が極めて制限された財政運営を強いられることになり、県独自の事業や施策展開ができず、県民サービスが大幅に低下することになります。
 自主的な再建と「準用再建」の違いは、この県の自主性独自性が確保できるかどうかにあります。
 自主的な再建の場合でも、財政収支の改善に向けて歳入歳出の両面で厳しい改革を進めていく必要がありますが、「準用再建」の道を選ぶことは、国の権力的関与に依存して県民に痛みや負担を負わせようとするものであり、地方自治の自己否定ともいうべきものであります。
 私といたしましては、あくまでも県民が自らの判断と責任において、財政の立て直しを図っていくという意味で、自主的な再建に取り組んでいくべきと考えております。
A選択と集中の自己評価と今後の考え方について
  「選択と集中」、事業の取捨選択と優先順位付けをかかげて臨まれた新年度予算編成について、事業の多くは頭切り、残された事業は必要性があるということはよくわかるのですが、この緊急事態にいささか切り込み不足ではないかと感じます。
 事業の取捨選択が進まなければ、思い切った組織再編もできない、つまり抜本的な構造改革が進まないと思えますが、選択と集中の自己評価と今後の考え方について、また、そういう中での県政の最重要課題である産業振興の今後の取り扱いについて、知事のご所見をお尋ね致します。
平成十六年度当初予算において、本県の将来を見据えて、産業振興や少子化対策などについて重点的に財源配分を行う一方、公共事業一般施策経費等については厳しいマイナスシーリングを設定し、事務事業の徹底した見直しを実施しました。
 また、各部局に対して、配分された一般財源の中で、所管の事業の取捨選択と優先順位付けをこれまで以上に徹底するよう指示したところであります。
 この結果、地方交付税等の大幅削減を受けた追加的な削減も含め、予算編成方針で示した目標の五十億円を上回る六十七億円の規模で、恒常的な収支改善効果をもたらす歳出削減を行ったどころであります。
 本県財政は、中期的に見て大変厳しく、従来の発想を超えた歳出削減の取組みが求められている状況にあり、今後、施策の選択と集中をより一層徹底してまいります。

  私は、産業の振興は、生活の向上、雇用の場の創出、定住の促進などをもたらすとともに、税源涵養を通じて本県の持続的発展の原動力になるところから、最も重要な県政課題であると考えております。
こうした観点に立って、まず、現に地域経済を支えている地場企業が、事業の拡充や新分野への進出に積極的に取り組めるよう、経営基盤の強化や技術の革新、経営力の向上等に向けた支援を行うとともに、国内外に競争力のある新たな産業を創出するために、県自らが技術開発などの牽引役となる「新産業創出プロジェクト」に着手したところであります。
このような施策により早期に成果があがるよう、全力で取り組むとともに、産業振興は息の長い取り組みが必要であるとの認識のもとで、今後とも必要な施策を積極的に推進してまいります。
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質問の第二は、行政改革についてであります

 一昨日の代表質問に答えて、内なる改革に対して職員採用凍結を含む強い意思表明があったのでありますが、自主的な改革にあっては地域事情や組合との軋轢も生ずると思います。民主的意思形成システムの未熟性の克服を念頭に、内なる改革に断固として取り組まなければ、まことに残念でありますが明日の島根はないと感じています。改めて知事のご決意を伺います。
 極めて厳しい財政状況の下で、県民の皆様の痛みを伴う改革を進めていくためには、県行政内部の思い切った改革を断行することが不可欠であります。
 このため、その第一歩として、私をはじめ特別職が率先して改革に取り組む決意を表すべく、給料の減額率を二倍に引き上げることといたしました。
 今後、定員の五百人削減や地方機関の見直し、外郭団体の見直しなどの取り組みをさらに加速してまいります。
その改革の推進にあたりましては、地域の皆様や関係団体などの理解と協力を得るべく、県のおかれている状況、改革の必要性や効果を十分に説明した上で、不退転の覚悟で進めていく決意であります。
次に、地方独立行政法人について
 自己責任、企業会計原則、ディスクロージャー、業績給与制を盛り込んだ地方独立行政法人法が本年の4月より施行されます。取り組みによっては大きな変革と実りが期待できると考えます。試験研究機関、大学、公営企業の地方独立行政法人化についての見解と見込まれる効果についてお尋ね致します。
 地方独立行政法人制度の効果といたしましては、弾力的・機動的な組織人員管理、弾力的な予算管理、中期計画による明確な目標設定ど評価による行政サービスの質の向上、透明性の確保等があります。
 一方、理事等の役員報酬や会計システムの構築費などの新たな経費の発生や、業務量の増加が生じるコとが見込まれております。
 今後、国の独立行政法人化の取組状況や、各県における具体例等を参考にしながら、本県における法人化の必要性、有効性等について、研究を進める必要があると考えております。
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質問の第三は、産業振興についてであります
@地場産業の高度化について
 本県の状況を見ると、遅いという印象は否めませんが、喫緊の課題である産業構造の転換に向けて本格的な取り組みが始まりました。待ちから、打って出る取り組みと高く評価すると共に、一連の取り組みが、21世紀におけるわが県の確固とした産業基盤形成につながるよう商工労働部あげて、否、我々議員も含めて県庁一丸となって取り組んで行きたいものと思っています。
 その打って出る取り組み、本年度は、佐々木新産業創出戦略会議顧問を迎え、テキサスとの産業技術交流の一歩が記され、また、矢野プロデューサーという素晴らしい人を得て、より高い次元での産業再生への動きも生まれてまいりました。先細り状態であったわが県産業界にとって、また、一般県民にとって大変明るいニュースです。
 矢野プロデューサーには地場産業の高度化のために県内を縦横に動いていただいており、大きな波動が起こっていることを実感しています。プロデューサーとして動いていただいたこの1年間の感想と、専門家の目から見た本県の中小企業の課題、どのような波動が起こっているのか、本来であればぜひとも御本人からと思いますが、そのお気持ちを体していらっしゃる商工労働部長に、様々なエピソードなどの披露も含めてお尋ね致します。
 また、矢野プロデューサーの御指摘を踏まえた今後の取り組みについてお尋ね致します。
 産業創出プロデューサーの矢野氏は、咋年四月の就任以降、本県産業の実情把握のため、約百四十杜の県内企業を訪問し、経営改革の助言などを行われたほか、各地の商工団体等で二十回以上講演されるなど、精力的に活動されているところであります。 
 矢野プロデューサーは、県内産業の課題として、@固有技術を持つ企業が少ないこと、A総じて営業力が弱いこと、B二次三次下請企業が多いこと、C業界情報の収集が不十分であることなどを上げられております。
 そして、これら課題を克服するための本県企業の方向としては、@今後とも日本に残ると考えられる隙間市場(いわゆるニッチ市場)の開拓、A多品種少量・短納期生産へのチャレンジB固有技術の獲得と強化、C大学の上手な活用などを示されるとともに、その実現のための具体的方策を数多く提案されております。
 こうした提案を踏まえ、県としては、支援メニューや体制について、随時見直しなどを行うとともに、重点プロジェクトを始めとした来年度予算にも反映させたところであります。
 このほか、プロデューサーには、合併後の産業政策を真剣に議論する市町村や商工団体の、職員に対する助言、あるいは、商工労働部の若手職員への夜を徹しての指導などを頂いております。
 こうした、矢野氏のスピード感をもって行動されるエネルギッシュな姿は、われわれにとっても大きな刺激となっており、業務改善のみならず職員の意識改革にも大きくつながっているものと感じております。
 なお、プロデューサーには、この四月から県の産業振興施策の実施機関である「しまね産業振興財団」の理事にも就任いただくこととしており、財団の行う産業競争力強化のための各種の活動に、これまで以上に積極的に関与していただくこととしております。
A情報リテラシーとビジネス支援機能強化について
 矢野プロデューサーの指摘された課題の一つに、情報収集と活用能力の不足という点があったと仄聞しています。
 先日、ゼロックスのコピー機、ポラロイドカメラ、世界一の発行部数を誇る「リーダース・ダイジェスト」、これらは全て図書館から世に送り出された、という書き出しから始まるニューヨーク図書館を紹介した「未来をつくる図書館」を目にし、戦慄が走りました。
 そして、「SIBL」と呼ばれる科学産業ビジネス図書館や舞台芸術図書館の姿、米国の図書館の96%はインターネットが無料で使え、サンフランシスコ市中央図書館では300台が並び、シリコンバレーの心臓部、サンノゼ中央図書館では400台を超えるパソコンが自由に使えるという。
 アメリカ経済の裾野の広さ、深さを思い知らされる内容で、一時は世界を席巻した日本経済が、将来ともに米国の背中を目の中に捉え続けることが出来るのかと感じました。
 矢野プロデューサーの指摘と完全に一致するわけではありませんが、米国の状況を参考とするとき、長期的視点に立って見ると本県産業振興の基盤整備の原点は、県民のメディアリテラシーの底上げと、広義でのビジネス支援体制の強化にあるのではないかと感じるのであります。
 ビジネス支援を担う産業振興財団にあっては、本を含めた各種データやデータベースの充実、インターネット使用環境の拡充、自由に使えるオフィス機能の提供などが必要と感じるのですが、財団のビジネス支援・情報提供体制の現状と課題をお尋ねすると共に、大量のデータが蓄積されている公立図書館との連携について、現状と今後の考え方をお尋ね致します。
 まず、情報提供体制の現状と課題についてでありますが、産業振興財団では、創業・起業や新分野進出、研究開発や販路開拓といった各種のビジネス支援のため、関連の書籍や報告書ビデオ、DVDの閲覧・貸出などのサービスを提供するほか、インーターネットを介してメールマガジンを毎週発行するなど、最新情報の提供に努めているところであります。
 また、県内企業情報など各種データベースを備えており、財団ホームページから簡単にアクセスできるようにしております。
 こうした情報は、多くの企業や県民の方々に活用されているものの、まだ不十分な点もあると考えており、今後も、求められる情報をより的確に、かつ、効率的に提供できるよう、ニーズの把握や他機関との連携などにより、満足度向上に努める所存であります。
 なお、産業振興財団では、オープンスペースに二台のパソコンを置き、一般来所者が自由にインターネットに接続できなようにして々おります、現時点では、議員ご紹介のような利用形態は見られないようでありますが、今後、需要があれば、見直しも必要かと考えております。
 次に、公立図書館との連携についてでありますが、現時点では公立図書館との情報提供面での連携は、行っておりません。しかしながら、企業や県民の方々に、それぞれの施設が持つビジネス支援のための情報を、必要に応じて共有化して、幅広く提供することは、意義あることと考えます。
 今後、どういう連携が図れるかについて、費用対効果の観点も含めて、関係機関と協議して参ります。
 合わせて、産業振興財団のメールマガジン・アシストやHPを見て積極的な取り組みが行われていると評価しています。起業や企業家のスキルアップなど、ビジネス支援の大きな柱である財団開催の各種セミナーの参加状況と課題、取り組みの成果についてお尋ね致します。
 平成十五年度の実施状況でありますが、ビジネスプラン作成講座、起業家スクール、マーケティング講座など、二十四分野で延べ百三十回、約二千人の参加を見込んでおります。
 現状の課題といたしましては、@他機関でも類似のセミナーが開催されていて、必要性の薄れたものがあること、A受講対象を広くしたセミナーでは、内容が一般的、抽象的になりがちで、参加者の個別満足度が低く、アフターフォローが必要であること、B専門的セミナーでは受講対象が限定され、参加者が固定化.る傾向にあること、などが上げられます。
 こうした課題を踏まえ、来年度は、テーマ開催方法などの見直しや整理統合を図るとともに、セミナー後の受講者フォローアップを充実させることとしております。
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質問の第四は、島根県政と図書館についてであります
@公立図書館についてであります。
 「日本は世界でもまれな高学歴の国で、国家も親も人材育成には大変な金と力を注いでいる。にもかかわらず、どの企業、どの官庁からも人材不足の声が聞こえてくるのはなぜだろうか。持って生まれた才能の差を言う人もいるが、とてもそれだけが原因とは思えない。組織や社会をリードする人材に共通して存在する要素は、問題を把握する能力および的確な対応策を考え出す能力であろう。」これは、堀田力氏が、先日の山陰中央新報の羅針盤に「なぜ人材が育たないか」というテーマで執筆された中の一文です。
 これは、私が島根県政と図書館という質問テーマを取り上げることとした基本命題ですが、それはまた、「生きる力」として求められる学力観、問題解決能力の育成というテーマでもあり、総合的な情報リテラシーをどう高めるかということにつながります。この課題は、子どもたちだけではなく、我々大人にも求められている能力であり、長き将来に亘って、島根県の産業の発展や豊かな郷土作りを左右する重要なキーワードであると思うのであります。
 そうした意味で、問題解決能力の育成と、その基礎となる情報リテラシーの取得とスキルアップは、県政の3つのテーマの一つ「人づくり」における大きな柱に位置づける必要があると思います。知事のご所見を伺います。
 人材育成.は、全てに通ずる基本政策であり、優れた人材なくして地域の自立はなし得ないと考えております。この「人」づくりの原動力は「教育」にあります。
 教育においては、人としてのあり方や時代を超えて変わらない価値あるものを学ぶ基本的な部分とその時代の要請に応じて学ぶ部分、すなわち、不易と流行があり、情報リテラシーの取得は、まさにこの流行の部分に当たります。
 今後も一層情報化が進展することが予測されますが、そのような時代に適応するため、必要かつ有効な情報を主体的に収集かつ判断し、課題や目的に応じて適切に活用する資質や能力の向上を図ることは、極めて重要であると認識しております。
 もうひとつ興味深い調査があります。それは日本大学法学部が行った政治と情報調査の結果です。これは我々県議会議員を対象に行われた調査で、全国で四割強、1185人の議員が回答を寄せています。この中に、地域の政治・経済情報を入手する、日本の政治・経済情報を入手する際に有効と思われる手段を高い順に三つ答える設問があり、何れも1番目から3番目までの情報入手手段の中で、図書館が有効とする答えは、0%から1.3%で、1番目は0%、3番目の手段として図書館を選択した15人、1.3%が最高でした。
 かく言う私も、議員になってから、最大の情報データベースである図書館のレファレンスを利用したのは5回しかありません。教育の中で情報活用能力を体系だって教わってこなかったのです。
 そもそもの出発点から、例えば米国などと大きく違っていると思えるのです。
 これからの図書館は地域の情報拠点にならなければいけない、と言われています。また、文化教養型の図書館サービスと同時に、問題解決型の図書館サービスが求められているとも。
 それが最初に述べたビジネス支援であり、訴訟社会への移行を支える法律情報支援機能であり、防災情報、医療情報の提供機能であり、市民への行政情報提供機能であり、行政や議員への情報提供機能などなどであろうと思います。
 そうした多様化する市民ニーズにこたえる、また本県発展のためにそうしたニーズを掘り起こすことが求められていると思うのですが、そのためには当然「ヒト・カネ・モノ」の充実が必要です。
 真に厳しい財政下であり、図書館にも自治体同様自己決定・自己責任が求められる時代であります。新たな役割を担うべき市町村立図書館、そしてそれを支える県立図書館、新しい指標なども用いた説得力ある行政評価を持って情報発信に努め、地域力の基盤である公立図書館の強化を図るべきと考えます。教育長のご所見を賜りたいと思います。
 急速に杜会が変化する中で、図書館に対する地域住民のニーズも多様化し、様々な情報提供機能が求められると考えています。図書館は常にそのニーズを敏感にキャッチし、それに応える資料の整備やサービスの提供が必要でありますので、常に行政評価意識を持ちながら充実に努めていかなければならないと考えております。
 また、平成十五年五月に策定をした県立図書館振興計画においても、市町村立図書館の支援や県内の各図書館との連携を重要な役割と位置づけており、その取り組みを推進することによって県内の公立図書館の一層の強化を図ってまいりたいと考えております。
 また、県立美術館は素晴らしい館長を得て高いレベルを保っています。いい図書館作りには高い専門性を持った優秀な人材が必要ではないかと感じています。公立図書館の望ましい基準では「館長となる者は、司書となる資格を有する者が望ましい」としています。県立図書館における館長配置の考え方を知事にお尋ね致します。
 館長は、このような個書館の持つ役割や意義を十分に認識し、さらに、進展しつつある情報化時代を洞察し、利用者の様々な要請に応えて、管理運営を行っていくことが期待されます。
 そのため、館長には、まず、幅広い知見、強いリーダーシップ、優れたマネージメント能力が求かられます。また、司書の資格を有することも望ましいことと考えております。今後とも、このような資質能力等を総合的に勘案して、適任者を配置してまいります。
 斐川町立図書館、安来市立図書館、多伎町立図書館など市町での歓迎すべき新しい動きもありますが、県立図書館も含め、わが県の公立図書館総体として見たとき、余りにもさびしい現状です。
 ヒト・カネ・モノ、全てに課題はありますが、特にこれから課題となる問題解決型の図書館サービスという視点で考えたとき、ヒトすなわち司書、たとえ嘱託であっても、その配置とスキルアップが最重要課題であると考えます。そうした課題解決に向けた一つの方向性が、合併区域を越えた市町立図書館の広域化ではないかと思います。県教育委員会、県立図書館として取り組む課題であると考えますが、ご所見を伺います。
 現在、県内には二十七の公立図書館がありますが、合併後にこれらの図書館をさらに広域的に集約するメリット、デメリットについては、検証すル必要があると考えております。
 なお、司書の能力のスキルアップ、蔵書の相互利用や情報交換については「市町村が連携し、協同して取り組むことは可能であると考えておリます。
 今後、このような課題対応に対して県立図書館としてもできるだけの支援協力をしてまいりたいと考えております。
 次に情報リテラシーであります。
 私たちの周りには様々なメディアが存在し、情報が氾濫しています。中には偏った考え、間違った情報もたくさん存在します。問題に直面したとき、そうした中から如何に正確で有用な情報を引き出し活用できるかが問われるのであります。
 新年度もIT講習会が予算化されていますが、今までのIT講習から一歩脱皮し、幅広い情報リテラシーの取得を目指す取り組みでなければならないと考えます。そうした意味では公立図書館こそがその主役を担う必要があると考えますが、ご所見を賜りたいと思います。
 情報リテラシーとは、情報機器の操作能力だけではなく、インターネットでの情報検索能力に加え、多くの図書や資料、様々なデータベースの中から必要な情報を取得する能力など、広範囲にわたるものであります。
 現在、県立図書館においては、図書情報検索システムが稼働し、迅速な情報検索ができると共に司書による適切なレファレンスも利用でき、情報リテラシーの向上に貢献しております。
 今後、情報リテラシー向上のため、図書館として可能な限り努力してまいります。
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A学校図書館についてであります。
 先日、佐賀県警の警察官が児童を連れまわすという、非常にショッキングな事件が起こりました。事件を起こしたのは、ごく普通のまじめな警察官ということです。
 人との交わりが少なくなり、多様な体験が困難になった、そうした点に原因の一端があると思いますが、そのような問題解決に向けた取り組みが総合学習の目指す目標の一つであろうと思います。
 一方、幅広く多様な疑似体験を可能とし、情操を育み、豊かな人間性を育てる大きな効果が期待できるのが読書教育であります。そうした観点から、子どもの読書活動の推進に関する法律が制定され、12学級以上への司書教諭配置が義務付けられ、子ども読書活動推進計画の策定が求められています。
 また、子どもたちの未来の可能性を担保し、わが国の永続的な発展を保証する意味でも、豊かな人間性を育む読書教育と同時に、総合的な情報リテラシーを取得できる教育が求められていると考えます。
そういう意味で、今、学校図書館の姿と学校図書館を活用した教育が大きな注目を集めています。
 先日、県内の司書の配置されているある小学校へ図書館を活用した授業の見学に行ってまいりました。その授業は、司書教諭と学校司書が国語の調べ学習をTTで行うと言うものでした。私はここで調べ学習というのはかくも難しいものかと感じました。課題を理解していると思われる児童が1割にも満たなかったからです。
 そこで、以前から学校図書館を学習情報センターと位置づけ、先進的な取り組みを行っていると言われる市川市のある小学校に行き、2時間分の授業を見せていただきました。私は、ここで信じられないような光景を目にし、わが目を疑いました。県内の小学校と同じ3年生の調べ学習の授業でしたが、クラス全員が、−本当に全員、一人も漏れなくです−一生懸命、様々な教材を開いてノートをとっていました。
 もう一つの驚きは学校図書館の使われ方です。わが県の司書が配置されたその学校では、週のうち3クラス3時間の授業が学校図書館の利用スケジュールに載っていましたが、市川の学校では毎次元2クラスから4クラスが使用しています。見に行ったときも、5年生のブックトーク、3年生の調べ学習、同じく3年生のパソコンを使った授業が同時に行われ、自分のクラスで調べ学習をする5年生の一部も図書館にやってきていました。これが同じ時間に同時進行しているのです。
 もう一つお邪魔した浦安の小学校でも、1週間の全ての授業時間に図書館を使っての授業が割り当てられていました。そして、市川もそうでしたが、授業が始まると子どもたちがカウンターの前に本を持って並び、借りた本を返し、授業が終わるとそれぞれ借りて行きます。浦安では本を借りて行かなかった児童はクラスの中で二人だけでした。読書が、図書館が学校生活の中で息づいているのです。
 島根県でも、広瀬小学校では素晴らしい取り組みが行われ、目覚しい効果が生まれています。ここでは、最初の年には司書教諭に週5時間の図書館活動の時間を与え、2年目には、嘱託ですが学校司書を配置するという恵まれた条件がありました。勿論、それは管理職である校長先生の教育理念と情熱、町教育委員会の理解に支えられてのことであるのは当然です。
 調べ学習、総合学習の現状を知るために、県教委に小中学校それぞれ3校の取り組みの現状を聞いていただきました。厳しい環境と想像できる所を選びましたのでほぼ予想したような答えでした。学習用教材が不足する中で、苦労しながらもフィールドワークやインターネットの使用を中心とした取り組みが行われていました。中に子どもたちが全てをインターネットに頼りすぎるという反省・改善点を感じたため、聞き取り、インタビューを重視しているとの答えもありました。
 市川の小学校では、インターネットはその性格上、最後の手段ということを体験を通しながら教え、それが定着しているとのことでした。
 紹介した県内の司書のいる学校は、司書が公立図書館から学習用教材を準備してくることが出来るため、豊富にありました。豊富にあることだけが全てではありませんが、教材が準備できる学校、出来ない学校。司書・司書教諭がいる学校、いない学校、教育目標の中に学校図書館が、情報教育が位置づけられている学校、そうでない学校。
 市川の子どもたちと島根の子どもたち、見るにつけ、聞くにつけ、ヒト・カネ・モノ・理念の差がどれだけ子どもたちの将来の格差になるのか、地域の潜在力の格差になるのか、同じ国の、同じ教育理念の中でのこの不公平を子どもたちにどう説明するのか、とても悩ましく感じています。
 司書教諭の配置から1年、急激な変化を求めるのは酷かもしれませんが、現場の話を聞いても意識の変化は伝わってきません。
 本の倉庫から学習情報センターへの脱皮、教育目標での図書館と読書・情報教育の位置づけ、指導事項系統表や指導計画、図書館の積極活用、一般図書・学習用教材の不足、学校司書や学校図書館員配置、配置された司書教諭の校務分掌での配慮と市町村教育長及び学校管理職の意識変革、学校の一般教員の意識変革、司書教諭の力量アップ、必置義務のない学校への司書教諭の配置など、様々な課題があると思います。司書教諭の配置から1年経過しての現状認識と課題解決に向かっての取り組みについてお尋ね致します。
 これまで、約四百四十名の有資格者を養成し、本年度、小中学校の十二学級以上全ての学校(八十三校)に司書教論を配置したところであります。
 また、本年度から、三か年の計画で、司書教諭の資質向上を図るため、司書教諭全員を対象とした研修講座を開設したところですが、この講座においても、県内の小中学校における学校図書館教育の積極的な取組事例が紹介されております。
 例えば、ある小学校では、年度当初、司書教諭を中心に、全教職員で図書館利用学習の年間指導計画を作成したり、教職員向けの図書館便りを発行するなどの取り組みが行われております。
 また、「教科書に出てくる作家コーナー」や「くつろぎコーナー」の設置等、図書館の環境整備や、ブックトークも継続的に行われております。
 これにより、児童が目的をもって自主的に本を探しに来たり、お互いに、話題の本について情報交換したりする姿が多く見られるようになったと評価されております。
 こうした事例からも、司書教諭の配置により、学校図書館の活用が、着実に前進していると認識しております。
 一方、司書教諭の取り組みにたいする校内の支援体制や、学校図書館教育の一層の充実に向けた全体計画の確立、蔵書の整備、公立図書館との連携等、課題も多いと承知しております。
 今後も、各市町村や学校への先進的事例等の提供や、司書教諭の養成、資質の向上、管理職研修等を積極的に推進し、これら諾課題の解決に努めてまいります。
 また、生きる力と情報リテラシーについて、本県の調べ学習、総合学習の現状と生きる力育成に対する見解と評価についてご所見を伺います。
 高度情報化に伴い、児童生徒が情報リテラシー(必要な情報を主体的に収集・判断・創造し、発信・伝達できる能力)を身に付けることは、「生きる力」を育成する上で重要なことであると考えております。
 現在、県内の各小中学校においては、児童生徒の発達段階に応じた情報リテラシーを育てるため、総合的な学習の時間等で、学校図書館活用を主体に、インターネットの活用、地域からの直接の情報収集、地域の人への情報発信など、様々な活動が行われております。
 例えば、中学校の「古代出雲の謎を探ろう」という歴史学習で、古代出雲のガイドブックを作成するため、各グループで、古代出雲の歴史を図書館で調べたり、博物館の学芸員から直接聞き取り、学んだ結果を発表するなどの調べ学習も行われており、児童生徒の主体的な取り組みによる学習が展開されているところであります。
 今後とも、学校図書館や情報機器の有効活用等、学校の教育活動全体の中で、情報リテラシー育成のための取り組みを、一層進めてまいります。
 子ども読書活動推進計画の策定に向けて諸準備が進み、パブリックコメントも締め切られました。
 私は、この計画を拝見し、実効性を担保するため、是非とも数値目標を設定してほしいものと思います。ご見解を伺うと共に、パブリックコメントの概要と寄せられた貴重な意見をどう生かすのかをお尋ね致します。
 現在策定を進めております「島根県子とども読書活動推進計画」は、平成十三年に制定された「子ども読書活動の推進に関する法律」に基づき、子ども読書活動を積極的に推進していくための本県の方向性や具体的な方策を示すものです。
 この計画の数値月標については、これから市町村が子ども読書活動を推進していく上での一つの指標となるものであり、設定することを現在検討しております。
 次に、この計画に対するパブリックコメントについてでありますが、期間中約五十項目の貴重な意見をいただき、寄せられた意見については、計画に生かしてまいりたいと考えております。
 主な意見は、「子ども読書の楽しさを教えてほしい」、「家庭では幼児期からの親子読書、読み聞かせが大切である」などでありました。子ども読書の第一歩は家庭からはじまります。幼少の頃から読書を楽しん.だり、読書に親しむことは、子どもの人間形成にとって何ものにもかえがたい大切なものと認識しております。
 そのため、来年度新規に「親子読み聞かせイベント」や「保護者のための読み聞かせ講習会」といった「子ども読書活動推進事業」を実施いたしますが、これらの事業にもいただいた意見を反映させてまいりたいと考えております。
B最後に、特別支援教育についてお尋ね致します。
 浦安に行って驚いたことがありました。それはダウン症や学習障害を持った児童などに市単独の補助教員をつけていることでした。行った学校は1000人規模の学校でしたが、特に必要とする3人の子どもにそれぞれ一人づつ配置され、支援のあり方は親が選択して決定するとのことでした。特殊学級を望む親は校区外の特殊学級を持つ学校へ、就学指導委員会は親の要望を最大限尊重し、その要望に応える体制がある程度整っている印象でした。
 本県の特別支援教育と、そうした子供を持つ保護者への相談体制は課題も多く、体制の強化を望む切実な声がたくさん寄せられます。以前にもこの問題を取り上げたのでありますが、どのような方向で進んでいるのか、相談体制強化への考え方とあわせてお尋ね致します。
 現在、保護者からの特別支援教育に係る相談は、県東部においては、松江教育センターで、また、西部においては、浜田教育センターに特別支援教育室と松江教育センターの指導主事が出張して受けております。
 また、小中学校の通常学級の教員を対象として特別支援教育に係る教育相談を各教育事務所毎に年二回実施しております。
 さらに、教育と福祉等の関係機関が連携した相談支援体制のあり方について、江津市と石見町とをモデル地域に指定し、研究実践を行っております。
 また、盲・ろう・養護学校が、地域における特別支援教育のセンター的役割を担っていることから、これらの学校の教育相談部を中心に、小中学校等の教員や保護者への教育的支援を行っております。
 今後、これらの取り組みを検証しつつ、相談体肘の一層の強化を図っていきたいと考えております。
 なお、特別支援教育については「平成十五年三月に、文部科学省から「今後の特別支援教育の在り方について」の最終報告が出され、国としての基本的な指針が示されました。
 これを受け、本県としては、来年度、外部の有識者による検討委員会を設置し、相談体制を含め、特別支援教育のあり方について検討していくこととしております。
【再質問】
 島根県教育振興ビジョン、読書活動の推進の中に学校図書館の充実がうたわれ、学校図書館図書標準達成率を平成19年100%ととすることが目標となっている。
 質問の中で広瀬小学校のことに触れたが、読書活動推進の最初の一歩は、学校図書館が本の倉庫から脱皮することだと思う。
 古い本が詰まった図書館には子どもは近寄らない。松江の城北小学校でも、東出雲町でも、古い本を整理することによって子ども達が図書館に集まるようになっている。
学校図書館図書標準を達成することも大切だが、子どもが利用できない、手に取らない本が並んでいても意味がないのではないか。問題は中身。鮮度の高い本が並べば、子どもたちは自然と図書館に集まる。反対に、そこから、教師の意識も変わってくると思う。
まず、本の倉庫からの脱皮し、子どもたちの声の聞こえる図書館づくりを強力にリードして欲しい。

調べ学習の方法が模索されている段階との声も聞く、調べ学習のやり方といった教師用の副読本も考える必要があるのではないか。