2006年3月24日、金沢地裁が志賀原発2号機の運転差し止めを命じた判決は、全国にある原発の耐震性への重大な警告です。現在の原発の耐震基準に科学的根拠がないことは、これまでの地震で実証されています。原子力安全委員会は耐震基準の見直し作業を進めていますが、今回の判決は、抜本的な対策が実施されないかぎり、原発の運転は認められないという立場です。


 原発の耐震設計に用いられている基準地振動(各電力会社による)
 
原発(建設中を含む) S1(ガル) S2(ガル) S1(ガル) S2(ガル)
 泊(1〜3号機) 226 370  高浜(1〜4号機) 270 370
 東通 230 375  浜岡1〜2号機* 300 450
 女川(1〜3号機) 250 375     3〜5号機 450 600
 福島第一(1〜6号機) 180 370  島根1号機 200 300
 福島第二(1〜4号機) 180 370     2号機 320 398
 柏崎刈羽(1〜7号機) 300 450     3号機 320 456
 東海第二 180 380  伊方(1〜3号機) 221 473
 志賀(1〜2号機) 375 490  玄海1〜2号機* 180 270
 敦賀(1〜2号機) 365 532     3〜4号機 188 370
 美浜(1〜3号機) 270 405  川内1号機* 180 270
 大飯(1〜4号機) 270 405     2号機 189 370
 *印は現行の耐震設計審査指針が採用される前のS1に相当する「設計用地振動」と
  S2に相当する「安全余裕検討用地振動」
加速度単位ガル
 地震の揺れの強さは、揺れの振幅の大きさ、揺れの速度、揺れの加速度で表されます。
加速度は揺れによって物体に加わる力に相当します。ガルは加速度の大きさを表す単位で、地球の重力の加速度は980ガル。980ガル以上の上下動が生じると、地上の物体が空中に放り出されます。

 津波の引き波で、原子炉冷却用の海水が取水できなくなるー。
 5mの引き波があった場合には、国内の原発の約8割にあたる43基の原発で、取水できなくなることが明らかになっています。12基の原発では、各原発で想定されている引き波でも、取水ができなくなり、いざというときの貯水槽もないことがわかりました。

 各原発にどんな津波が襲来するのかは、土木学会がまとめた「原子力発電所の津波評価技術」の解析手法を使って想定されています。過去の地震や海底地形データなどをもとに、立地点ごとに解析されます。
 経済産業省の原子力安全・保安院によると、この解析手法で想定される最大引き波は、女川原発(宮城県)や浜岡原発(静岡県)では8.0〜8.4mに、泊原発(北海道) や島根原発(島根県) では5.6〜5.7mに達します。福島第一原発や福島第二原発(福島県)では、3.0〜3.6mとなっています。

海水ポンプの吸い込み口が、想定引き波水位より上にある原発

■貯水槽なし
原 発 取水量
d/秒
取水可能
水位 b
引き波
水位 b
 泊    1・2号機 2.1 4.17 5.7
 福島第一 1号機 0.9 2.35 3.5
2号機 1.1 2.35 3.6
3号機 1.1 2.92 3.6
4号機 1.1 2.84 3.6
5号機 1.1 2.92 3.6
6号機 1.0 2.92 3.6
 福島第二 1号機 2.9 2.68 3.0
3号機 2.4 2.69 3.0
 島根    1号機 1.0 2.37 5.6
2号機 2.3 3.52 5.6





 
抜本対策求め住民が運動

 原発問題住民運動全国連絡センター筆頭代表委員の伊東達也さんは、「想定される津波にたいして、非常用設備しか対応策がないというのはおかしい」として、地元の福島第一・第二原発(東京電力) に、引き波時も海水を取水できるような対策を求めて運動を続けています。
 伊東さんは、「炉心が溶融し、放射能を大量に放出するような過酷事故を防ぐために、機器冷却用水確保の抜本的対策が必要だ」と話しています。   
■貯水槽あり
原 発 取水量
d/秒
取水可能
水位 b
引き波
水位 b
 女川   1号機 1.1 4.0 8.0
 浜岡   1号機 1.0 6.0 8.4
2号機 1.8 6.0 8.4
3・4号機 2.9 6.0 8.4
 ※ 取水量は機器冷却用。水位は、基準水面より
  どれだけ下かを示す。 (保安院の資料から作成)