3号議案

島根県地域人権運動連合会 2004年、2005年運動方針

一、島根県地域人権運動連合会創立の意義

 いま地域社会は、仕事、教育、福祉、環境など住民生活にかかわるすべての分野で大きな困難に直面し、矛盾の集中点になっています。このような情勢のなか、多様な課題に柔軟な対応ができる地域住民組織が求められており、人権の視点から地域住民運動をとらえた新たな運動体が時代の要請となっています。
 地域人権運動は、地域社会を基盤に住民の様々な要求と願いの実現をめざすことを通して人権の確立をはかることが基本的な役割となります。この権利には、歴史的に権利として確立してきたものもあれば、新たな権利として創造する内容もあります。
 島根県地域人権運動連合会は、科学的な理論と実践で部落問題を解決してきた教訓を土台としながら、広範な住民との連携で地域コミュニティーをはかり、自由と民主主義、住民自治の花ひらく地域社会をめざす地域人権運動のネットワークを構築します。
 全国の地域人権運動は、わが国ではじめて地域社会を対象にした「地域権利憲章」の制定を目指した運動をはじめました。私たちは、島根での運動の中核を担います。

二、地域社会でおこっている状況

圧倒的労働者化の進展
 ここ10年余りの階級構成の変化のひとつは、自営業者層の激減があります。島根県内の15歳以上の就業人口は、1900年の402,557人から2000年には3・2%減の389,849人。同じ時期に農林漁業従事者は62,891人から40,896人へ35%減、建設・製造業等は126,264人から112,631人へ11%減です。島根での労働者階級のデータは不詳ですが、全国的には8割が労働者です。
少子高齢社会の進展
 高齢者の現状は、県民人口759,693(2001.10.1現在)のうち、65才以上が193,219人、高齢化率25.4%です。将来予測では、2015年で30.5%、2025年で32.8%となる見込みです。
 65才以上の親族のいる世帯は、2000年で全体の48%、高齢単身世帯は8.2%、高齢夫婦世帯は10.5%で、今後いっそう増加する傾向です。
 女性一人あたりの生涯の出生数である合計特殊出生率は、2003年で1.48で全国第8位。1999年以来、低下の一途をたどっています。島根の少子化は、未婚率の上昇や晩婚化、子育て負担の増大などによる出生児数の減少に加え、若年層を中心とした県外転出による子どもを産む世代の減少に起因しており、中山間地においては集落の機能の喪失が始まっています。
地域での貧困層の増大
 生活保護の受給者数が今年2月時点で3796人(前年同月比で4.1%増)となり、人口に占める受給者の割合(保護率)0.5%を突破しました。不況や高齢化の影響が反映しています。被保護世帯数は、2846世帯で1950年の制度発足以来、最多を更新しました。
 国民健康保険の滞納世帯は11,806世帯(2003.6.1)で、加入者139,290世帯の8.5%にのぼり、2年前よりも2152世帯増加しています。資格証明書の発行は22市町村1142世帯で、市町村別内訳は松江市666、出雲市324、安来市24、平田市23、大社町14、津和野町14、八雲村13、大田市12、横田町8などです。短期保険証の発行は1975世帯で県下8市を含む39市町村で実施されています。
 国民年金の加入者は、146,081(2002年度末)で、保険料納付率は全国で最も高いものの76.4%で、近年では1996年の92.5%を最高に年々低下しています。全国的調査によると、保険料を払わない理由として、経済的に支払うのが困難としている比率は64.5%を占めています。
、失業者や不安定就労者の増加も顕著です。2003年4月〜2004年3月までの一年間にリストラを実施した企業は812、解雇者は2032人に達し、島根での就業者数は38.1万人(2002)、前年と比べると0.5万人の減少で、完全失業者は14,000人といわれています。有効求人倍率は、96年が1.1897年が1.12と安定していましたが、98年を境に0.85990.7720000.83010.67020.5610月時)と低落傾向です。パートの求人は増加しつづけています。中高年層の就職状況も依然きびしく、55歳以上の就職率は3.6%しかありません。
、自治体リストラ=市町村合併 
 自治体版のリストラが市町村合併です。国から地方への交付金を減額すること、大企業の開発が一層展開しやすくすることが目的で島根県でも15団体、53市町村が法定協議会を構成しています。さっそく今年10月1日から安来市、雲南市の新自治体が誕生します。しかし、東出雲町、斐川町、川本町では単独自治体を選択するなど地方自治を守る運動も展開されています。

 、ITの進展と国民監視体制

 住民に11桁の住民票コードを付けて情報を管理する住民基本台帳ネットワークが昨年より本格稼動しました。国による一元的管理や情報の漏洩が問題視されています。すでに税、介護保険、地理情報システム、総合行政ネットワークなど電子化された住民情報、行政情報がコンピューター管理される時代となっています。事務の効率化、利便性の点で近代化されることは進歩的なことですが、国民総背番号制構想と結びついた情報の管理は、プライバシー保護の点で容認できません。
 国民の表現・言論への抑圧、「差別」の法規制の危険性をもつ人権擁護法案は昨年の国会で廃案となりましたが、メディア規制の削除で秋の臨時国会に再提出することを法務省が検討していると報じられています。法務省の答弁に沿って法案の問題点について整理すると、@法案は人種等を理由とする不当な差別的取扱いを禁止するわが国初めての包括的な差別禁止法であり、国連人種差別撤廃委員会の指摘にも沿うもの A特に法案第三条の差別禁止規定は、同和団体(「解同」)の(部落解放)基本法の事項と全く軌を一にするもの B法案は同和地区出身者も含めて、人種等を理由とした私人間の差別的取扱い、差別的言動、差別助長行為を明確に禁止している Cこれらの不当な行為に対しては、(罰則を含む)特別救済の手続きを整備している  の四点があげられます。このようなものが成立しようものなら私人間における差別的取扱いを禁止し処罰の対象に加えることで国民に統制の網をかぶせるとともに、「解同」の「確認・糾弾」に合法化の道をひらくものになることは明らかです。
 有事法制に関連した国民保護法は、日常的な国民監視・統制につながる悪法であり、平和と人権を守るうえで軽視できません。

三、活動の重点

学習の積極的実施
 県内全域を対象にした人権状況を行政、労働組合、民主団体、そして人権団体などの資料の活用をはかりつつ調査し、人権にかかわる学習活動を積極的におこないます。全国人権連が主催する研究集会、住民運動交流集会に参加します。
行政に対する要求書のまとめと交渉
 生活相談やアンケート活動を行って地域要求をまとめ、10月〜11月にかけてしまね労連がとりくむ対県交渉に参加するとともに、独自の対県交渉をもちます。
人権課題での共同のとりくみ
 女性や障害者、いじめや不登校、子どもへの虐待、ハンセン病問題、国保、介護保険など地域社会の人権課題にかかわって、諸団体と協力して学習会、宣伝、交渉などを行います。
、過渡期の課題として部落問題解決への逆流を許さない課題を引き続き重視します
 行政上の特別扱いをなくし、同和対策の終結、同和教育の廃止を要求し、一般対策の充実をはかります。確認・糾弾の社会的排除につとめます。
、表現の自由、知る権利を求め、不合理な図書の閲覧禁止などをやめさせるたたかいをおこないます。
憲法改悪に反対し、平和と民主主義を守るとりくみを旺盛にすすめます。憲法会議や地域と自治の会などとの共闘をすすめます。

四、組織運営と目標

組織の存在を知らせる多様な宣伝活動を行い、地域基礎組織を当面、倍化します。
2年に一回の総会という体制を補完するために、幹事会機能を強化するとともに議長、副議長、事務局長、事務局次長の四役の日常活動を強化します。
活動の交流のためにニュースの発行を行います。