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福祉医療の見直し問題

[2005/3/18]
【福祉医療の見直しの背景】
 100を優に超える"福祉医療を後退させないで"という文書を頂きましたし、何人もの個人、団体の方と直接お話を致しました。また、随分お電話も頂きました。
 最低でも8倍の負担増、とても心が痛みます。そして、これはとても不見識とお叱りを受けると思いますが、4月には松江市と出雲市の市議会議員選挙もあります。
 一方、一昨年末の地財ショックにより450億円の構造的歳入不足が生じている県財政。平成19年からは、更なる地方交付税の見直しによって構造的歳入不足が広がってくるものと懸念されます。
 新年度予算では、選択と集中、言葉はいいのですが、実態は大幅な事業量削減によって収支不足110億円を基金取り崩しによって賄うこととされています。しかし、この110億円も借金の借り換えや財源補填のための借金を計上するなど、一見マジックとでも思える手法を駆使した上で110億円となっただけで、多くは次世代の負担となっています。
 島根県の財政運営は、まさに綱渡りの中で行われており、その中で県単独福祉医療費助成制度の見直しが提案されたのです。

【制度の安定的継続】
 今回の制度見直しにおける最大のテーマは、将来とも安定的に運営できる制度にということでした。
 前段で、この制度は県単独という言葉をつけていますが、この制度には国からの財政支援は一切なく、県と市町村が自主財源を半分づつ出し合い実施されており、財務省では地方の無駄な支出の最初にこの制度を槍玉に挙げ、地方交付税削減を図ろうとしております。また、県単独の事業でありますので、財政再建団体になれば、国の管轄下で財政再建を図ることになるため、この制度の存続は不可能です。
 次に、現行制度の最大のアキレス腱は、国の制度改正によって自己負担となるべきものが全て福祉医療にかぶさってくると言う構造です。例えば、高齢者医療に1割負担が導入されましたが、加齢によって障害をおった高齢者医療の対象者が福祉医療にシフトしてくることとなりました。その結果、本来、本人が1割を負担すべきものが、現在の福祉医療自己負担500円のみの負担で済むこととなり、その差額は全て県と市町村に被ってくることになったのであります。現に、新たに福祉医療の対象となる皆さんの8割以上が加齢によって障害を持つようになった皆さんです。
 福祉医療にかかる県費は、平成5年に5億8千万円だったものが、昨年度は10億7千万円になっています。このまま制度を存続すると、平成25年には13億9千万円に膨れ上がると予測されることから、財政状況がどう変わっていこうが、将来とも安定的に制度が持続できるようにと検討されてきました。

【軟着陸】
 昨年12月議会、委員会で制度見直しの基本的な考え方について説明がありました。その際には、現行医療制度の中で最も優遇されている老人医療制度に準じて、自己負担額を総医療費の1割とし、自己負担限度額も老人医療制度に準ずることとしたいとのことでした。
 私は、制度の見直しは必要としても、こんな急激な自己負担の増は到底容認できない。特に、低所得者の皆さんへの配慮など再検討を求めました。
 その結果、知事折衝に持ち込まれ、自己負担限度額について、障害年金の対象外である20歳以下の重身の方は通院1000円、入院2000円に、低所得者(市町村民税非課税世帯)は老人医療費の半額、通院で4000円、入院で7500円と改めることとして提案されました。

【弱者への配慮と公平性】
 自己負担限度額について、一般と低所得者の間では負担額に大きな較差があることから、一般とされる皆さんに対してもう少し細かい所得による限度額設定の導入と、多数の医療機関にかかった場合の限度額の設定を求めましたが、実施主体である市町村から、事務の煩雑さにつながるのでできないとの回答があったとのことで、残念ながら聞き入れていただくことはできませんでした。
 多数の医療機関にかかった場合の限度額の設定については、9割以上の皆さんが月にかかる医療機関が2つ以下であるとのことです。よって、老人医療等と比べて、特に過重な負担となるとは考えにくいとのことですが、そうした点で想定しなかった事例が発生した場合、見直しも含め速やかに対応するとの付帯決議を条件に容認致しました。
 では、一体どれくらいの収入の人がどの程度の負担となるのかですが、報道などで特に取り上げられた透析患者の皆さんには国の「更正医療」という医療優遇制度があり、自己負担限度額が1万円に設定されています。自己負担1万円を払わなければならない方は、本人が患者で妻と子供2人の家族のケースだと給与収入が711万円以上の方で、365万円以下の方は自己負担がありません。余病がある場合は、791万円以下の方であれば福祉医療の対象となります。
 一番厳しいのは、1級の障害者年金対象者の方(働けないと考えられるので年収131万円程度)と一人親家庭の市町村民税非課税世帯の皆さまですが、福祉医療の低所得者の限度額が適用されます。
 一方、年金暮らしの高齢者は、市町村民税非課税世帯の皆さまでも、同じ医療を受ける場合、福祉医療対象者の倍が自己負担限度額となります。また、こんな御時世ですので失業を余儀なくされる方もありますが、失業中でも同じ医療を受ければ3割負担ということになります。
 これだけで十分理解していただくことはできないと思いますが、収入と負担限度、他との公平性など、かなり細かくケースごとに検証した結果、この制度改正は止むを得ないと判断致しました。
 弱者への配慮と公平性、とても悩ましい問題だと思っています。
 発生するかもしれないレアケースには機動的に対応することが必要と思いますので、仮にそうしたケースを耳にされ、見られた場合には是非ご一報ください。

【お手盛り?】
 話は変わりますが、県の財政改革の一環で特殊勤務手当ての見直しが進められています。その中に、県立病院の看護師、助産師などを対象に月最大8800円支給される看護業務従事手当てがあり、今年度で廃止されることになりましたが、来年度は経過措置として半額が支給されます。
 福祉医療では経過措置は考えられていません。片や県職員には経過措置。他の手当て見直しの経緯なども考慮してのことと理解していますが、やはり釈然としないのは私一人でしょうか。
 
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